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「痴漢」を追いかけた男性が重体に 傷害容疑の元警視庁SPに無罪判決 東京地裁

小川たまかライター
(写真:Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート)

 追いかけてきた男性を駅の階段で振り払い、一時意識不明の重体にさせたとして傷害で起訴されていた元警視庁警護課の50代男性に無罪判決が言い渡された。2月26日東京地裁、吉崎佳弥裁判長。

 事件が起こったのは昨年2月17日。朝7時頃、起訴された50代男性は都営新宿線の中で女子高生の臀部あたりを触っていたところを乗客に見とがめられ、「痴漢していませんか」と声をかけられた。

 男性は「してねえよ」などと言って神保町駅で下車、その後ホームを逃走した。乗客や駅員が追いかけたが、駅員を転倒させてさらに逃走。さらに追いかけてきた被害者の20代男性が踊り場付近で追いついたところで2人とも階段下に落下した。

 被害者の男性は頭蓋骨骨折や脳挫傷などの重傷を負い、一時危篤状態だったが、その後回復。被害者代理人を通じて「今もリハビリ中で右耳は聞こえづらい。今後も一生(後遺症が)続く可能性がある」「できるだけ長く刑務所に行ってほしい」と意見陳述を行っていた。

 起訴された50代男性は元警視庁警護課で要人警護の経験もあった。また、2007年にも痴漢行為をとがめた男性を突き飛ばして負傷させていた。

昨年の事件当時の記事:元警視庁SP「痴漢男」に重症を負わされた被害者・妻が憤激告白(FRIDAY)

 検察官は、痴漢を疑われてなりふり構わず逃げようとし、故意に何らかの暴行を加えたと主張。一方で弁護人は、故意に暴行した事実はなく、マスコミで大々的に報じられたことから検察は安易に起訴を進めたと主張していた。 

 今日の判決で吉崎裁判長は、男性と被害者がともに転落した事実は認定できるものの、防犯カメラでは歩行者などの陰となり、暴行の様子が確認できないことなど、階段から落下したことが男性の暴行によるものと認定できる事実がないとして無罪を言い渡した。

 判決後、吉崎裁判長は「無罪なので本来であれば説諭することはできないが」とことわった上で、「今後の社会生活において人に疑われるような行為はしないでください」と語りかけ、男性は「はい」と答えていた。

 男性は痴漢行為については「同意があった」と主張していた。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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