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日本の長期金利は、1%に向けて上昇か。こちらもチャートが示唆

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 日本の10年債利回り(以下、長期金利)の日足チャートも、やっとチャートらしい動きを示すようになってきた。2022年12月までは0.25%に抑えられ、当時はまさに毎日が誤差範疇のような動きとなっていた。

 4月11日に日本の長期金利は3月15日につけた0.795%の直近高値を抜いて、0.855%まで上昇してきた。手元のデータからはこれは2023年11月14日に0.870%に上昇して以来の水準となる。

 4月11日に長期金利が上昇した背景には、米長期金利の上昇があり、さらに日銀の年内利上げ観測、当日実施された20年国債の入札低調といった材料も重なった。

 米長期金利については、チャートからは5%を目指して上昇する可能性が出てきた。11日の米国債券市場では、10年債利回りは4.59%に上昇していたが、2年債利回りは一時5.01%まで上昇していた。

 日銀が年内に利上げを行う可能性も強まりつつある。円安によって追い込まれてというよりも、物価上昇と賃金の引き上げなどを背景に、日銀が正常化に向けてさらに歩を進めることが予想されるためである。

 ここにきての中東情勢の緊迫化などもあり、原油価格が再び上昇しつつあり、それが物価に波及し、複合的なインフレが発生するリスクも出てきた。

 ECBは6月にも利下げをする可能性が出てきたが、FRBについては年内利下げについて不透明感が漂っている。粘着性の高い物価上昇が継続する可能性も指摘されはじめている。

 こういったことから、日本の長期金利もさらに上昇圧力を強め、昨年11月1日に付けた直近の最高利回りの0.975%が視野に入りつつある。

 今度こそ1%を超えてきても、現状の物価・経済状況であれば、何ら違和感はない。日銀はすでに正常化に向けて動いていることそのものが、それを裏付けるものとなる。

 長期金利が1%上昇すると利払い費が8.7兆円増えるとの試算が出されているが、これは長期金利が1%になったらという意味ではない点に注意が必要である。

 もう少し詳しくいえば、長期金利がこれまでの「想定」より1%上がった場合に、国債の利払い費が、さらに8.7兆円増えるとの財務省の試算である。

 その想定金利は、2024年度でいえば1.9%となっている。つまり、長期金利が、1.9%まで上昇しても想定の範囲内であり、追加の費用負担が増加するわけではない。長期金利がもし、2.9%まで上昇した場合には、利払い費が8.7兆円増えるとの試算である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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