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生配信での告発劇は「必要悪」 配信者・コレコレ氏に聞く、ネット相談に人が集まる理由

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
撮影:倉増崇史

配信用のプラットフォームが出揃い、活動しやすい環境が整ったことで個人による配信が定着した。そんな中、YouTuber「コレコレ」さんの配信には、視聴者からのさまざまな相談事が集まっている。

自身のYouTubeチャンネル「コレコレチャンネル」は、チャンネル登録者数139万人(2021年5月20日時点)を超える人気チャンネルだ。配信の中で相談者と直接やり取りし、視聴者も巻き込んで解決していくスタイルが受けている。同チャンネルではあおり運転の映像や、元YouTuberによる児童ポルノ禁止法違反事件につながる情報が公開されたことでも話題になった。

「自分の時代は、悩みはあまりなかった。今の子はネットのせいで悩むことが多くて、リアルでもネットでもいじめられたりする。若いのにとんでもない悩みを抱えているんだと感じることもある」。

コレコレさんをはじめとして、人生相談を扱うインターネットのコンテンツは絶えない。なぜ現実で関わりのないであろう、画面の向こうの人に切実な悩みを相談するのか? 「駆け込み寺」とも呼ばれるコレコレさんへのインタビューを通して、なぜインターネット上で人生相談が大きく取り上げられるのか、その一端が垣間見えてきた。

ショー化した告発劇は「必要悪」

―コレコレさんが相談で取り上げたことが、ニュースに取り上げられることが増えましたね。

相談がショー化してしまって、結果的に告発劇になってしまっている面はあります。でも、犯罪につながる行為の抑制になっていいのではないかと考えているんですよね。「告発劇は必要悪ではないか」と。

あおり運転が大きく取り上げられたのは、僕が配信したらニュース番組から連絡が来て、番組が全国で流したことによって、警察が動いてくれたからです。このように他と連携する機会も増えているんですが、影響力が強くなったからというのもあるし、単純に逮捕者が出るレベルの相談を持ってくる人が多くなってきたからかもしれません。

放送に出ることでしか解決しない問題がある

―相談者は、なぜコレコレさんに相談に来るのでしょうか。悩みが配信されることには、抵抗を覚える人もいるように思えます。

あえて自分のところに相談に来るのは、解決率が高いからではないかと。自分でやっていても不思議なことに、色々な視聴者が僕にリアルタイムに情報を送ってきて、それを組み合わせていくことで解決ができたりするんです。これが解決できたのかと、自分でも感心してしまうときがあります(笑)。

異性トラブルの場合、相手方を生配信の最中に呼んで、話をさせて解決することもあります。連絡をして通話できるとなったら、生配信で出てもらいます。

呼ばれた側は、いきなり生放送で配信されてしまっているので、テンパっていますね。都合の悪いことに対して嘘をつくので、話の矛盾が生じて、詰将棋みたいな形で追い詰められて、ボロが出て謝るのがパターンです。

相談者は、放送に出ないと解決しない内容だから出るんだと思います。たとえば男女間のいざこざの場合、相手と話したいけれど、個人的に連絡をしても出てくれない。でも、僕を通して生配信なら話せるから、表に上がってでも話したい、話して解決したいんじゃないかと思うんですよ。

相談機関はネットのことが理解できていない

―なぜ親や相談機関に相談しないのでしょうか。

相談を親に言えない理由は、単純に相談内容が親に言えない内容だからです。僕も昔架空請求業者のワンクリック詐欺に引っかかったんですが、見ていたサイトがサイトだったのでやはり親に言えなかった(笑)。

他にも、相談機関はあるけれど「相談しても理解してもらえないから来た」という人は多いです。ネットを知り尽くしてないと理解できないことも多いし、相談機関は話を聞いて終わりのことが多くて、解決に至らないらしいんですよ。僕に解決してほしくて来ている。

ある事件で加害者というデマを流された人からも相談がきましたが、デマを流されている側からしたら、一刻も早く止めたいじゃないですか。となると、やっぱり拡散力がある人のところに相談するのが一番手っ取り早いと考えたんでしょう。

警察に相談しても「じゃあTwitterをやめたら?」「アカウントを消せば」とか言われるだけのこともあるみたいで。

僕自身、オープンでやっているところが信頼できると思われているのではないかと考えています。ネットで名前と顔を出して活動していて、変なことはできないですから。ネットでよくわからない大人に相談するくらいならここに来るんじゃないかと。

「相談したら友だちにネットに書かれる」

―相談者は、どのような人が多いのでしょうか。

中学生から30代くらいまで幅広くて、女性が8割です。10代20代が多いですね。視聴者が相談に来ることももちろんありますが、僕のことは知らないのに、相談してみたらと勧められて来る人もいます。僕のノリを知らない人も増えてきて、その意味では少しやりにくいこともありますね。

全体に、まわりに相談できる相手がいない人が来ることが多いですね。若い子だと、友達に相談したらネットに書かれたりもするみたいなんです。そのようなことがあるから、今の子は本当の意味で信頼できる友達が作りにくいのかな。なかなか本来の自分が出せる場がないから、若者はYouTuberのように自由にやっている人に憧れを持つのかもしれないですね。

10年やってきたので視聴者の年齢も上がってきたのか、ここ2、3年で20代後半の視聴者が増えてきました。30、40代のお子さんがいる主婦の方が、子どもに教えるための反面教師として放送を見ていたり、ネットの最新トラブルの勉強のためにきていたりする例も増えています。

最近は「コロナでうちの店の営業がやばいので宣伝して」とかもきますよ。あとは、「コロナでお金が稼げないのでパパ活に手を出して騙された」とかの相談も多いですね。でも、その相談がきたときは、僕は「パパ活はするな」で終わるんですよね。危険性が高い行為だから。

解決するための場を提供しているだけ

―クローズドな場所でとどめるのではなく、あえて相談を配信する理由は?

僕一人の知識だとカバーできないことがあるんですが、配信することでたくさんの人に聞いてもらえてアドバイスももらえる。それをつなぐパイプ役をやるという意味で放送で扱っています。

それから、1対1だと回答が僕の考え方に偏ってしまうので、色々な人の意見を聞かせてあげるのが本人にとってもいいのではという思いもあります。僕自身は相談に対してズバズバ思ったことを言います。間違ったことを言っても視聴者が正してくれるので、僕自身学びつつ相談に乗っている感じです。

僕自身は、自分の配信について、解決するための場を提供していると考えてます。正義感じゃなくて、あくまでレンタルスペースとか、レンタルルームみたいな。影響力の使い方の一つだと思うんですよね。

―相談者としては、多くの視聴者に見てもらうことで味方してもらいたい心理も働くのでしょうか。

そうですね。多くの人に相談を聞いてもらって味方してもらいたいとか、自分が犯罪に巻き込まれているのかもわからない人が配信の中で「やはりひどいことをされていたんだ」と再確認することもあります。

「ネットの危険は絶対に知らないといけないこと」

―いまや「相談するならコレコレさん」となっていると思います。ここまで人気になった理由についてはどう考えていますか?

僕ぐらいの規模で、視聴者とからんでいる人はほぼいないんですよ。いわゆる世間が言う有名YouTuberは、視聴者とほとんどコミュニケーションをとらないんです。だから、僕が視聴者の声を一番聞いているからかもしれないと思います。

相談を解決して感謝されるとやはりいい気分になるし、活動をしていてよかったと思います。僕がやらなかったら世間に出ていないことは多いだろうし、事件が表に出ることで被害者は減るだろうし。

ネットの危険は絶対に知らないといけないことですが、若い子は多分ほとんど知らないと思うので、視聴者には僕の放送を見て知ってもらいたいと思っています。

***

今の若者たちはSNSでも複数のアカウントを使い分け、周囲に本音を出さないようにしている。しかし実際は、味方をしてもらいたい、本音を言いたいという願望を持っている。彼らがネット上の友だちに本音を話すのは、話しても人間関係や実生活に影響する恐れがなく、いざというときはブロックしたりアカウントを消したりできるためだ。

それ故、悪意を持った大人に騙される事件も続いているが、一方でコレコレさんのような存在に相談できることは、多くの若者を救っているのではないだろうか。

若者世代から相談してもらえるためには、前提としてネット・SNSへの理解が必要だ。ネット・SNSの使い方だけでなく、若者たちの価値観についても知っておくといいだろう。もし自信がない場合も、「詳しい人を知っているから相談できる」など、頼られたら対処できることを伝えておきたい。

相談されたときは、若者を否定しないことが求められる。「SNSを使うな」「アカウントを消せ」ではなく、価値観を知った上で若者の気持ちに寄り添えるといいのではないか。

若者たちは、本心では相談できる信頼できる大人を求めている。大人世代も、コレコレさんのように若者から頼ってもらえる場を作りあげることが求められているのではないだろうか。

■コレコレ

1989年8月12日生まれ。広島県出身。YouTubeチャンネル登録者数139万人、ライブ配信の最高同時接続者数は17万人超えを記録。雑談、ゲーム実況、凸待ちなど、ジャンル、放送スタイルを問わず展開。近年はイベントも開催しており、2020年2月にはZepp DiverCity Tokyoにて、音楽ライブ&トークイベント「コレフェス2020」を開催。チケットを即日完売させる等、マルチな才能を発揮している。

写真はすべて撮影:倉増崇史

(追記:5月24日)

参考までに、行政の支援に繋がる相談窓口もあわせて紹介しておく。

若者世代には相談先はあればあるほどいいだろう。

児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(厚生労働省)

24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)

子どもの人権110番(法務省)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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