Creepy Nuts「BBBB」が大バズりした理由、お笑いのリズムネタとの共通点と“早口歌唱”
R-指定、DJ松永からなるヒップホップユニット、Creepy Nutsが1月7日に配信リリースした楽曲「Bling-Bang-Bang-Born」が、全世界のストリーミングの累計再生回数1億回(ソニー・ミュージックレーベルズ調べ)を突破するなど大バズりとなっている。
同曲は、魔法を使うのが当たり前の世界を舞台に、鍛え上げた生身の肉体のみでのし上がっていく主人公・マッシュの活躍を描くテレビアニメの第2期『マッシュル-MASHLE-神覚者候補選抜試験編』のオープニング曲。Creepy Nutsは、誰かに媚びることなくラップとDJの腕っぷしを磨き上げることでシーンを突き進んできた自分たちと、マッシュの姿を重ねて「Bling-Bang-Bang-Born」を制作した。
TikTokなどのSNSでは、多数のユーザーが「Bling-Bang-Bang-Born」を使用した動画を制作・投稿。日本国内においても、2022年にブレイクした水曜日のカンパネラによる「エジソン」、『TikTok上半期トレンド大賞2023』に輝いた新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」に似たようなムーブメントが起きている。
それにしてもなぜ「Bling-Bang-Bang-Born」はこれほどまでに流行したのか。
「リズムネタ」「歌ネタ」との共通点は、言葉(歌詞)を際立たせるための仕掛け
これはあくまで日本国内の目線ではあるが、バズッた要因の一つは、お笑いで言うところのリズムネタ、歌ネタに近しい魅力や感覚が流れている点だ。
お笑いのリズムネタ、歌ネタには、いろんなパターンがある。藤崎マーケットの「ラララライ体操」やクマムシの「あったかいんだからぁ」のように、楽器などを持たず、芸人自身がメロディに乗せながらアカペラでネタを披露するもの。どぶろっくのように、ギターなど機材を使用して歌うもの。あと、ピコ太郎の「PPAP」のように音源をあらかじめ制作し、それを流してカラオケ的に口ずさむもの。
リズムネタ、歌ネタにはこのようにいろんなパターンがあるが、いずれもサウンド面の音数はできるだけ少なめに設定されている。バックトラックを作り込むことで音楽的にはゴージャスになるが、そうすると笑わせるために用意した言葉(歌詞)の印象がぼやけてしまうからだ。笑わせるポイントを埋もれさせないためにも、リズムネタや歌ネタにおいては、サウンド面の情報量は少ない方が効果的。そうすることで聞かせたい言葉やネタが脳裏に残りやすくなる。
「Bling-Bang-Bang-Born」にはいろんな音のアイデアが詰め込められているが、一度に聴こえてくる音数自体は決して多くない。しかし、だからこそ<Bling-bang-bang, bling-bang-bang-born>(※註1)というリリックなどが強調されて聴こえるようになっている。言葉や語感のおもしろさに着目し、さらにそれを連呼するなどいろいろ際立たせて聴き手を引きつける部分は、まさにリズムネタ、歌ネタのシステムに共通している。
※註1:「Bling-Bang-Bang-Born」歌詞より引用(作詞:R-指定/作曲:DJ松永)
さらに同曲は、<Bling-bang-bang, bling-bang-bang-born>というリリックのみならず、同じようなリズムが楽曲全編にわたってひたすら反復されている。これも「PPAP」などのリズムネタ、歌ネタの特徴と類似している。反復されるリズムが効果的となり、魔法の世界を舞台とする『マッシュル』のイメージに合わせた妖しげなメロディがより不穏さを放ち、さらにそれが延々とループするように感じさせるのだ。
「Bling-Bang-Bang-Born」の依存性の高さ、没入度の深さは、これらが理由としてあるのではないだろうか。
「Bling-Bang-Bang-Born」独自のバズり方、R-指定の“早口歌唱”の真似
TikTokなどでは、同曲に乗せて、『マッシュル』のオープニング映像で披露されている振付も拡散されている。ただこれは新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」をはじめとする、これまでのTikTokなどでのヒットソングの流れと同様である。
しかし「Bling-Bang-Bang-Born」独自のバズり方と言えるのは、R-指定の“早口歌唱”を真似る投稿者が続出しているところだ。TikTokなどでは、「Bling-Bang-Bang-Born」のカラオケ動画もかなりの頻度で見かける。ちなみにR-指定と言えばかつて、ほかにも在籍しているヒップホップグループ、梅田サイファーの楽曲「トラボルタカスタム feat.鋼田テフロン」(2019年)における“早口歌唱”のパートと身振り手振りも注目され、それを真似するTikTokユーザーらが多数あらわれた。
「Bling-Bang-Bang-Born」のR-指定の超絶的なラップスキル、そして矢継ぎ早にリリックが繰り出される歌唱スタイルは、当然ながらそう簡単に再現できるものではない。ただ難易度が高いからこそ、それを歌いこなせたときの達成感は格別なはず。TikTokなどで振付動画だけではなく“早口歌唱”の真似も広がっているワケは、動画投稿者はもちろんのこと、視聴者もそれを観て「歌い切れるだろうか」とハラハラしたり、一緒になって達成感を味わえたりするからではないだろうか。
「Bling-Bang-Bang-Born」の良さは前述した点のみならず、深掘りすればもっとたくさんある。だからこそこのヒットは長く続き、より幅広い層に受け入れられそうだ。Creepy Nutsと言えば令和のヒップホップシーンを代表するアーティストだが、『NHK紅白歌合戦』の出場候補に毎年のように挙げられ落選が続いている。今回のヒットによって、2024年末の大舞台は“当確”ではないだろうか。