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城彰二氏が提唱。「本田は理想を追いすぎ」。

本郷陽一『RONSPO』編集長

ザックジャパンは、ここにきて危機的状況を迎えているように見える。アスリートジャーナルというWEBメディアに記事を書かれている元日本代表で現在インテルが日本に開設したアカデミーのテクニカルディレクターを務められている城彰二さんの構成を手伝っている関係で、今回の東欧遠征についての評論を聞く機会に恵まれた。

城さんの「本田が理想を追いすぎているように見える。このままならチームが空中分解してしまう危険がある」という警鐘が強く心に残った。今、アンチテーゼとしてのザック解任論を掲げるより、現実的な議論の提唱だと思ったので、その城さんとのザックジャパン談義の一部を紹介しようと思う。

――城さん、アスリートジャーナルに書かれている本田の暴走を止めよ!という記事は、かなりショッキングに思えました。

「今回の東欧の遠征で、ザックジャパンの現在地がよくわかったと思うんです。欧州予選ではグループ最下位のチームであるベラルーシは、引いてブロックを固め、攻撃はセットプレーとカウンター。自分らの実力を知った上でどうすれば勝てるかというサッカーを徹底していた。それに比べて日本は理想を追い続け、自分らの現実を見ていない」

――理想と現実の間にある大きなギャップですね?

「理想を追求している中心は本田でしょう。彼は、おそらくもっと高いレベルのパスサッカーを完成したいと考えていると思うんです。でも、今、理想を追っている場合でしょうか? プレッシャーをかけられた状況でのパス精度はまだ低い。ザッケローニ監督が言うように攻撃の機会をたくさん作っておかねば、得点に結びつかないほど決定力はない。ブロックを固められている中央をポジションにとらわれないような連携とパスで崩していこうという意図はわかるんですが、個の力がまだ足りない状態で、それはW杯で勝つための現実なプランでしょうか? 本来の日本の武器は左サイドからの崩しでしたよね。それをさらに高いレベルに積み上げていかねばならない時期でしょう。そして本田の理想を追うサッカーに他の選手も同意しているのでしょうか? 私から見て、そうではないとも見える。各自が、やろうと思っていることがバラバラに見えるんです。このままでは本田が孤立してチームが空中分解しますよ」

――その方向性を決めるのがザックの仕事では?

「そうなんです。そこを選手任せにしてしまっている。アトランタ五輪のチームも確かに『攻めよう』、『いや勝つためには守ろう』と意見が分かれていました。それを西野監督が『勝つために守る』と方向性を決めました。選手は不満を持っていましたが、『やろう』となれば、意識は統一されますよね。その意味でザッケローニ監督が、どうするのかの方向性を示すべきだと思うんです」

――でもアクションがない。

「そうなれば、選手が独自に考えるしかない。遠藤、長谷部あたりが、本田と話をして、理想を追っている場合かどうかを決めるべきでしょう。ジーコジャパンのチームで中田英寿氏が、本田と同じような状況で孤立しましたが、このままでは危険です」

さらに詳しい内容はアスリートジャーナルの記事を読んでもらいたいが、城さんは、ズバっと現在のザックジャパンが抱えている問題的を指摘しているように思う。本田のリーダーシップがミスリードなのか、それとも正しいのかについては議論が分かれるところだろう。だが、現実問題として結果は出ていない。本田の行動がミスリードならば、それを修正するのは誰の役目だろうか?

『RONSPO』編集長

サンケイスポーツの記者としてスポーツの現場を歩きアマスポーツ、プロ野球、MLBなどを担当。その後、角川書店でスポーツ雑誌「スポーツ・ヤア!」の編集長を務めた。現在は不定期のスポーツ雑誌&WEBの「論スポ」の編集長、書籍のプロデュース&編集及び、自ら書籍も執筆。著書に「実現の条件―本田圭佑のルーツとは」(東邦出版)、「白球の約束―高校野球監督となった元プロ野球選手―」(角川書店)。

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