【今こそ語りたい!80年代特撮ヒーローの魅力とは?】夢いっぱいだった宇宙のスーパーヒーローは誰?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので、3月も半ばに入りましたが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のテーマは「宇宙」です。
宇宙とは皆さまのご存知の通り、たくさんの星々を内包する大空間であり、私達が暮らす「地球(earth)」も、その宇宙の中にある星々のひとつとして数えられます。
私達が暮らしている「地球」ですが、宇宙が138億年前のビックバンと呼ばれる大爆発で誕生したのに対し、地球の誕生は46億年前。地球人類はおよそ500万年前に現れたと言われています。つまり、長い長い宇宙の歴史から見れば、私達人類の歴史はほんの幼年期に差し掛かったに過ぎません。
そんな幼い人類に対し、無限に拡がる宇宙はたくさんの恩恵をもたらしました。その1つが宇宙に対する「好奇心」です。夜空に輝く星々を見上げながら、星々を繋げることで形成される星座の創造や、瞬く星々に人々(宇宙人)は住んでいるのか?等々・・・古来より人々は宇宙に対して想像を膨らませ、それは科学や芸術といった学問の世界にも反映された他、航空宇宙技術の向上にも大きく寄与することになりました。
この宇宙に対する人々の想像力は、私達が日常的に親しんでいる数々の映画やテレビ番組の世界において大いに発揮されてきました。
今や親子三世代に渡って愛される日本のアニメ・特撮ヒーロー番組でも、宇宙を舞台に物語を描く作品が現在まで多数発信されており、その壮大な世界観の中で、子ども達をはじめとする視聴者に対して、宇宙に対する想像をかき立てていました。
例えば「銀河」ならば、現在まで銀河の名を冠した特撮ヒーロー番組が、国内で数多制作されてきました。円谷プロ制作のウルトラマンシリーズをはじめ、東映制作のスーパー戦隊シリーズ等が挙げられます。
さらに「星座」に焦点を当ててみると、東宝制作の特撮ヒーロー番組『超星神グランセイザー(2003)』では12星座の力を宿したヒーロー達の活躍を描き、東映アニメーション制作のアニメ『スタートゥインクルプリキュア(2019)』では、星座の力で闘う5人のプリキュアの物語が描かれました。
上述した4つのシリーズの物語で共通している点は、「宇宙の平和を守るヒーロー」の物語であるという点です。自らの野望のために地球だけに留まらず、宇宙の秩序を乱すような悪を相手に、ヒーロー達は決死の戦いを挑みました。
・・・とはいえ広大な宇宙を舞台に、単独で悪と闘うことは簡単ではありません。
それくらい宇宙は広すぎるのです。
故に宇宙のヒーロー達の多くは、「○○警備隊」もしくは「○○警察」といった日本の警察機構に非常に酷似した組織を編成していました。ヒーロー達は自分達の担当する範囲(惑星)に飛び、その星の平和を守るのです。
そこで本記事では、円谷プロ制作のウルトラマンシリーズと、東映制作の宇宙刑事シリーズ、2つの日本の特撮ヒーロー番組に登場した「宇宙の平和を守る組織」に焦点を当てて、ゆっくりお話をしていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【鎧をつけたウルトラマン?】愛の勲章胸にして!緑に光るヒーロー!アンドロメロスとは何者か?
さてさて、ここからは特撮ヒーロー番組に登場した「宇宙の平和を守る組織」についてお話をしていきたいと思いますが・・・まずはウルトラマンシリーズ。名実ともに国民的特撮ヒーロー番組と呼んでも過言ではない当シリーズですが、少しだけウルトラマンシリーズについてお話しをさせてください。
ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』及び、特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』を起点とするシリーズです。1966年に『ウルトラマン』が放送され、身長40mの銀色の巨人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、以降も『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンティガ(1996)』、『ウルトラマンコスモス(2001)』とシリーズが続いていき、現在まで最新作『ウルトラマンブレーザー(2023)』が放送されました。
さて、ウルトラマンシリーズは現在まで約60年の歴史を有しているシリーズ。よってたくさんのウルトラマン達が当シリーズから輩出され、今日も地球や宇宙の平和のために戦い続けています。しかし彼らひとり一人は決して無敵ではありません。
私達人間の目線から見れば単独でも十分強いのですが、時に彼らも一人の力ではどうしようもできない敵を相手にすることもあります。そこで、他のウルトラマンに対して救援を要請するような有事に機能し、歴代ウルトラマン達の多くが所属している宇宙の平和を守る組織こそ「宇宙警備隊」です。
当組織に所属することで、異なるウルトラマン同士が有事の際に連携をとり、巨悪を倒すことができるのですが、宇宙とは実に広大な空間。時にウルトラマン達でさえ手の届かないところで悪者が暴れている事例も多々。
そこで「宇宙警備隊」は、ウルトラマン以外の種族が組織している警察機構とも連携をとり、宇宙の治安維持に努めています(私達の世界でいうなら、各国の警察が連携した国際警察機構のような関係性でしょうか?)。
そのひとつが「アンドロ警備隊」です。ウルトラマン達と非常に酷似した姿を持つ種族・アンドロ人によって構成される平和維持組織で、隊長であるアンドロメロス(緑)を中心に、ベテラン戦士であるアンドロウルフ(赤)、メロスからスカウトされたアンドロマルス(オレンジ)、アンドロ族王家の血を引くアンドロフロル(白)の4人で構成されています。
実はこの「アンドロ警備隊」、なんとウルトラマン達が所属する宇宙警備隊の兄弟組織。その誕生の背景には、宇宙警備隊の隊長・ゾフィー(ウルトラ兄弟の長兄)とアンドロ人との知られざる交流がありました。
それは、ゾフィーが宇宙の地獄である「ブラックホール」に吸い込まれてしまった際に、その危機を救ったのがアンドロ人(セザル)でした。これを機に、ゾフィーはセザルの鎧(コスモテクター)を借り、初代アンドロメロスとして正体を隠しながら悪と闘うこととなります。その後戦いを終えたゾフィーは鎧を返却し「宇宙警備隊」の隊長としての任務に戻りますが、ブラックホールさえ移動できるような、次元を超えるアンドロ人の空間移動能力を目の当たりにしたゾフィーは、自分達と同じような宇宙平和に貢献する組織の設立をアンドロ人に助言し、その結果「アンドロ警備隊」が結成されました。
その隊長となったのがセザルの息子であるブノワでした。ブノワはセザルが着ていた鎧(コスモテクター)と「アンドロメロス」という名前を襲名し(つまり、現在のメロスは2代目)、警備隊メンバーの選抜を開始。初代アンドロメロス時代よりパートナーであったウルフ(赤)、怪力自慢のマルス(オレンジ)、凄まじい潜在力を発揮するフロル(白)が集結したことで、今日の「アンドロ警備隊」が結成されました。
「ここまでアンドロ警備隊とやらの歴史はわかった。彼らはいつの時代のヒーローなの?」
そんな「アンドロ警備隊」の活躍がテレビで放送されたのは、なんと約40年も前のこと。『アンドロメロス(1983)』というタイトルで、1983年の2月から4月にかけて、毎週月から金曜日まで1話約5分の帯番組として放送されました(例えるなら、NHKの朝の連続テレビ小説みたいなものでしょうか)。本作は全45話の中で、アンドロ警備隊と全宇宙の支配を企むグア軍団との戦いが描かれました。
残念ながら『アンドロメロス(1983)』は放送終了後、ウルトラマンのようなシリーズ化には至りませんでした。しかし「鎧を着けたウルトラマン」というコンセプトは以降のウルトラマンシリーズにも継承されたほか、2019年よりYou tubeをはじめとするネット配信ドラマとして制作された『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(外部リンク)では、アンドロメロスのその後が描かれ、メロスは「頼もしい後輩(5人目の隊員・アンドロアレス)」ができたことから、「アンドロ警備隊」隊長の座を離任して、宇宙のか弱き生命を守護することを目的としたレスキュー組織「ギャラクシーレスキューフォース」に身を置いていることが発覚します。
約40年の時を超えて復活したアンドロメロス達。CGアニメーションやモーションキャプチャーを筆頭に、映像技術も急速に発達した現代において、彼らが真の力を発揮して夢いっぱいの新時代を切り開く日も、そう遠くはないのかも知れません。
【あばよ涙!よろしく勇気!】宇宙を守るおまわりさん!宇宙刑事達が所属する銀河連邦警察ってどんな組織?
さて、ここからは東映制作の宇宙刑事シリーズに登場した「宇宙の平和を守る組織」についてお話をしていきたいと思います。その前に少しだけ、宇宙刑事シリーズについてお話しをさせてください。
宇宙刑事シリーズとは、東映制作の特撮ヒーロー番組である『宇宙刑事ギャバン(1982)』を起点とする特撮ヒーローシリーズ(全3作品)のことです。
『宇宙刑事ギャバン(1982)』とは、地球を支配下に置かんとする宇宙犯罪組織マクーから地球を守るため、銀河連邦警察から派遣された宇宙刑事・ギャバン(一条寺 烈)が、マクーが毎週送り込む怪物達と戦う物語。本作はギャバンとマクーの戦いを描くだけでなく、ギャバンを宇宙人の父(ボイサー)と地球人に母の間に生まれた存在として設定し、主人公が失踪した父親を探し出し、悲しき再会を果たすまでの過程も描かれました。
激しいアクションと重厚な人間ドラマが共に凝縮された『宇宙刑事ギャバン(1982)』は好評を博し、次回作『宇宙刑事シャリバン(1983)』、さらに『宇宙刑事シャイダー(1984)』が制作されました。
宇宙刑事シリーズは上記の3作品で幕を閉じますが、その後も当シリーズの志を継承し、ギャバンと同様にメカニカルなヒーローが活躍する特撮ヒーロー番組が1999年まで放送が続けられました。その結果、宇宙刑事シリーズは「メタルヒーローシリーズ」と呼称されるまでに大きく発展し、仮面ライダー、スーパー戦隊シリーズに続く、東映を代表する第3の特撮ヒーローシリーズとして定着していきました。
さて、そんなメタルヒーローシリーズ確立の原点であった宇宙刑事シリーズ。当シリーズにおいて重要な役割を果たしていたのが「銀河連邦」の存在でした。当シリーズの主人公を務めた3人の宇宙刑事(ギャバン、シャリバン、シャイダー)が所属していたのが、宇宙連邦「銀河連邦」の警察組織である「銀河連邦警察」。当組織はコム長官を最高責任者に、バード星と呼ばれる惑星を本拠地として宇宙の平和のために活動している警察組織です。ギャバン達をはじめ、たくさんの宇宙人達が宇宙のおまわりさんである「宇宙刑事」として当組織に所属し、赴任先である惑星で警察活動を行なっています。
この「銀河連邦警察」ですが、その組織構造は極めて明確。当警察組織はコム長官と秘書を中心に、長官の指示によって動く刑事達、また事件によっては異なる赴任先の刑事同士も協力する展開等に加え、各宇宙刑事達のバックストーリー(どんな惑星からきた人達がどんな役職で警察組織に所属しているのか、なぜ警察組織に入ろうと思ったかといった動機等)などが丁寧に描写されていることも特徴でした。
そんな「銀河連邦警察」・・・組織内部が丁寧に描写された反面、汚職やトラブルも多く発生していた組織でもありました。宇宙刑事でありながら悪の道へと堕落し、あろうことか犯罪組織に加入した者もいた他、銀河連邦警察の重鎮達による汚職やトラブルも併せて発生しており、悪の組織と結託した兵器開発や、悪の幹部になりすまして宇宙刑事の捜査妨害を行なう等、犯罪に加担した不届き者も銀河連邦警察に数多く存在していました。
その際も、ギャバンを筆頭とする宇宙刑事達が事態の鎮圧に向かいますが、時には宇宙刑事だけでは解決が困難な事件も発生していました。例えば、銀河連邦警察の技術が流出し、全宇宙の支配を企む悪の帝国(宇宙帝国ザンギャック)の技術と融合した悪いロボット(ギャバンブートレグ)が製造されてしまったため、ギャバンは(一応は)反社会的な「海賊」を名乗るスーパー戦隊「海賊戦隊ゴーカイジャー」と共同戦線をとり、ブートレグと彼を使役していた怪人(アシュラーダ)を倒すために共闘したことさえありました。
そんな銀河連邦警察の組織内における一悶着の中で、極めて珍しい事例だったのが、「ギャバンによる地球破壊光線の発射」でした。2013年に公開された映画において、宇宙刑事から銀河連邦警察の隊長へと昇格したギャバンは、あろうことか地球に向けて破壊光線を発射してしまったのです。
「えっ、なんで正義のヒーローが地球に破壊光線を撃つんだよ!」と思われる方も多いと思います・・・実際、私も映画館で愕然としました。「大好きなギャバンはそんな人じゃない!」と、当時頭を殴られたような衝撃だったのです。宇宙刑事としての活動の傍ら、行方不明となった父を捜し出し、愛する母との思い出を胸に再会を果たすも、最後に死んでしまった父へ流したあの涙はなんだったのか・・・ギャバンにとって地球は、愛する亡き母の母星なのですから。
なぜそんなことになってしまったのか・・・この重大事件は映画『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z(2013)』において描かれました。本作の物語は、宇宙各地が魔法陣の暴走によって破滅の危機にあり、銀河連邦警察はその原因が地球にあることを突き止めます。さらに地球を守るスーパーヒーローである仮面ライダー達に事件の疑惑がかけられ、銀河連邦警察は宇宙の平和のため地球を「超次元砲」で消去することを決定します。その「超次元砲」のスイッチを握っていたのが、刑事から銀河連邦警察の隊長へと昇格したギャバンであり、隊長という役職と、地球は母の星であるという私情に板挟みとなった彼は、最終的に宇宙の平和のためという建前の下、「超次元砲」を地球へ発射してしまったのです。
「許してくれ・・・母なる星よ・・・超次元砲・・・発射!」(ギャバン)
しかし、宇宙各地で巻き起こった破滅の危機の要因は、悪の秘密結社「スペースショッカー」の仕業であると判明し、仮面ライダー達の疑惑は晴れ、ギャバンの後輩である宇宙刑事たちによって超次元砲が放った破壊光線は無効化され、地球は救われます。
私も本作の公開当時、ギャバンの苦悩や葛藤描写には共振するものを感じつつも、やはりかつての『宇宙刑事ギャバン(1982)』を前提に視聴していたので、ギャバンは変わってしまったのだろうかとモヤモヤしていたものです。
・・・しかし、やはりギャバンはかつてのギャバンでした。本作公開後に制作された映画『スペース・スクワッド(2017)』において、ギャバンは後輩の宇宙刑事・十文字撃(2代目・宇宙刑事ギャバン)の危機に駆けつけます。強敵を前に戦う覚悟を決めた後輩に対し問います。
「みんながお前を信じて戦っている。マッドギャラン(敵)に・・勝てるか、撃?」(ギャバン)
「勝ちたい」と返答する後輩(撃)に対し、ギャバンは易しい笑みを浮かべます。
「良い目をしている。あきらめない。絶対に恐れることのない、漢の目だ。受け取れ。そして・・・戦え!」(ギャバン)
ギャバンは撃に、自分にとって魂ともいえる「剣(レーザーブレード)」を託します。受け取るのを躊躇する後輩に対し・・・
「・・・だから、お前に授けるんだ。」(ギャバン)
「重い・・・めちゃくちゃ重い・・・だから勝ちます!」(撃)
ギャバンが愛用していたレーザーブレードを託された撃は勇猛果敢に戦いを挑み、強大な敵を退治します。そして撃は、宇宙刑事をはじめ、先述したメタルヒーロー、さらにはスーパー戦隊をも巻き込んだ宇宙のヒーロー達によって編成される選抜部隊「スペース・スクワッド」の隊長に任命されます。ギャバンから託された宇宙刑事の魂は、次なる世代へと受け継がれていったのでした。
ここまで上述してきた、撃が隊長を務める『スペース・スクワッド』の物語はこれまで3作品制作されました。しかし2018年公開作品を最後に次回作の公開が途絶えており、その物語も2024年現在未完のままにあります。いつか彼らによる心躍る大活躍が再見できる日を、心からお待ちしております。
いかがでしたか?
ここまで上述した『アンドロメロス(1983)』や宇宙刑事シリーズですが、80年代を代表する特撮ヒーローのほんの、ほんの一部に過ぎません。
・・・実は、まだまだお話ししたい作品がたくさんあるのですが、次回の機会に、またじっくり掘り下げて参りたいと思います。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・宮島和宏、『ウルトラマンAGE Vol.13』、辰巳出版
・小野浩一郎・岩畠寿明(エープロダクション)、『講談社シリーズMOOK ウルトラ特撮PERFECT vol.27 ウルトラファイト/レッドマン/トリプルファイター』、講談社
・平政和、『ウルトラヒーロー完全ガイド 1966-2012』、株式会社メディアックス