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今週10日(金)の日銀金融政策決定会合でサプライズ修正はあるのか

久保田博幸金融アナリスト

 3月9日、10日に黒田総裁としては最後となる金融政策決定会合が開催される。ここで金融政策に関してサプライズがあるかどうか、市場参加者の見方は分かれているようにみえる。

 昨年12月20日の金融政策決定会合における長期金利の許容レンジの拡大がサプライズであったことから、その後の金融政策決定会合では現状維持予想が大半となっていたにもかかわらず、サプライズ修正もあるとみた仕掛的な動きが出ていた。

 それを助長するかのような報道も垣間見られた。これは12月の会合前も同様であった。どうも結果としては正確ではない報道も出ていた。たとえば時期総裁人事に絡んだものなど。

 今回の日銀総裁・副総裁人事を巡っては、みえないところで大きな動きがあったように思われる。政治的な配慮に加え、OBも含めた日銀関係者の間でのやりとりがあった可能性があるが、これについては実際どのようなことが起きていたのかはわからない。

 日銀の黒田東彦総裁の後任には、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した。副総裁に氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を充てる案が示された。

 衆院や参院などでの植田氏の発言などからは、正常化に向き合うとは予想されるものの、慎重にイールドカーブコントロール(YCC)を修正し、マイナス金利についてはあらためて物価動向などを確認しながら修正を進める可能性が高いとみられる。

 しかし、4月にいきなりYCCの修正・撤廃を行うのではなく、3月の会合で行った方が良いとの見方もある。欧米の長期金利が上昇し、10年369回は0.5%を突破するなどしており、4月の会合までに再び市場との対立姿勢を強め、大量の国債をさらに日銀が買うことにもなりかねないためである。

 個人的にも、いちはやくYCCは解除しろ、と言いたいが、たぶんその願いはなかなか聞き入れてはもらえないかもしれない。4月まで「工夫」で乗り切る可能性も十分ある。

 仮に3月10日に修正があったとすれば何を変えてくるか。

 繰り返すが中途半端な工夫はいらないのでさっさとYCCとマイナス金利を解除してほしい。しかし、これまでの経緯からみて、今回もワンクッション置いてくる可能性がある。例えばコントロールする長期金利の対象を10年から5年や2年に変えて、その幅を±0.5%にするといったこともありうるか。

 一般的に長期金利は10年新発債の利回りを指す。しかし、短期金利に対する長期金利としては1年を超える期間の利回りを指すことから、2年債利回りもこの意味では長期金利といえる。

 何はともあれ、このような物価情勢と海外の金利情勢となっているのに、異常な金融緩和政策にしがみつく日銀の政策の異常さがさらに際立っているようにも思われるのだが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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