Yahoo!ニュース

楽天オコエは一軍か?巨人正三塁手は村田か岡本か?これらは球団のビジョンの問題

豊浦彰太郎Baseball Writer
高い身体能力を誇るオコエも、今一番大切なのは実戦経験を積むことだろう(写真:岡沢克郎/アフロ)

楽天が、ドラフト1位ルーキーのオコエ瑠偉を開幕1軍メンバーに残すかどうかに、注目が集まっている。ぼくは、この判断は彼の現時点での実力に対する評価ではなく、将来の彼に対する球団のビジョンで決定されるべきものだと思う。

オコエは紅白戦を含む実戦計19試合で11打点をマーク。守備、走塁でもソツのなさを見せた。1軍登録メンバーは28人だが、開幕カードは登板機会のない先発投手を外すため野手を多く登録できる。3連戦でも安定した力を見せれば、枠に滑り込む可能性が高い。

梨田監督は「1軍でやらせた方がいいのか2軍で実戦をやらせた方がいいのか、悩ませる素材」としながらも、日本ハム監督時代に指導した中田の1年目が開幕2軍スタートだったことを述懐。非凡な打撃力を持つ一方で守備に不安を残した当時の中田と比較し「守備と足で十分にやれている」と話した。

出典:デイリースポーツ(3月19日付)

率直に言って、オコエは現時点では1軍でレギュラーを張れる存在ではない。彼にとって最も大事なのは出場機会だと思う。楽天が、彼は代走や守備要員で良いと考えているなら思いきって1軍メンバーに入れても良いだろう。しかし、それでは伸び盛りのこの時期に半ば飼い殺しにしてしまうことになる。開幕3連戦だけの登録なら話は別だが、そのことにそれほど意味があるとは思えない。

チームの編成上、将来大きく伸ばすより現在のスキルを最大限活用する方が良い選手もいると思う。入団時点で「第4の外野手として重宝できれば良い」という評価と位置付けの選手の場合はそうだ。しかし、高卒ドラ1は違うはずだ。そうなると、今回のオコエの処遇も自ずと答えが導き出されるものだと思う。

楽天では、プロ入り当時先発投手だった松井裕樹が制球難もありリリーフに転じ、結果的に成功(少なくとも現時点では)した例もある。しかし、これにもぼくは必ずしも賛成ではない。球団が彼の適性はリリーフにありとして、今後とも守護神として長く活躍して欲しいと考えているならこれで良いが、将来は先発で則本昂大あたりと左右の柱になるべき存在だと考えるなら、チーム事情で先発と救援を行ったり来たりさせるべきではない(そういう便利屋器用で良い投手もいるが)。

似たようなことが、巨人の正三塁手争いでも言えると思う。ベテランで契約最終年の村田修一を起用するか、それとも高卒2年目の岡本和真を抜擢するか?これは、オープン戦という極めて限定された期間でのパフォーマンス(2人とももうひとつだが)をどう評価するかということではなく、巨人が今季の戦力編成を、中期的な世代交代を、そして有望な若手の将来をどう考えているかというビジョンの問題だ。新聞報道では、高橋由伸監督は「決めかねている。悩ましい」とコメントしているようだ。もちろんこれはポーズだと思うが、仮に本心だとしたら指揮官として心もとない。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

豊浦彰太郎の最近の記事