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中国の熱波による干ばつも世界の穀物価格に影響か。食糧問題を深刻化させかねず、物価上昇圧力にも

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中国では記録的な暑さと干ばつが続いており、当局は今年の秋の収穫が「深刻な脅威」にさらされていると警告している(25日付AFP)。

 欧州では熱波の影響でライン川の水位が低下し、欧州域内物流への影響も懸念されていた。また、猛暑と雨不足が続くなか、セルビアでドナウ川が干上がり、第二次世界大戦で沈んだドイツ軍艦の残骸が見つかる異例の事態となっているとCNNが報じていた。ドナウ川だけではなく、欧州で猛暑が数週間も続いたことで各地の川が干上がっていた。フランス西部を流れるロワール川流域では乾ききった川底を散歩できるようになった。

 同様の事態が中国でも発生している。重慶市や四川省では、連日40を超える猛暑が続いていたことで中国最大の川・長江の水位が下がり、この時期として過去最低を記録した。また通常は川底に沈んでいる600年前に作られた3体の仏像が姿を現したとか。山火事も相次いだ。

 農業農村省によると南部では高温と少雨が、60年余り前の観測開始以来、最長となっている。政府は発表で「干ばつの急速な進行に加え、高温と熱による作物の損傷が重なり、秋の収穫に深刻な脅威をもたらしている」と説明した。中国は国内で消費するコメ、小麦、トウモロコシの95%以上を自給している。収穫量が減ると輸入が増え、ウクライナ侵攻ですでに影響を受けている世界の食料供給がさらに圧力を受けることになる(25日付AFP)。

 悪いことが起きるとさらに悪いことが重なることがある。それでなくてもロシアによるウクライナ侵攻もあって、穀物生産地を抱えるウクライナからの輸出が減少するなどしている。アフリカ諸国の多くが輸入小麦の6割超をウクライナとロシア産に依存し、アフリカ各国が深刻な食料危機に直面している。中国による穀物の輸入が増加すると、この食糧危機を深刻化させかねない。

 欧州ではロシアからの天然ガスの供給の減少とともに、欧州を襲う熱波の影響でライン川の水位が低下し、欧州域内物流への影響も懸念され、エネルギー危機が発生している。

 欧州のエネルギー危機、中国の干ばつも絡んで穀物価格の上昇も予想され、これらは世界的な物価上昇にさらなる拍車をかける懸念がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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