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ドジャースの計略にはまった? レッズが今オフ獲得のマット・ケンプを解雇へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
レッズから解雇処分を受けたマット・ケンプ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【開幕わずか1ヵ月での解雇劇】

 レッズが4日のジャイアンツ戦前に、マット・ケンプ選手の解雇を発表した。

 ケンプ選手といえば、このオフにドジャースから大型トレードで獲得したばかりのベテラン選手。確かに今シーズンはここまで20試合に出場し、打率.200、1本塁打、5打点と不振スタートを切り、しかも4月21日のパドレス戦でフェンスに激突した際に肋骨を骨折し、10日間の故障者リスト(IL)に入り長期離脱が濃厚な状況だった。

 だがこの時期に解雇しようともケンプ選手の年俸2175万ドル(約24億円)はすでに保証されており、チームを離れてもレッズは支払い義務を負うことになるのだ(ちなみに600万ドル分はドジャースとパドレスが負担)。実績あるベテラン選手ならここからの巻き返しも期待できるだけに、ILからの復帰を待って残りシーズンも起用していく方針もあったはずだ。

【メディアも懐疑的だったケンプ獲得】

 MLB公式サイトが報じたところでは、ケンプ選手解雇についてデビッド・ベル監督は以下のように説明している。

 「マットがこのチームに上手くフィットするように見えなかった。彼は明らかに素晴らしい選手で、素晴らしいキャリアを誇っている。ただ我々の外野陣を整理しロースターを再構築する上で、やはり彼がフィットしていなかった。その結果の決断だった」

 ならば開幕早々でこうした判断をするのであれば、オフにケンプ選手を獲得すべきではなかったということになる。そもそもレッズが彼を獲得した際に、メディアの中には懐疑的な意見があった。というのも、彼のこれまでの経歴を考えれば至極当然なことかもしれない。

【2014年のトレードから転落へ】

 ケンプ選手は元々ドジャーズに在籍し、21歳でMLBデビューを飾るなど若手有望選手から主力選手にのし上がった選手だった。2011年には本塁打&打点の二冠王を獲得し、そのオフにはドジャースと12年総額1億6000万ドル(約180億円)の大型契約を結び、トップ選手の仲間入りをしていた。

 しかしケンプ選手はこの頃からオーバーウェイトが指摘されるなど体調面に問題を抱え、成績も下降線を辿っていたこともあり、ドジャーズは2014年オフにケンプ選手をパドレスにトレードすることを決定。さらに移籍したパドレスでも期待通りの活躍ができず、2016年シーズン途中でブレーブスにトレードされる始末だった。

 その後も2017年オフにロースターの整備に着手したブレーブスとドジャースの間でトレードが成立し古巣に復帰したが、当時は多くのメディアがドジャースからもすぐに放出されると予測していた。

【ケンプ復活劇はドジャースの計略?】

 しかし予想を覆し、ケンプ選手はドジャースで2018年シーズンを迎えた。しかも前半からチームを牽引する活躍をみせ、6年ぶりにオールスター戦に選出されるなど、完全復活を果たしたのだ。もし昨年の活躍がなければ、レッズもケンプ選手を獲得することはなかっただろう。

 それでもドジャースは、このオフに再びケンプ選手の放出に踏み切った。というのもケンプ選手の活躍の裏で若手選手の台頭もあり、シーズン終盤では先発出場機会が減り始めていた。ドジャースにとってこのオフは、若手選手への切り替えに踏み切る最適な機会だったのだ。

 しかもケンプ選手の活躍で彼の商品価値は着実に上がることになった。その結果、2017年オフに再獲得した当時よりもはるかにトレードしやすい環境が整い、レッズとの大型トレードにケンプ選手を加えることに成功したわけだ。

 結果だけを見れば、戦力外的存在だったケンプ選手を見限らずチームに残し、彼の商品価値を上げた上ですんなりトレードに成功したドジャースの見事な計略に見えなくもない。そしてその計略にはまってしまったレッズはとんだ外れくじを引き、1575万ドル(約18億円)の不良債権を背負い込むことになった。

 これでケンプ選手はFA選手になる公算が大きく(どのチームもウェーバーに手を挙げないだろう)、どのチームも最低年俸で彼と契約できるようになる。もしケンプ選手が今後他チームに移籍しそこで活躍するようなことになれば、レッズにとっては、まさに踏んだり蹴ったりというしかない。 

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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