宗教は婚活で不利になる? 新興宗教二世で破談・離婚になった事例も
■結婚相談所でも「宗教」の開示は必須ではない?
安倍晋三元首相の銃撃事件以降、次々と明るみに出る宗教団体と政治の関係が連日のように取り沙汰されています。宗教と政治の関係を問い直すべきという声が各方面で挙がっている今、今回は、婚活と宗教についてお伝えします。実際、婚活現場でもセンシティブになっていて、今まで気にしてこなかった人も、相手の宗教を確認したいという申し出を受けることが増えてきました。
結婚相談所は、プロフィールで個人情報をしっかりと確認できることがメリットです。宗教についてはどうでしょうか?
結婚相談所は加入連盟のシステムを使ってマッチングを行う場合が多いので、プロフィールは一定のフォーマットに則って記入していきます。実は、2019年ごろまでは、宗教についての記入が必須項目となっていましたが、全国の会員が閲覧できる状況を鑑みて、個人情報保護の観点から2020年に宗教欄が削除されました。信仰はないけれど脱退できない、信仰について開示したくない方にとっては助かるものの、マッチングしてからお相手が特定の宗教に入っていたことを知ることになり、縁談を進めるべきか悩む方も少なくありません。婚活はバックグラウンドを含めたお相手をしっかり見極める場所ですから、宗教の有無は大きな見極めポイントであることは間違いありません。
■相手が新興宗教二世で破談・離婚になった事例
新興宗教に関しては、旧統一教会の方との縁談を担当したことはありませんが、その他に入会・入信している会員の方の婚活を担当したこと、もしくは、担当する会員さんが「宗教あり」のお相手とマッチングしたことはあります。
結婚相談所でお見掛けするのは、敬虔な信者の方というよりも、「両親が入会・入信していて幼い頃は活動することもあったが、物心ついてからは活動していない、年に数回活動するのみ」という二世の方が多い印象です。ご自身が熱心で、「本人の給与を月10万円程度、引き落としで支払っていて、週2回は宗教施設に行く」という方は、1回だけお見受けしました。
実際の例ではこんなことがありました。私の相談所の女性会員が29歳の看護師さん、お相手が他の相談所の方で、34歳男性・会社員でした。当時はプロフィールに宗教欄があったのですが、彼は「なし」に〇をつけていたので、とくに宗教の話が出ることなく真剣交際・プロポーズへと進みました。しかし、彼女が「お受けします」とプロポーズを承諾した5分後、「実は」と彼が宗教二世であることを打ち明けました。彼女は、嘘をつかれていたことにショックを受け、彼は「自分自身は信仰心はないので、妻に強要するつもりもなく、言うのが遅くなった」と弁解しましたが、溝を埋めることができず、彼の有責で破談となりました。
こんな例もあります。女性は28歳の人材派遣会社の会社員で、再婚の相談でいらっしゃった方でした。前夫の男性は30歳の税理士で、お父様が代表を務める税理士法人を家業とされていて、信仰をお持ちのご実家でした。男性は、「今、自分自身は活動していない、結婚相手に宗教上のことは求めないから大丈夫だよ、大したことないよ」と説明していたそうです。彼女は彼に恋をしていたので、彼の言葉を信じて結婚。仕事を辞めて同居し、家業を手伝ってほしいという条件まで飲んでしまいました。しかし、結婚後、宗教に入らないことを理由に、「よそ者」と嫁いびりが始まりました。毎日家族6人の家事・買い物を押し付けられ、自由になるお金もほとんど与えられず、心身のストレスで2回も流産。彼は無関心で頼りにならず、なんとか家を出て2年で離婚に至ったそうです。再婚時は「宗教なし」のお相手を選択し、バックグラウンドや親族について冷静に見極めた婚活を進め、成婚後はすぐに妊娠・出産へ至りました。
もちろん、信仰は自由で尊重すべきものですし、宗教をお持ちの方が悪いというつもりは全くありません。ただ、望まないのに強要されたり、考え方の違いが後から問題になることは起こりうることなので、結婚前のタイミングに、お相手のバックグラウンドの一部として宗教や信仰について知っておくのが好適です。では、いったいどのタイミングでどうやって相手の宗教について聞けばいいのでしょうか?
■婚活での宗教の見極めタイミングや、聞き出す方法
まず、結婚相談所であれば、真剣交際に入る前に一度聞いておくことが重要です。お見合いや初めてのデートで聞いても構いませんが、やはりぶしつけな印象もありますから、複数の候補者とデートをする仮交際の間柄で「最近、宗教関連の報道が多いので確認ですが、私は特定の信仰はありません、親や親族もありません。お葬式は仏教で、お盆には墓参りをする程度。あなたはどうですか?」というふうに、ふつうの会話の中で、自分のことをお伝えしてから相手に聞いてみるというスタンスで探ってみるのがおすすめです。あくまで自己申告ですが、「言質を取る」ことにも意味があります。
信仰の具合については、交際が進み、お付き合いをしていると何を大事にしているか? ご実家の慣習などから推測ができそうです。「家が浄土真宗で、仏式のお葬式をする」「キリスト教の洗礼を受けていて、日曜日は教会に行く」という方も、「宗教あり」と言うべきかというと、線引きが難しいですが、日常生活にかかわっているなら、重々しくならないように事実として伝えるのがいいでしょう。キリスト教の進学校に通っていて、教育の一環として聖書を読んだり礼拝をするのが当たり前の環境で育った人は少なくありません。
分かれ道になるのは、真剣交際後の実家訪問です。両親への挨拶に行く際には、結婚式や結婚後の住まいの話に発展し、親御さんの意向もお聞きすることになります。その時に、自宅の様子もうかがえますし、「宗教には入らなくてもいいから、結婚式はこのお寺さんで挙げてほしい/キリスト教系の挙式はどうしても避けてほしい」というふうに要望を伝えられることもあるでしょう。
どこまで許容するかというのは、ご自身で判断するしかありませんが、個人的には「宗教を信仰しない自由が尊重されるかどうか、宗教によって家のお金が出ていくことがあるかないか、結婚生活に関するあらゆる決断を夫婦だけで決められるか」という3点はぜひ確認していただきたいと思います。相手を好きになったから片目をつぶろう、自分が我慢すればどうにかなるだろう、と考えるのはやめましょう。
■宗教はバックグラウンドの一部、客観的にどう見られるか知っておく
また、宗教二世の方にはつらいお話かもしれませんが、婚活をする上で、特定の宗教に入っていることが不利になる可能性は高いです。自分のアイデンティティのひとつとして、活動はしていないけれどコミュニティのひとりでいたいという気持ちは、まさに信仰の自由です。ただ、無宗教の婚活相手の立場に立ってみると、夫婦で新しい家庭を作っていくとき、何かに判断をゆだねなくてはいけないのはつらいこと。家族の信仰によって実害があるのは言語道断です。将来生まれる子供への影響や、「宗教なし」側の親族への説得などを鑑みて、お断りをされても尊重せざるを得ないでしょう。婚活を機に、自分自身のバックグラウンドを客観的に見る機会にするのがいいと思います。宗教ありを開示することで、同じ宗教同士での出会いを探すのもひとつの方法です。