コロナ死の42~57%が高齢者施設に集中 欧州5カ国で2万7000人超 長寿大国・日本は大丈夫か?
英国の週間超過死亡は6000人
[ロンドン発]新型コロナウイルスの大流行で、英イングランド・ウェールズの週間死者数(4月3日までの週)が過去5年の平均より6000人以上多いことが英国家統計局の調べで分かりました。
新型コロナウイルスの猛威がくっきり浮かび上がっています。これまでの最高だった2015年のインフルエンザも上回りました。3月27日までの週と合わせると過去5年平均より7093人も死者が多くなっています。
4月14日時点で英国の感染者は9万4829人、死者は1万2107人。4月3日まで逆上ると死者は3605人。7093人(超過死亡)と3605人(コロナ死)の差である3488人の死は何を意味しているのでしょう。
都市封鎖や自己隔離によって見逃された死なのか、医療崩壊によって適切な治療を受けられないことやメンタルヘルスに関連した死なのか。コロナショックによって普段なら死ななくても済む人が命を失いました。
対ウイルス戦争の最前線は医師や看護師ら34人のスタッフが犠牲になったNHS(国民医療サービス)病院だけではありません。
被害が集中する高齢者施設
新型コロナウイルスに脆弱な高齢者を収容する施設も第二の前線です。
英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の研究グループがイタリア、スペイン、アイルランド、ベルギー、フランスの高齢者施設を調査したところ、新型コロナウイルスによる死亡の42~57%が施設に集中していました。
ベルギーではコロナ死全体の42%に当たる1405人が高齢者施設での死亡。施設全体の90%で感染が確認されました。スペインではコロナ死全体の57%に当たる8345人が高齢者施設で死んでいました。
フランスはコロナ死全体の44.6%に相当する6177人が高齢者施設の入所者で、4889人が施設で死亡、1288人が病院で亡くなっていました。
イタリアでは577施設を対象にした調査で53%が高齢者施設で命を落としていました。
アイルランドではコロナ死の54%に当たる156人が高齢者施設の入所者でした。
イングランドのクリス・ホウィッティ主席医務官は「英国全体の高齢者施設の13.5%で少なくとも1人の入所者の感染が確認されている」と明らかにしました。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、全米の2500以上の高齢者施設で感染を確認。これらの施設で2万1000人以上の入所者とスタッフが感染しており、3800人以上が死亡しているそうです。
日本の最悪シナリオでは65歳以上の重篤患者は65万人超
こうした高齢者施設は病院以上にマスクや防護服が不足しているだけに懸念が膨らみます。長寿大国・日本でも高齢者施設での感染者が相次いでいます。
対策を何もとらないと日本国内の重篤患者数は約85万人、このうち約半数の42万人が死亡するという予測を、厚生労働省クラスター対策班の西浦博・北海道大教授が15日公表しました。
65歳以上の重篤患者は65万2066人にのぼるそうです。日本呼吸療法医学会と日本臨床工学技士会の緊急調査によると、いつでも使用できる人工呼吸器の待機台数は1万3437台。マスク専用人工呼吸器は3630台。ECMO(体外式膜型人工肺)は1255台です。
感染爆発が起きると、日本でもイタリアやスペインと同じような医療崩壊が起きても何の不思議もありません。
第二次大戦の生き残り99歳が5億4000万円以上の寄付集める
一方、第二次大戦の生き残りである元大尉トム・ムーア氏(99)がNHSのために1000ポンド(約13万5000円)を目標に自分の庭を100往復したところ20万6000人超から400万ポンド(約5億4000万円)の寄付金が集まりました。
ムーア氏は以前、がんと腰の骨折を治療してくれたNHSスタッフに感謝の気持ちを伝えるため、ロンドン北郊ベドフォードにある自宅の庭を、歩行器を使って往復するチャリティーを始めました。英TVニュース番組で紹介されると瞬く間に寄付が増えました。
ムーア氏は「NHSの看護師や医師ら全てのスタッフは今ほどみんなの支援を必要とする時はない」とツイート。庭をもう100往復すると張り切っています。
(おわり)