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ベテランの老獪さを若さで粉砕! シード選手を真っ向破り、大坂なおみが3回戦へ:マイアミ・オープン

内田暁フリーランスライター

2回戦 大坂なおみ 61 63 S・エラーニ[14]

米国フロリダ州で開催中の、グランドスラムに次ぐグレードの大会“マイアミ・オープン”。大会推薦者枠を得て出場した18歳の大坂なおみ(104位)は、大会14シードで2012年全仏準優勝者でもあるサラ・エラーニを破り3回戦へと進出した。

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初めて挑む、プレミア・マンダトリーの2回戦。対戦相手は、経験豊富な第14シードのサラ・エラーニ――。

その大舞台に臨んだ際の心境を試合後に問うと、大坂なおみは、次のように振り返りました。

「まずは対戦相手を選手として尊敬する。勝つか負けるかということは考えずに、純粋に良い試合をしたいというのが考えだった。コート内に踏み込み、攻撃的なプレーに徹する……」

そこまで言うと、彼女は少し小首をかしげ、恥ずかしそうに聞き返します。

「……あれっ? 質問って、なんだったっけ?」

改めて問いを繰り返すと、彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべて言いました。

「ポジティブでい続けること。あとは……試合中にラケットを投げないことかな?」

大坂が「コート内に踏み込む」プレーを心掛けたのは、エラーニがスピンショットと、長いラリーを得意とするためなのは明らかでしょう。そこで大坂は、自分のサービスゲームでは相手の体勢を崩すと迷うことなく強打を打ちこみ、リターンゲームでも相手のセカンドサービスを果敢に叩いて、早々に主導権を掌握します。最初のゲームこそキープされますが、そこからは怒とうの6ゲーム連取。予想を上回る大坂の攻撃力に戸惑うエラーニを尻目に、18歳はわずか24分で第1セットを奪取しました。

しかし第2セットに入ると、経験豊富なベテランが本領を発揮し始めます。前後左右にボールを散らしつつ、大坂の強打をしぶとく、しつこく返すエラーニ。それでも大坂は、相手が自分のプレーに適応し始めたことに気付き、だからこそ、自分のプレーも相手に合わせて微調整していきます。

「我慢をして、クレイジーなミスをしない」

それが彼女が、自分に言い聞かせたこと。粘りのプレーも混ぜる大坂が、このセットも早々にブレークしました。

しかし、フィニッシュラインが近付きやや消極的になった大坂の隙を、エラーニは逃しません。第7ゲームでは、浅くなった大坂のストロークを立て続けにバックで叩いてブレークバック。「あのゲームが一番ナーバスになっていた」。後に大坂は、振り返りました。

試合の流れが、もしかしたら変わったかもしれない第2セット第8ゲーム――。しかし「ポジティブ」を誓っていた18歳は、ひるみません。初心に返ったかのように、相手ボールの落下点に素早く入り、腕を振り切りフォアの逆クロス、そしてバックのダウンザラインで、次々にウイナーを奪う大坂。相手の老獪さを、若さと勢いで粉砕しにいくかのような勇気溢れる大坂のプレーに、スタンドの観客は興奮し「オーサカ!」「ナオミ!」と熱い声援を送ります。30-40で迎えたブレークポイントでは、リターンポジションをコート内深くに取ると、浅いサービスを強く叩き、返ってきたボールを迷うことなく逆クロスに叩き込んで会心のウイナー。続く最終ゲームでも4本のウイナーを左右から叩き込み、一気に勝利へと掛け込みました。

「ものすごくハッピー」

試合後に口にした心境とは裏腹に、勝利直後の大坂は、極めて冷静にネットに歩み寄り、握手と同時にペコリと頭を下げて、相手に敬意を示します。

「すごくうれしいんだけれど、どうも私は、感情が顔に出にくいみたいなの」

そう言って、笑顔の練習をするように口角を上げて見せると、大坂は続けます。

「それに私には、喜んでラケットを投げる人の気持ちがわからない。私が思わずラケットを投げてしまうのは、自分に腹が立った時だけだから……」

そう言って浮かべる笑顔は、とても自然で、うれしそうでした。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日、テニスの最新情報を掲載しています。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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