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これでいいのか森保ジャパン! 完璧な勝利の中で浮上した根本的な疑問【ペルー戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

敗戦を怖れてトライを避ければ成長なし

 エルサルバドル戦に続き、ファンを歓喜させるに十分な華々しい勝利を飾った森保ジャパン。相手はFIFAランキングでひとつ下のペルーだったことを考えれば、4-1というスコアは出来すぎとはいえ、ほぼパーフェクトな試合結果と内容だったと言っていい。

 この国内の盛り上がりと期待感からフラッシュバックするのは、2018年9月に始動した第1次森保ジャパンだ。初陣となった9月のコスタリカ戦を皮切りに、10月の国内親善試合のパナマ戦、ウルグアイ戦で連勝を飾った頃を思い出す。

 あの時は、堂安、南野、中島の2列目が新三銃士としてスポットライトを浴びたが、今回の6月の代表ウィークでも、三苫、久保、堂安、鎌田などが期待通りの活躍を見せ、サッカーファンをワクワクさせた。

 ただ、5年前と同じ轍を踏んではいけない。どんな時も、冷静さと客観性は重要だ。

 今回の2連勝は、いずれも国内親善試合の出来事であり、過去の日本代表の歴史を振り返っても、格下や同レベルの相手にホームで完勝することはよくあること。そういう意味では、勝って当然の条件の中で、勝って当然の相手に順当な結果を残したにすぎない。

 ほぼ完璧だったペルー戦の勝利の中で、敢えて気になるポイントを挙げておくと、この試合の日本は、相手にボールを持たせてからのカウンター攻撃が威力を発揮していたことだ。もちろん、勝因はその戦い方が機能したことにあるので、それ自体に問題があったわけではない。

 しかしながら、南米からの長距離移動によって韓国と日本と連戦をこなすペルーに対し、58.2%と、ボール試合率で大きく上回られたことは見逃せない。

 カタールW杯を終えた昨年末。森保監督は、続投発表会見の中で、自分たちがボールを握りながらゲームをコントロールすることが今後に向けてレベルアップしなくてはいけない部分だ、と語っていたからだ。

 もちろん、試合によって臨機応変に対応することは、以前から森保監督がよく口にしていたことなので、今回のペルー戦は、チームとしての柔軟性が発揮されたと受け止めることもできる。

 ただ、今回は日本が圧倒的に有利な状況の中で戦った試合であり、相手は格上とは言えないペルーである。もし続投会見時の発言が現在も変わっていないのであれば、もっとボールを握るための姿勢を見せたうえで、勝利を目指しても良かったのではないか。

 目先の勝利に目を奪われて、本来目指すべきサッカーのテストを回避すれば、そこで積み上げられるものは少なくなってしまう。まだ強化の時間はたっぷり残されているのだから、敗戦を怖れず、ボールを握って主体的に試合を進めるためのトライをすべきではなかったか。

 この流れでいけば、おそらく9月のアウェイでのドイツ戦も、相手にボールを握られる中で、カウンターアタックを武器に戦うことが予想される。確かに、その方が勝つ確率は上がる。しかし、それでは同じことの繰り返し。カタールW杯からのレベルアップも図れない。

 現在のドイツは極度の大不振に陥っている。そのドイツに対し、果たしてペルー戦と同じ戦い方を選択するのかどうか。その意味は、今後を見据えた場合、決して小さくない。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】中村航輔=6.0点

2019年12月のE-1サッカー選手権、対韓国戦以来の出場となった。久しぶりのプレーだったが、所属クラブで成長した姿を見せ、安定感もあった。失点のシーンはノーチャンス。

【右SB】菅原由勢(61分途中交代)=6.5点

インターセプトで先制点の起点となり、2点目も伊東とのワンツー突破が起点となった。21分の決定機は逃したが、攻撃面は上々の出来。ただし、守備では背後にスペースを与えた。

【右CB】板倉滉=6.5点

守備では対人の強さとカバーリング能力の高さを披露し、攻撃では的確なパス供給を見せるなど高いパフォーマンスを披露。最終ラインを統率し、守備ラインを高く保っていた。

【左CB】谷口彰悟=6.0点

ビルドアップ時のパス供給は相変わらずの安定感だった。試合終盤の失点のシーンでは、体勢が悪い中でのヘディングのクリアをゴール前に返すという不運もあったが、及第点。

【左SB】伊藤洋輝=6.5点

今回の試合でも攻撃参加は控えめだったが、前半22分には鋭いミドルシュートを叩き込み、自身代表初ゴールを記録した。守備では大きなミスもなく、強さと堅実さを発揮した。

【アンカー】遠藤航(81分途中交代)=6.5点

抜群の予測力と危険察知能力で、試合を通して相手の攻撃の芽を摘んだ。ボールを奪った直後のフィードも上々で、伊東が決めた3点目の起点となった。81分間のプレーで役御免。

【右インサイドハーフ】鎌田大地(71分途中交代)=6.5点

前半37分の三笘のゴールをアシストするなど、インサイドハーフとしてカウンターの中継役となり、多くのチャンスに絡んだ。守備では相手の10番へのパスコースをケアしていた。

【左インサイドハーフ】旗手怜央(HT途中交代)=6.0点

エルサルバドル戦に続く先発出場。鎌田よりも守備面を意識したポジショニングでバランスをとるなど、クレバーさを発揮。前半だけのプレーだったが、上々のパフォーマンス。

【右ウイング】伊東純也(71分途中交代)=7.0点

自陣でのボールロストでピンチを招くシーンもあったが、序盤から速さと上手さを発揮してカウンター攻撃の核となった。クロスボールで何度もチャンスを作り、自らも得点した。

【左ウイング】三笘薫=7.0点

左サイドで幅をとり、自慢のドリブル突破によって相手守備陣を恐怖に陥れた。前半37分には自らネットを揺らし、後半63分には伊東の得点をお膳立て。申し分のない出来だった。

【CF】古橋亨梧(61分途中交代)=6.0点

2試合連続ゴールとはならなかったが、鎌田、伊東、三苫が作り出したスピード溢れる攻撃にアジャストできていた。13分のヘディングシュートは決めたかったが、今後も期待大だ。

【MF】守田英正(HT途中出場)=6.0点

旗手に代わって後半開始から左インサイドハーフでプレー。広範囲なプレーエリアは相変わらずで、特にこの試合では守備で貢献。改めて中盤のマルチロールぶりを証明した。

【FW】相馬勇紀(61分途中出場)=6.0点

菅原に代わって後半途中から右サイドバックでプレー。機をうかがって相手ボックス内に進入し、シュートを狙うなど攻撃力の高さを発揮。守備では細かいポジショニングが課題。

【FW】前田大然(61分途中出場)=6.5点

古橋に代わって後半途中から1トップでプレー。得意の爆走チェイスで相手DFラインにプレッシャーを与えた他、後半75分には相手のミスパスで得た好機をしっかり仕留めた。

【FW】堂安律(71分途中出場)=6.0点

伊東に代わって後半途中から4-2-3-1の右ウイングでプレー。相変わらずの貪欲さを発揮してシュートも狙ったが、ゴールならず。短い時間の出場だったため、存在感は示せず。

【FW】久保建英(71分途中出場)=6.0点

鎌田に代わって後半途中から4-2-3-1の1トップ下でプレー。出場した時間帯は日本が守備をする時間が多かったため、決定的な仕事はなし。ただ、終了間際にシュートを記録。

【DF】瀬古歩夢(81分途中出場)=採点なし

遠藤に代わって後半途中からダブルボランチの一角でプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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