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回復の流れは足踏み。人流増加が救いに…2024年2月景気ウォッチャー調査

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
人の流れは回復しつつあるが(写真:ロイター/アフロ)

現状は上昇、先行きも上昇

内閣府は2024年3月8日付で2024年2月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは前回月比で上昇となる51.3を示し、基準値の50.0を上回る状態を維持した。先行き判断DIは前回月比で上昇して53.0となり、基準値の50.0を上回る状態を維持した。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。また、令和6年能登半島地震の影響もみられる。先行きについては、価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」と示された。

2024年2月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比プラス1.1の51.3。
 原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは50.3。
 詳細項目は「製造業」「雇用関連」が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は「小売関連」以外すべて。

・先行き判断DIは前回月比でプラス0.5ポイントの53.0。
 原数値では「よくなる」「ややよくなる」「変わらない」が増加、「やや悪くなる」「悪くなる」が減少。原数値DIは53.5。
 詳細項目は「飲食関連」「サービス関連」「雇用関連」が下落。基準値の50.0を超えている詳細項目は「住宅関連」以外すべて。

現状判断DI・先行き判断DIの推移は次の通り。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、再流行の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2024年2月では物価高や令和6年能登半島地震でマイナスの影響があったものの、季節イベントの好調さをはじめ、人の流れの活性化が各方面にプラスの影響を与えており、前回月比ではプラスの結果となった。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。

直近の2024年2月では物価高と人手不足への懸念が強い一方で、人の流れの活性化や賃上げ、春の観光シーズン、株価の上昇などへの期待などから、前回月比は上昇した。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2024年2月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2024年2月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

昨今ではロシアによるウクライナへの侵略戦争の影響でコスト上昇が現実のものとなり、さらに新型コロナウイルスの変異株の影響による新規感染者数の増加が景況感の足を引っ張っているものの、人流増加のプラス影響は力強く、今回月では前回月比でプラスを示している。今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「小売関連」以外すべて。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(~2024年2月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2024年2月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「住宅関連」以外すべて。物価上昇、具体的には半導体を中心とした部品や原材料の不足、原油をはじめとした資源価格の高騰、そしてロシアのウクライナへの侵略戦争への懸念が景況感の足を引っ張っている一方で、インバウンドなどの人流の増加、春の賃上げや観光、さらには株価の上昇などの期待があり、前回月比でプラスを示している。

人流増加への期待と物価高への不安と

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・バレンタイン商戦は好調であったほか、リニューアルオープンしたレストランを中心に、好調に推移している。また、インバウンドも春節に伴う観光客の増加で好調となり、来客数の増加と売上の拡大につながっている(百貨店)。
・冬季観光シーズンとなり、各地の冬のイベントや春節の効果もあって、インバウンドを中心ににぎわった(観光型ホテル)。
・物価上昇の影響で売上は前年をクリアしているが、来客数は減少している。暖冬による雪不足の影響も気になるところである(コンビニ)。
・前月、大手自動車メーカーの不正問題が発覚してから、客の購入意欲が逓減しているようで、なかなか契約に結び付かない。そのため、当地域の自動車メーカーも少し減産している(乗用車販売店)。

■先行き
・春の観光シーズンを迎え、予約状況が好調である。歓送迎会を主として、レストラン利用、宴会利用も増加する(都市型ホテル)。
・株価の上昇や春闘での賃上げが多くの業種で進むことで、消費への気運が更に高まれば、少しずつ良くなる(百貨店)。
・商品価格も更に上がってきており、今以上に買物に対し慎重になっていくとみられる(家電量販店)。
・商品単価の上昇に伴い、買い控えが発生している。来客数の伸び悩みから脱出できず、暖かくなっても来客数が戻る気配がないため、この状態がしばらく継続すると予想される(コンビニ)。

インバウンドなどによる人流の増加で商売が好調との声が複数確認できる。季節イベントも多くで盛り上がったようだ。他方、一般消費者サイドでは物価高による消費性向の変化が、商売の足を引っ張っているとの声も多々見受けられる。また不正問題発覚(に伴う生産停止)が購入意欲の足を引っ張っているとの指摘もある。

企業動向でも物価高への影響が見受けられる。

■現状
・昨年12月に一部商品を値上げした関係で、12-1月にかけて売上がやや低調であったが、今月に入り観光客がにぎわう小売店からの受注が活発である(繊維工業)。
・自動車関連の受注が急激に減少している。暖冬の影響か青果物関連も減少している。全般的に景気はやや悪い(パルプ・紙・紙加工品製造業)。

■先行き
・電子部品、特に半導体価格が上昇しており、今後徐々に身の回りの景気を良い方向に導くと予想される。製品開発も、計画どおりに進んでおり、安定している(電気機械器具製造業)。
・輸出車両の生産調整による数量減少や、一部の稼働停止による数量減少など、当社の売上主力2社が減産傾向にあるため、若干景気が悪くなっていく(輸送用機械器具製造業)。

大手メーカーの子会社における不正問題発覚に伴う生産停止が、多様な方面に影響を与えていると解釈できる動きが見られる。他方、商品価格の上昇がプラスの影響をおよぼすとの話もある。

雇用関連では現状を再認識できる結果が出ている。

■現状
・求人数は多いものの、時給や在宅勤務関連での求職者の希望が、求人内容と合わないケースが多い。それに伴い、人手不足の企業に人材がなかなか行き渡らない。一方、既存の在籍社員の時給についても、改定の進んでいない企業が多い(人材派遣会社)。

■先行き
・求人票へ記載される賃金が増加しているため、今後、更に全体の賃上げが進んでいくと期待している(職業安定所)。

労働市場の需給のミスマッチが、求人側の現状認識不足が問題であることをうかがわせる話が出ている。他方、正しい認識による条件改善の上、積極的な求人をしているであろう企業の話も確認できる。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなり続けるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが収束点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、通常化するのかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、ワクチンなどによる平常化への動きを願いたいものだが。

さらにロシアによるウクライナへの侵略戦争は日本が直接手を出して状況を改善できる類のものではない。電気代をはじめとした物価上昇の大きな要因となっていることもあり、景況感に与える悪影響は大きなものとなっている。景況感の悪化を押しとどめ、改善へと向かわせる間接的な対応を、関係各方面に望みたいものである。

上記は今記事のダイジェストニュース動画(筆者作成)。併せてご視聴いただければ幸いである。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域ごとの景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化している」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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