ローカル列車に佐川急便!JR北海道宗谷本線・貨客混載の今を追う
2019年4月18日からJR北海道・宗谷本線の普通列車で佐川急便の雑貨を輸送する取組みが実施(外部リンク)されています。国土交通省も取組を推進・広報(外部リンク)し、ローカル線の利用促進、物流の効率化、環境問題改善にもつながります。国土交通大臣から表彰(外部リンク)され話題になりました。
しかし雑貨輸送に旅客列車を使う取組みは他の会社・区間に意外と広がっていません。理由を探るために、宗谷本線の列車に乗ってみました。
稚内駅では佐川ドライバーが積込!
JR宗谷本線・貨客混載の旅は稚内駅から。10:28稚内駅発名寄行き普通列車・4326Dに乗ります。
駅改札口に案内あり!
稚内駅改札口付近に、普通列車を利用して宅配便を輸送する「貨客混載輸送」の案内がありました。「平日のみ」なので注意しましょう。
10時頃、ホームに列車が入線。乗客の改札はまだですが、ホームには佐川急便のドライバーが作業を開始しました。
列車に早く乗りたいけど、作業の様子を見ました。
佐川急便のドライバーが作業を終えた頃、改札が始まりました。
トラックはホームに横付け!
ところで佐川急便のドライバーはどう来たのでしょうか?改札開始直後のホーム横に佐川急便稚内営業所のトラックが駐車していました。
佐川急便が駐車し、荷物を搬入した場所を別の角度・時間に撮影。現在はパーク&トレイン利用者専用駐車場になっています。
列車に乗ると作業は終わっていました。固縛作業は佐川のドライバーが担当し、JR北海道の社員は全く手をかけていません。列車の進行方向から見て後方の座席を使用しています。
列車は幌延駅へ向け発車しました。
幌延駅では地元ドライバーが荷揚げ!昇降機で跨線橋もスイスイ
列車は11:34幌延駅着、11:46発車で12分停車します。
列車到着直後にドライバーが降ろします
列車が幌延駅に到着するとすぐに幌延のドライバーが荷物を降ろし始めます。
ホームに降りてみると、荷物はあまり見た事がない機械の上に載せられました。
しかも普通列車が停車した2番ホームからは跨線橋を通って駅舎に行かなければなりません。荷物をどう運ぶのでしょうか?
跨線橋は昇降機でスムーズ!
実は荷物を載せたあの機械、荷物を積んで跨線橋の階段を昇り降りするために使います。
普通列車停車中の2番ホームから駅舎側・1番ホームへ荷物を運ぶのに5分かかっていません。
駅舎横には輸送車両が駐車していました。
荷物が積み込まれていきます。ドライバーは昇降機を駅舎に戻してから配達に向かいました。
しかしこんな荷物を降ろすなら、駅舎側の1番ホームに普通列車を停車させるべきでしょう。でもやらない理由は何でしょうか?
特急宗谷・稚内行が優先!
宗谷本線は旭川駅ー北旭川貨物駅を除き単線。列車交換は可能な駅・信号場でどうしても発生します。荷物を積んできた普通列車と幌延駅で行合うのは、特急宗谷・稚内行。
特急列車と普通列車との列車交換で、特急が営業停車する場合、特急を駅舎側ホームに停車せざるを得ないです。
国土交通大臣から表彰された取組み!広がらない理由は?
佐川・稚内営業所は南稚内駅の方が近いけど
稚内駅で列車に荷物を積み込むのは佐川急便稚内営業所のドライバー。佐川急便稚内営業所は稚内駅より南稚内駅の方が近い(外部リンク)。南稚内駅で積み込まない理由はなぜでしょうか?
最も単純な理由は、輸送する普通列車の南稚内駅停車時間が短く、すぐに発車するからです。
多くの人はこれだけで納得しますが、鉄道ファンの一部はこう反論します。
「稚内駅発着の列車は全て、南稚内駅北側にある運輸サポート稚内支所(整備を行う車庫)発着の回送が行われており、南稚内駅ホームで進行方向を変えるために停車する。その時間を使うか運輸サポート稚内支所で積めばよい」
なるほど列車運用を見ればそういう発想は判ります。しかし積込は佐川急便。列車ダイヤもあるけど、佐川の事情も考えなければなりません。雑貨輸送会社の拠点で朝の仕訳バイト経験が長かった私は、
「平日の朝8時から10時は朝一に配達せよという顧客対応に忙しい。朝10時前に南稚内駅で積み込むのは厳しい」
と反論します。稚内駅周辺の顧客に朝一配達するトラックに幌延行きの荷物を積んでおけば良いのです。
輸送可能条件が揃う区間とは?
では宗谷本線はどうして佐川急便の輸送が可能だったのでしょうか?
今回列車に乗って考えられた理由は下記の通り。
1.駅ホームや列車での荷物の積降は鉄道会社でなく雑貨輸送会社で行えること。
2.積降できる列車のダイヤであること。荷物のためだけに長時間停車しないこと。
3.列車の乗客への影響が軽微であること。
4.積降する駅は該当する時間帯に駅員が配置されていること。雑貨輸送会社と一般乗客とのトラブルが発生した時、対応するのはワンマン運転の運転士より駅員。無人駅で積降するのは厳しい。
何より発着地ごとの荷物量情報を把握しているのは、JRや国土交通省でなく雑貨輸送会社。荷物量は一部企業秘密ですので、簡単ではありません。
あとあまり注目されませんが、空になった容器を幌延から稚内に戻す動きも必要です。佐川急便が空容器輸送も列車で行っている事を発表(外部リンク)。しかも空容器輸送は、10:56幌延発稚内行き普通列車と、今回私が乗車した普通列車とは豊富駅で列車交換。豊富駅でタイミングがあえば両方確認出来ることも補足します。