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米敏腕記者が50フィート設計の日本ハム新球場を「ファンにとって最高」と賞賛!改修工事はファンを無視?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
日本ハムの新球場について投稿したジョン・モローシ記者のツイート

【米敏腕記者が日本ハムの新球場をツイート】

 MLBネットワーク等で活躍し、数々のスクープ記事をものにしてきた球界屈指の敏腕記者として知られるジョン・モローシ記者が日本時間の11月22日に、日本ハムの新球場を紹介するツイートを投稿している。

 内容は以下の通りだ。

 「オオタニとダルビッシュの元所属先である北海道日本ハムファイターズが、3月に新たに美しいボールパークを開業する。ファイターズは本塁ベース後方“50フィート”から観客席を設置する“MLBのトレンド”を採用している。ファンにとって最高であり、ボールパークの美学だ」

 このツイートを見る限り、モローシ記者が日本で巻き起こった「公認野球規則違反問題」を承知しているかどうか定かではない。しかし本塁ベースとバックネットの距離が50フィートで設計されていることに関し、MLBトレンドのボールパークをファンにとって最高のことだと賞賛している。

【米国でもNPBの裁定に疑問?】

 このツイートに対し数人が反応し、返信ツイートやリツイートをしているのだが、こちらもいくつか紹介しておこう。

 「“MLBのトレンドを採用する”。というよりNPBの規則に違反ということで1年後に改修するって笑」

 「NPBは意味のない規則を強調し、ボールパークの魅力を損なおうとしている」

 規則違反のため1年後に修復することになったという事実だけを淡々と報告するツイートがある一方で、このようにNPBの裁定に疑問を投げかけるツイートも存在している。

【ファン第一がプロスポーツの基本理念のはず】

 モローシ記者がツイートしているように、日本ハムの新球場は「ファンにとって最高」のものになるはずだった。特に日本ハムファンは、格別な思いで新球場の開業を待っていたはずだ。

 残念ながら今回の裁定はNPBの上層部内だけで決めたものであり、そこにファンの意見が反映されていたのか疑わしいといわざるを得ない。

 先日「日本ハム新球場問題で浮き彫りになったNPBの形式主義に抱かざるを得ない閉塞感」という記事を公開し、現行の状態で1年間使用することが決まっているのに、まずファンや選手たちの反応をモニタリングせずに改修することを決定してしまったNPBの姿勢に疑義を呈した。

 NPBのみならずプロスポーツはファンが存在して成立するものだし、ファン第一が基本理念であるべきだろう。今回の裁定ではファンを無視しているといわれても仕方がないだろう。

【1年を通してファン自ら声を上げていくしかない】

 だが裏を返せば、改修工事が決定しているとはいえ着工するまで1年の猶予があるということだ。NPBに対しファンの正直な意見を届けられる時間があるわけだ。

 特に日本ハムの新球場を訪れ、バックネット裏から観戦する機会を得たファンの人たちは、SNSを通じてどんどん意見を発信して欲しい。15フィートという距離が間違いなくファンを喜ばせるものだという意見に満ち溢れたなら、改修工事こそファンを無視した行為になり得るわけだ。

 もちろんNPBだけではない。日本ではこれまで体感できなかった距離で野球を観戦することができるのだ。多くの野球ファンも同様に、新球場で直に観戦したファンの意見を知りたいと思っているはずだ。そうやって野球ファンの声をどんどん拡散していって欲しい。

【改善のためにルール変更を厭わないMLBの姿勢】

 ところでMLBは来シーズンからピッチクロックの導入、シフト守備の制限、ベースのサイズ拡大等、大幅にルールを変更することが決定しており、すでにファンの間では賛否両論が出ているようだ。

 そんな中日本時間の11月16日に公開されたESPNの「Baseball Tonight」ポッドキャストに、今回のルール変更を担当したMLBのセオ・エプスタイン氏(かつてレッドソックスとカブスで編成担当責任者を務めていた人物)が出演し、司会を務めるバスター・オルニー氏の質問に答えていた。そして同氏は以下のような言葉で締めくくっている。

 「我々は今後も学び続け調整を行いながら、ベースボールをベストな状態にすることを目指していきたい」

 エプスタイン氏の言葉から、ファンにとって野球が有益になるようルール変更を厭わないというMLBの積極的な姿勢を窺い知ることができるだろう。

 ちなみに先日ロブ・マンフレッド・コミッショナーが明らかにしたところでは、MLBの今シーズンの売り上げは110億ドルに迫るという。彼らの成長は止まりそうにない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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