2019年10月25日、米宇宙開発情報メディアSPACEFLIGHT NOWは、アメリカの民間有人宇宙船開発の遅れに伴う国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士滞在予定の変更についてNASAのジム・ブライデンスタイン長官へのインタビュー記事を掲載した。ブライデンスタイン長官の発言によれば、2020年春からISSには日本人宇宙飛行士が滞在する予定だったが、アメリカ人宇宙飛行士に変更される可能性が高いという。昨年、JAXAは星出彰彦宇宙飛行士がISS船長として2020年5月から滞在すると発表していたが、この予定が2020年後半になるとみられる。
SPACEFLIGHT NOWのインタビューは、遅延が続くアメリカの民間有人宇宙船(USCV)の開発スケジュールとISSへの宇宙飛行士輸送に関するものだ。SPACEFLIGHT NOWのインタビューでブライデンスタイン長官は次のように述べた。
インタビューはアメリカで開催されていた第70回 国際宇宙会議(IAC2019)の中で行われたもので、遅延が続く民間有人宇宙船開発の詳細を問うものだった。2011年のスペースシャトル退役後、ISSへの宇宙飛行士はロシアのソユーズ宇宙船に頼っている。ボーイング、スペースXの2社による民間有人宇宙船開発は当初予定の2017年運用開始から大幅に遅れている。
現在の予定では、ボーイングのスターライナー宇宙船は射点での緊急飛行中止試験を11月に実施し、12月には無人でのロケット搭載、打ち上げ試験を実施する。スペースXのクルードラゴン宇宙船は12月半ばに高高度飛行中止試験を予定している。どちらも有人飛行試験の実施は2020年にずれ込む見通しだ。
NASAは今年7月に度重なるUSCV開発の遅延リスクとして、「商業宇宙輸送の開始が2020年2月以降まで遅れた場合、ISSの米国部分を2人の宇宙飛行士で、また4月以降は1名の宇宙飛行士で運用を余儀なくされるリスクがある」と発表していた。また、米会計検査院(GAO)は2020年9月以降にもUSCVが運用開始していない場合に備えた計画を策定するべきとしている。
ブライデンスタイン長官の発言はこうしたリスクの存在を追認し、対策としてソユーズ宇宙船でアメリカ人宇宙飛行士をISSへ送ることを優先させるという表明だ。独自の有人宇宙輸送手段を持たない日本は、こうしたアメリカの都合に伴う予定変更は受け入れざるを得ないだろう。
JAXAの野口宇宙飛行士は、USCV搭乗に向けて訓練を行っているが、宇宙船開発そのものが遅れているため、早期の搭乗予定は不透明だ。このことから2020年前半に日本人宇宙飛行士がISS滞在する可能性は低いと考えられる。