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米音楽ストリーミングのPandora、第1四半期はモバイル事業が好調も2860万ドルの赤字計上、

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
via Flickr

米国最大のネットラジオ「Pandora」が2013年度第1四半期の決算を発表しました。その内容はまたかという感じで、成長と不透明な収益性の入り混じった「いつもどおり」の決算になりました。四半期の収益は前年比55%増加の1億2550万ドルに増加しましたが、ロイヤリティ料支払いなどにより、2860万ドルの赤字を計上しました。

米国で最大規模の音楽サービスPandoraは成長を続けていますが、アナリストや業界が指摘するように、収益を確保し黒字化するまでには未だに至っていません。

第1四半期のハイライトです

・第一四半期の収益は1億2550万ドル(GAAP)で前年比55%増加

・モバイルでの収益は8390万ドル、前年比97%の成長を見せる

・第1四半期の赤字は2860万ドル、前年の2020万ドルから拡大

・第一四半期の視聴時間数は合計41億8000万時間で、前年比35%増加

・Pandoraの有料会員プラン「Pandora One」サブスクライバーは250万人を突破

・サブスクリプションからの収益は2040万ドルに上り、1020万ドルから2倍以上拡大

・4月のラジオ市場シェアは7.33%で前年同期比の5.86%から1.47%増加

・アクティブユーザー数は7010万人で、前年比35%拡大

音楽サービスはモバイルの時代に

Pandoraが今後最も期待ができる事業分野は、モバイル事業です。Pandoraのビジネスを知る上で最も重要な指標の一つであるRevenue Per Milsを見てみると、モバイルRPMが26.15ドルと1年前の19.16ドルから大きく成長しています。ウェブRPMは48.33ドルでした。またモバイルは全体の視聴時間の79%を占めました。このことからも、モバイルはまだ今後も成長が見込めるといえます。

今後もPandoraはモバイル事業に注力して行くはずです。従ってアナリストや業界は、今後Pandoraがモバイルユーザーからどのように利益を上げるかに注目していきます。モバイル事業の好調と視聴時間の拡大によって、Pandoraの収益化は現実的なものになってきているため、株主やウォール・ストリートの注目も高まっていくでしょう。

Pandoraの事業でもう一つ重要な指標であるContents Acquisition Cost (ロイヤリティ料)は、収益の66%を占めました。ロイヤリティ料支払いはPandoraのビジネスモデルの最も大きな問題点で、業界内にはこの課題が存在する限りPandoraのモデルは失敗であると指摘する声が常に上がります。

一方でロイヤリティ料支払いなど解決できていないビジネス上の課題も数多く存在しています。ある意味でPandoraのビジネスモデルには疑問があると言えますし、

Pandoraの事業内容を見ていると、期待と不安が入り交じる音楽サービスにとって成長とマネタイズは紙一重という印象があります。またここにきて競合の動きも活発になってきています。今年に入りIT業界の大手であるGoogleやAmazonが音楽ストリーミングサービスへ参入し、Appleにも新音楽サービス開始の噂があります。しかし、ユーザー規模や視聴時間の成長が示すように、Pandoraが今後も業界をリードして行く存在であると予測することができます。Pandoraのビジネスが成功か失敗かを判断するのは時期尚早と言えるでしょう。ですがPandoraが音楽ビジネスの新しい事例を作っていくことで、日本や世界各国で企業とユーザーとで両方が満足できる新しいビジネスモデルが生まれるキッカケにつながって欲しいと願うところです。

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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