こういっては失礼な言い方になるが、映画ファンも映画業界もまったくのノーマークのダークホース的な作品ながら、日本で2019年の年末に公開されると連日満席の大盛況。「ヘヴィ・トリッパー」と称される出演者のコスプレを真似る熱狂的なファンを生み、熱狂的に支持され異例の大ヒットとなったのが、フィンランド発の映画「へヴィ･トリップ／俺たち崖っぷち北欧メタル！」だ。その熱狂をまだ覚えている人もいるのではないだろうか？

　12年間、人前でライブすらしたことがない、フィンランドのド田舎の地下室でひたすら演奏してきたメタルコピーバンド、「インペイルド・レクタム」（※直訳すると直腸陥没という意味）が、初のオリジナル楽曲を生み出し、ノルウェー最大のメタルフェスへ！

　どんづまりの負け犬人生を送ってきたバンドのメンバー、トゥロ（ボーカル）、クシュトラックス（ベース）、ロットヴォネン（ギター）、ユンキ（ドラム※残念ながらフェスを前に事故で死去）、オウラ（ドラム※ユンキに代わって急遽、強制参加）の奮闘とフェス出演までの珍道中を笑いあり涙ありで描いた物語は、コアなメタル・ファンはもとよりヘヴィ・メタルがちょっと苦手な人々や一般の映画好きの心までもつかんだ。

　その熱狂から5年、まさかの続編が届いた。

　「ヘヴィ・トリップⅡ／俺たち北欧メタル危機一発！」は、前作でメンバー全員刑務所送りとなった後の物語。訳あって刑務所から脱獄した「インペイルド・レクタム」のメンバーが、ドイツのメタルフェス、ヴァッケン・オープン・エア出演を目指しまたまた珍道中を繰り広げる。

　本国フィンランドよりも世界で先に火がつき大ヒットとなり、続編まで誕生した本作はいかにして生まれたのか？

　来日した共同監督の一人、ユーソ・ラーティオ監督に訊く。全七回／第一回

この映画をいち早く支持してくれた日本のファンには感謝しています

　はじめに第一作「へヴィ･トリップ／俺たち崖っぷち北欧メタル！」について少しだけ聞きたい。

　2019年の年末、日本ではいわゆるお正月映画として公開された同作だが、連日満席の異例の大ヒットを記録した。

　このリアクションをフィンランドでどう見ていたのだろうか？

「素直にうれしかったというのが第一の感想です。

　とにかくとても大きな反響を得たことは、自分にとっては大きなサプライズでした。

　この映画は、ハリウッドが大きなバジェットで作った、いわゆる世界規模で公開されるような大作ではありません。

　フィンランドという小さな国で低予算で作られた小さな映画です。

　しかもコメディ映画。笑いというのは国や文化と密接にかかわっていて、たとえばフィンランドのコメディならばフィンランド人ならばわかるけれども、ほかの国だとさっぱりわからないというものが多々あります。だから、自国よりも他国で評価を得るのが難しいところがあります。

　ゆえに、まさか他国で、ましてやフィンランドから遠く離れた日本でヒットするとは予想もしていませんでした。

　実は、日本で公開される前に、アメリカのテキサスで上映する機会に恵まれました。

　このときの反応というのが予想以上にいいリアクションで。そこで『海外にもわかってくれるファンがいるんだ。こういう映画が好きな人がいるんだ』と少しだけ自信を得たんです。

　それから日本で公開されるとヒットとなって快進撃が始まったというか。

　世界各国で上映されて、僕と共同監督のユッカ・ヴィドゥグレンはいろいろなところに呼ばれるようになりました。

　僕ら２人では対応しきれないぐらいになって、バンドメンバーが舞台挨拶にいったりといった事態になったんです。

　まさかこんなエキサイティングでスリリングなことになるとは思っていなかったから、ほんとうに驚きでした。

　そして、５年たった今も日本のファンとSNSでメッセージをし合ってつながっています。同じように世界のファンともつながっています。

　このように世界中の人々とつながれたことがとてもうれしいです。

　そして、この映画をいち早く支持してくれた日本のファンには感謝しています」

公開した時点では続編のことはまったく考えていませんでした

　では、本作についての話に入るが、当初から続編を考えていたのだろうか？

　前作の終わりを見ると、視野に入っていたように思うところもあるが？

「正直なことを言うと、公開した時点では続編のことはまったく考えていませんでした。

　ここだけの話、共同監督のユッカとは仕事仲間で、次に向けて二人で動き始めていて、彼とアメリカ向けの脚本をすでに書き始めていました。

　でも、先ほど話したように2019年に快進撃が始まって、わりと早い段階でプロデューサーから『続編をやらないか？』と話が来たんです。

　それはユッカも僕も望むところで、アメリカ向けの脚本は放置して（笑）、早速、『ヘヴィ・トリップ』の続編の脚本に取り掛かることにしました。

　『鉄は熱いうちに打て！』とも言いますからね（笑）。

　だからプロジェクト自体は早く動き始めたのだけれど、まあ、世界中の人々が体験したようにそのあと、コロナ禍に入ってしまった。

　それで完成するのにちょっと時間を要してしまいました」

（※第二回に続く）

「ヘヴィ・トリップⅡ／俺たち北欧メタル危機一発！」

監督・脚本：ユッカ・ヴィドゥグレン、ユーソ・ラーティオ

出演：ヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、

チケ・オハンウェ、アナトーレ・タウプマン、ヘレン・ビースベッツ、

ダーヴィト・ブレディン、JUSSI69、SU-METAL (BABYMETAL)、

MOAMETAL (BABYMETAL)、MOMOMETAL (BABYMETAL) ほか

公式サイト　https://heavytrip-film.w-lab.jp/

シネマート新宿ほかにて全国順次公開中

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