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子どものゲーム時間制限が不登校対策?まずは子どもたちが安心して学べる機会を。

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

香川県県議会では子どもがインターネットやゲーム依存になるのを防ぐために、全国初となる「ネット・ゲーム依存症対策条例」(仮称)の制定に向けて条例検討委員会で審議しているそうです。しかし、「平日のスマホやゲームの利用は1日60分まで」などとする条例素案については批判や懸念の声が溢れています。

さらに香川県に続き、大阪市も子どものオンラインゲームやインターネット使用の規制に動き出しました。1月15日に大阪市の松井一郎市長はスマホの使用時間ルール化について対策を検討していると記者の質問に答えました。

松井市長は同日市役所で開かれた会議で、不登校の要因の一つがスマホやゲーム依存であるとの実態が紹介されたことを受けて、まずは事実確認やエビデンスの検証作業をしたうえで、不登校に繋がる原因の一つになるかどうか根拠を持ってルール作りをしていきたいとのことです。どうやらこれから確認や検証を進めていくようです。

大阪市内では旭区が平成26年に、スマホやゲーム機を午後9時以降は使用しないなどのルールを決定して、校長の判断により各校で適用されていますが、市教委として統一したルールは定めていませんでした。スマホの普及に伴って増えたインターネット上のトラブルや依存症は各方面で問題視されていますが、行政が利用時間に口を挟んだ前例はなく、議論は続きそうです。

増え続ける不登校児、まずは子どもたちが安心して学べる機会を

2014年度に文部科学省が発表した学校基本調査(速報値)によると病気や経済的な理由以外で年間30日以上欠席した「不登校」の小中学生は、12万2655人に上ることが分かりました。

私は中学生のときにクラスメイトから「ホモ」「オカマ」「女っぽい」「気持ち悪い」……などと言われていました。性的な部分を攻撃されるので、大人に相談することにはためらいがありました。しばらく不登校になりましたが、親や教師に急かされるまま、二週間後に無理やり学校に戻りました。教師は「男らしくない君にも問題がある」と言い、親から「もう大丈夫だから」と聞いていた教室は、相変わらずの地獄でした。

中学を出て高校に進学した頃には、いじめの影響による心身症で引きこもりへ。そのまま高校中退をして、大学入学資格検定を取得後は大学の通信教育部を卒業して企業に就職しました。私は学校に通うことはできませんでしたが、自宅での学習は全く苦ではありませんでしたし、社会人になってからは何の問題もなく働き続けています。私個人としては学校の環境が悪かっただけではないのかと考えています。

大阪市の会議では不登校の要因の一つがスマホやゲーム依存という議論があったようですが不登校はスマホや、ゲームが原因ではありません。なぜなら、いじめ等が原因で学校に行けないから不登校になり、そしてずっと引きこもっているため結果的にスマホやゲーム依存というよりも、それしか孤独を埋めるものがないのです。そもそも昔はオンラインゲームやインターネットなど無かったのに不登校児はずっと増え続けていました。そこで、いくら子どものオンラインゲームやインターネット使用の規制について議論をしても不登校児は減りませんし、救われません。

また、いじめその他様々な事情で不登校となっている子どもにとって、インターネットを使用して自宅などで学べる場所を増やしていくほうが無理に学校へ戻すよりも、その子にあった選択肢を与えることになります。つまり私たち大人が今すべきことは子どもたちが安心して学べる機会をどのように提供していくのかといった議論をしていくことなのです。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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