西城秀樹① タイムスリップ感覚が泣ける「ちびまる子ちゃん」の「走れ正直者」
5月16日は西城秀樹さんの命日だ。2018年からもう5年たつが、彼の存在は、多くの人の心の中でいまだブリリアントに輝いている。そして、新たなファンを増やし続けている。これって本当にすごいことだ。「時間」という残酷な魔物も、ヒデキの魅力の前にはお手上げである。
ということで、今日から数回にわたり、西城秀樹さんの曲と魅力について語っていこう。第一回めは、66枚目のシングル「走り正直者」(作詞:さくらももこ/作曲:織田哲郎)。リーンリン、ラーンラン!
タイムスリップを感じる「ちびまる子ちゃん」ワールドに寄せた70年代歌唱
「走り正直者」は、ご存じの通り、アニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディング曲だ。大好評だった第1弾「おどるポンポコリン」(B.B.クィーンズ)からのバトンを受け、2代目を受け継いだのは1991年4月7日。ポンポコリンに負けず劣らない勢いで大ヒットし、日本中のチビッ子を合唱させたのである!
が、私は初めてこの曲を聴いたとき、そりゃもうビックリしたものだ。あまりにも、あまりにも、チビッ子の時に聴いていたエキサイティング歌唱そのまま! 言い方を変えれば「ヒデキ過ぎる」のだ。
そっくりモノマネさん歌唱疑惑が浮かんだが、間違いなくご本人が歌っていた。当時ヒデキ36才。「ちびまる子ちゃん」を見ている人たちがタイムスリップできるように、その世界観に合わせ、自ら70年代のヒデキの印象に寄せているのが素晴らしい!
「交差点で百円拾ォった~ハ~よHOぅ~♪」
「交番届け~よ~HO~ォう~♪」
くっ……! 文字にするのがとてつもなく難しいが、分かっていただけるだろうか。彼の本気の「よ~」の伸ばしの後に来る、かすれる「HO(ホ)」を。ここからあふれ出るパッションを!
チビッ子にも届く全身全霊の愛情表現
サビの「リンリン、ランランソーセージ」は、70年代人気だった双子のアイドル「リンリンランラン」のジョーク。「双生児」とソーセージを掛けたというわけである。
これをまたヒデキが素晴らしい肺活量で歌うので、ジョークが壮大な人間賛歌に聴こえてくる。
「なんてことは!」
のガナリなど、もはやカッコよすぎて「NOW GET A CHANCE!」にも聴こえるではないか!
数年前、フィルムコンサートでこの曲を聴いたとき、泣けて泣けて仕方がなかったのを覚えている。悲しいのではない。感動して、である。
そこには芯から「正直者」なロックンローラーの姿があった。私だけに(あくまでも個人的な印象です)太陽のような笑顔を向け、片手を「さあおいで! 受け止めてあげるよ!」と言わんばかりに広げ、首をセクシーにかしげ、髪をたなびかせ、ハイハイ、ハム! ソーセージ! と情熱をたぎらせ歌い、陶酔の表情を浮かべる――。
ああ、西城秀樹は、だから愛されるのだ。私は、サイリウムを飛ばしそうになる勢いで振りながら確信した。
毎年命日に近い放送日に流れる「ちびまる子ちゃん」エンディング
70年代の彼のヒット曲は、今改めて聞けばかなりセクシーダイナマイトな内容で、大人にしかわからない、ものっすごい面倒くさい恋の駆け引きを絶叫している歌も多い。
しかしそれでも! 全体の意味はわからずとも「すごく好き」という表現を体全体でしていることはチビッ子の私にも理解できた。そして「自分もヒデキに本気で愛されている気がする」と感じ、恋をした。
それを思い出させてくれた「走れ正直者」は、本当に、本当に名曲だと思うのだ。
アニメ「ちびまる子ちゃん」では毎年、西城秀樹の命日の近くの放送日、エンディングがこの曲になる。今年も5月14日、リーンリン、ランランと彼の歌声が流れた。
それと同時に、Twitterも、たくさんの「ああ、ヒデキだ!」というつぶやきが流れていった。
全力の正直者ヒデキの、笑顔と情熱のパフォーマンス。
それは永遠だってこと、時代は変わっても、誰だって知っているさ。