「年寄り金持ち、若者貧乏」!? 貯蓄・負債の世代間格差を見てみよう
60代以上は定期預金だけで1000万超…世代別貯蓄動向
高齢化社会や年金問題、若年層の雇用問題など、世代間格差の議論が高まりを見せている。現実問題として歳の差でどれほどの違いが生じて来るのか、総務省の「家計調査」のうち「貯蓄・負債編」の結果から、貯蓄・負債面の視点で確認していく。
「貯蓄・負債編」では二人以上世帯についてのみ調査が行われている。単身世帯は考慮外となっているので注意が必要。この二人以上世帯において、世帯主の世代別に貯蓄構成を算出したのが次のグラフ。なお今件における「貯蓄」とは貯蓄した額面のみであり、負債(住宅ローンなど)は考慮・相殺していない。
定年退職を迎える60代までは、世帯主が歳を取るに連れて貯蓄額が増加する。そして定年後は貯蓄の切り崩しが行われるため、額は減少する。また貯蓄額の増加と共に、通貨性預貯金(出し入れが容易な預貯金のこと。いわゆる普通預貯金)比率が減り、定期性預貯金の比率が増加していく。収入が増えて余力が増えるため、その余力を普段出し入れしない、そして利回りの良い定期に回すという図式である。同時に有価証券の比率も上乗せされるが、定期性預貯金と比べればわずかな増加に過ぎない。
なお2013年は60代と70歳以上で貯蓄総額は同額の結果が出ている。これは株価の上昇によるところが大きい。歳を経ると貯蓄を切り崩して生活するようになるが、その際生命保険の満期による払い戻しや流動性の高い通貨性預貯金から切り崩され、有価証券などは後回しになる。そして昨今の株価上昇で有価証券の評価額が上昇し、総額を底上げした次第。
住宅ローンがメインの「負債」
次に示すのは世帯主の世代別「負債」の構成内容。あくまでも平均値としての話だが、住宅ローンが中堅層において大きな負担である実態が確認できる。
負債の多くは住宅取得のための借財、しかも30代から40代に住宅ローンを組んでいる人が多数に登っている。そして60代までにはほぼ完済し、負債そのものも大きく減る。見方を変えればローンを完済済み、住宅購入の予定が無い人、相続などで住宅を取得済みの人は、住宅ローンの負担が無いため、負債額全体も小さな額面で済む。
なお世代毎の純貯蓄額、つまり「貯蓄現在高」マイナス「負債現在高」の値は次の通り。詳しくは「年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる」で解説しているが、住宅ローンの重みが30代までをして、「純貯蓄額がマイナス」状態に追いやっている。
もっとも住宅ローンの類はそのまま居住住宅の資産の立て替えを返済しているだけの話であり、住宅ローン=悪い負債と見る考えは必ずしも正しいとはいえないことに留意する必要がある。
世帯主の世代区分別に、人数と貯蓄額の比率を確認
最後に「世帯主の世代別」構成世帯数比と、貯蓄額の比率。一世帯別の貯蓄額は上にある通りで、しかも「二人以上世帯」に限定されてはいるが(単身世帯は含まれない)、貯蓄の「世代毎の全体における」片寄り具合が分かる図となっている。
負債が大きいと貯蓄の運用自由度は下がる。収入の一部を借金の返済に充てねばならないので、可処分所得が減るからだ。若年層は直上の通り、住宅ローンを抱えている事例が多く、負債も大きい。実質的な「余力としての貯蓄」はもう少し青系統色(=高齢層)の面積が大きなものとなる。
高齢世帯数そのものが増加している、経年による蓄財の効果が表れているのも要因だが、富の「世代区分における各世代間における」(個々世帯ではないことに注意)偏在があらためて分かる結果ではある。
■関連記事: