【ラグビーW杯】日本代表の大和魂に学ぶ国際競争力の磨き方 リスクを避けず、批判的思考・多様性を養え
実力重視の多国籍軍に生まれ変わった日本代表
[ロンドン発]ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本代表はロシア、優勝候補の一角アイルランド、サモアを相手に3連勝し、決勝トーナメント進出をかけて13日に因縁のスコットランドと対戦します。
前回のイングランド大会で日本代表は優勝候補の一角、南アフリカを奇跡の逆転劇で破って3勝を挙げたもののスコットランドに敗れ、決勝トーナメント進出はかないませんでした。
それまで日本代表はW杯で1勝しか挙げることができず、1995年の南ア大会ではオールブラックス(ニュージーランド代表)に17-145の記録的な大敗(ブルームフォンテーンの悪夢)を喫しました。
現在、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)はその大会で準優勝したオールブラックスのメンバーでした。日本代表が急に強くなったのは実力重視の多国籍軍になったからです。
競技に関する規定8条「国の代表チームでプレーする資格」は次のように定めています。(1)~(4)のいずれかに該当。
(1)当該国で出生
(2)両親、祖父母の1人が当該国で出生
(3)プレーする時点の直前の3年継続して当該国に居住(2020年12月末から5年に延長)
(4)当該国に通算10年居住
(5)一国のシニアでプレーしたプレーヤーは他の国の代表チームでプレーできない
138人が生まれた国ではない国のジャージでプレー
今回のW杯には138人ものプレーヤーが生まれた国ではない国のジャージを着て参加しているそうです。オーストラリアのFOXスポーツによると、日本代表31人のうち15人が3年居住規定に該当し、外国生まれは16人にのぼるそうです。
外国生まれの代表選手の数はスコットランド14人、オーストラリア12人、ウェールズ8人、イタリア8人、イングランド6人、フランス6人、アイルランド5人、ニュージーランド4人、南ア1人、アルゼンチン0人の順です。
元ウェールズ代表主将ポール・ソーバーン氏は「W杯はサーカスになった。恥じるべきだ」とラグビーのグローバル化に対して厳しく批判しています。グローバル時代の国際競争に勝ち抜くためにラグビーの日本代表はしかし、正しい道を選んだと思います。
世界がナショナリズムに回帰する中で、桜のジャージを着た31人はそれぞれ生まれた国は違っても日本を代表して戦い、大和魂を見事に体現してくれています。グローバル展開する企業や、グローバル化が遅れる日本の大学はラグビー日本代表の進化を見習うべきでしょう。
大切なのは今生きている国で団結し、個人としてもチーム(企業や大学)としても成長し、ラグビー(経済や研究開発)を発展させることです。
日本の世界競争力は5位から6位に後退
8日、「ダボス会議」を開くスイスのシンクタンク「世界経済フォーラム(WEF)」が世界競争力報告2019年版を発表しました。日本の総合順位は前年の5位から6位に後退しました。
シンガポールが初めて1位となり、昨年首位だった米国は2位に後退。香港政府とその背後に控える中国に対する激しい抗議活動が続く香港は順位を4つ上げて3位に入りました。
141カ国・地域を対象にビジネス環境や人的資本、市場、イノベーション(技術革新)の生態系など12分野を100点満点で評価する仕組みです。日本をはじめアジアの上位国に対する評価は次の通りです。
【日本6位】
総合スコアはマイナス0.2ポイントとわずかに低下。アジアではシンガポール、香港に次いで3番目。インフラは93.2ポイントで5位、マクロ経済の安定性は94.9ポイントで42位。健康は100ポイントで1位。
世界で最もテクノロジーに通じた国の1つ(86.2ポイント、6位)、金融セクターは大きく、安定している(85.9ポイント、12位)。国内市場と輸出市場を組み合わせた大きな市場(86.9ポイント、4位)の恩恵を受けている。
しかしスキルは(73.3ポイント、28位)。労働力の平均就学年数は世界で最も高いクラス(12.8年、14位)に入るのに、批判的思考を育てる教育は87位と低く、不適切な教育方法に縛られ、世界とのスキル格差を広げている(56.7ポイント、54位)。
労働市場(71.5ポイント、16位)は、さまざまな硬直性(雇用と解雇の柔軟性は104位)や女性の参加率の低さ(男性労働者100人に対して女性労働者は76人にとどまる。62位)によって損なわれている。
リスク回避(52.7ポイント、58位)、厳格な企業文化(65.7ポイント、27位)、労働力の多様性の低さ(50.7ポイント、106位)がビジネスのダイナミズム(75ポイント、17位)とイノベーション能力(78.3ポイント、7位)を損なっている。
イノベーション能力で日本はドイツ(86.8ポイント)より10ポイント近く低い。
【シンガポール1位】
総合スコアが1.3ポイント改善。米国のパフォーマンスが低下したことで首位に立つ。
シンガポールは12分野のうち10分野で大きく改善。全12分野のスコアは経済協力開発機構(OECD)平均を4〜19ポイント上回る。
インフラは95.4ポイントで1位。道路の質は高く、鉄道の整備、海や空のサービスの効率性でも1位。
健康(100ポイント)、労働市場(81.2ポイント)は1位。金融システム(2ポイント改善して91.3ポイント)で2位。マクロ経済の安定性についてほぼ完璧なスコア(7.1ポイント改善して99.7ポイント、38位)を達成。
製品市場の効率性の高さ(81.2ポイント、香港に次いで2位)はシンガポールが世界で最も開かれた経済だという事実を示している。
公共機関の質でフィンランドに次ぐ2位(80.4ポイント)だが、抑制と均衡(65.9ポイント、23位)が制限されているため損なわれている。
報道の自由指数は124位。持続可能性へのコミットメントも63.5ポイント(66位)と低い。グローバルなイノベーションハブになるために、起業家精神を促進し、スキル(78.8ポイント、19位)をさらに向上させる必要がある。
【香港3位】
総合得点が0.8ポイント改善。8分野でトップ10入りし、全12分野でOECDのベンチマークを上回った。
マクロ経済の安定性(100ポイント)、健康(100ポイント)、金融システム(91.4ポイント)、製品市場(81.6ポイント)の4分野で1位。
インフラ(94ポイント)と情報通信技術(ICT)の導入(89.4ポイント)で3位。最大の弱点はイノベーション能力が限られていることだ。63.4ポイント(26位)とシンガポール(13位)に12ポイントも引き離されている。
もう1つの弱点は労働市場(75.8ポイント、7位)だ。労働者の権利が十分に保護されていない(10ポイント、116位)。シンガポールは89ポイント、18位。
【韓国13位】
総合スコアを0.8ポイント改善し、2つランクを上げる。東アジア・太平洋地域でシンガポール、香港、日本、台湾に次いで5位。5分野でトップ10入りしており、ICT導入では92.8ポイントで世界をリードする。
人口1人当りの光ファイバー接続率が最も高く(100人当りの契約数は31.9件)。人口の96%が定期的にインターネットを使用している。
マクロ経済の安定性で世界最高を記録。世界のイノベーションハブの1つ(79.1ポイント、6位)。イノベーションの生態系(52.1ポイント、55位)は起業家精神を奨励すれば強化できる。
しかし変化をためらったり(49.6ポイント、42位)、リスクを回避したりする(47ポイント、88位)文化と社会学的な要素が起業家精神を阻む。
家父長制の企業文化(53ポイント、85位)、多様性の欠如(54.5ポイント、86位)がその背景にある。
最大の弱点は国内競争の欠如(53.5、66番目)と高い貿易障壁(58.6、76番目)による市場の非効率性(56.1、59番目)だ。
もう1つの弱点は労働市場(62.9ポイント、51位)。正規雇用と十分な福利厚生を享受できる「インサイダー」と不安定な「アウトサイダー」による硬直化した2層システムに特徴付けられる。
女性の参加率も非常に低い(男性100人に対して78人、59位)。労使関係(43.2ポイント、130位)は対立し、労働者の権利保護(93位)も比較的乏しい。
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ラグビーW杯日本大会をきっかけに日本が生まれ変わることを大いに期待しています。
(おわり)