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日本の長期金利は1.135%に上昇、急に日銀の年内利上げを意識したかのような動きに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 大発会の6日の債券市場では、私にとって予想外の動きとなった。ちなみに大発会とは証券取引所における年初の最初の取引日のことであり、主に株式市場で使われる表現ではある。しかし、債券先物は大阪取引所に上場されていることもあり、特に証券会社などでは債券市場関係者も「大発会」という表現を使っているかと思う。

 それで何があったのかといえば、円債が思ったよりも売られているのである。ちなみにこの日の朝に出した私の予想レンジは下記であった。

 債券先物中心限月 141円80銭~142円30銭 10年国債利回り 1.050%~1.100%  ところが債券先物は141円81銭で寄り付き後、一時141円57銭まで下落したのである。そして、10年国債の利回りはこの日、1.125%まで上昇した。これは私にとっては想定外であり、これは年初からやってしまったと思った。

 10年債利回りは27日の引け後に1.110%に上昇しており、2011年7月以来、13年5か月ぶりの水準となったが、その1.110%をあっさり抜いてきたのである。

 明日7日に10年国債の入札があるため、そのヘッジとの見方もできるかもしれないが、5年国債なども同様に売られていた。5年国債の利回りは一時0.780%と2009年6月以来およそ15年半ぶりの水準に上昇したのである(国債の価格が下落すると利回りが上昇する)。これは債券先物の下落に引きずられた面もあろうが、中期ゾーンの利回り上昇も気になるところとなった。

 円債の下落要因としては、7日の10年国債入札動向以外に、来年度のカレンダーベースの国債発行計画で5年国債が今年度と比べ1.2兆円増発されることなども嫌気かとの見方もあった。また、日銀の国債買入も5年超10年ゾーンが減額され、需給面が意識された可能性はある。ただし、これは昨年末には明らかとなっていた。何を今更感がないともいえない。

 また6日の東京時間の米10年債利回りが4.62%と3日の4.60%から上昇していたことも要因のひとつであったかもしれない。

 ただし、それよりもやはり日銀の金融政策に目が向けられているのではないかと私は思った。

 27日に10年国債が1.110%を付けたこともやや不可解な面があった。これは12月の金融政策決定会合の主な意見などから1月も利上げはスキップされる可能性があったためである。

 6日に日銀の植田総裁は講演で、『20日に米大統領に就任するトランプ氏の経済政策については「不確実性は大きい状況だ」と話し、慎重に見極めていく姿勢を見せた』。1月の決定会合は23、24日であり、米国政治の不確実性を考えれば、常識的には1月の会合での利上げは見送られるとみざるを得ない。だから市場で落ち着いていた12月に利上げすべきと私は考えていたのだが。

 それでもここにきての債券市場の動きをみると、米長期金利は今後さらに上昇してくる可能性とともに、日銀が1月23、24日の決定会合での利上げの可能性を捨てきれずにいるとみていたほうが良いのかもしれない。もしくは債券市場が1月になくとも年内2回程度の利上げを織り込んできつつあるとみるべきなのか。

 7日の10年国債の利回りは1.135%に上昇した。債券先物の動きも不安定である。10年国債入札への懸念もあるとはいえ、いったい市場は何を気に掛けているのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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