WBCルールだと日本代表はどうなる?&ワールドカップへの道のりは?【ラグビー雑記帳】
野球の世界一を決めるワールドベースボールクラシック(WBC)は3月8日に開幕し、9日には日本代表の初戦がある。
栗山英樹監督率いる通称「侍ジャパン」では今回、大谷翔平ら4名の現役メジャーリーガーが参加する。日系人メジャーリーガーのラーズ・ヌードバーが選出されたのも話題となったことで、大会の出場資格が話題となった。
WBCの代表資格は以下のいずれかを満たせば得られる。ヌードバーは下記「4」 を満たし、メンバー入りが叶った格好だ。
1,当該国の国籍を持っている
2,当該国の永住資格を持っている
3,当該国で出生している
4,親のどちらかが当該国の国籍を持っている
5,親のどちらかが当該国で出生している
6,当該国の国籍またはパスポートの取得資格がある
7,過去のWBCで当該国の最終ロースターに登録されたことがある
国際大会などの代表資格は競技により異なる。なかでも特殊なのは、ラグビーの代表資格だろう。
下記のいずれかの条件を満たせば当該国協会の代表となれるため、国籍の有無やルーツは問われにくい。
1,当該国で生まれた
2,当該国で親のどちらかまたは祖父母が生まれた
3,当該国の代表としてプレーする直前に、当該国に連続して 60 か月、滞在している(その間は一時的な国外滞在日数も定められている)
4, 当該国の代表としてプレーする前に 、当該国で10 年間の累積居住を完了している
※国際統括団体ワールドラグビーの「協議に関する規定 第8条」を一部編集
そのため複数の強豪国が、多国籍軍の様相を呈する。
もしもWBCのルールでラグビー日本代表を形成するなら、実際のナショナルチームとはかなり異なる顔ぶれとなる。
現在開催中の国内リーグワンで見られるパフォーマンス、想定される代表首脳の構想を総合すると、先発15名、リザーブ8名はこのようになりそう。
1,稲垣啓太
2,坂手淳史
3,具智元
4,大戸裕矢
5,ヘルウヴェ
6,リーチ マイケル
7,下川甲嗣
8,姫野和樹
9,齋藤直人
10,松田力也
11,高橋汰地
12,中村亮土
13,中野将伍
14,松島幸太朗
15,山中亮平
16,堀江翔太
17,海士広太
18,ヴァルアサエリ愛
19,秋山大地
20,徳永祥尭
21,流大
22,田村優
23,野口竜司
実際の日本代表ではニュージーランド出身のワーナー・ディアンズ、南アフリカ出身のピーター・ラブスカフニらが並びうるとあり、ルールひとつで顔ぶれが異なることがおわかりいただけるだろう。
参照 2022年11月20日 対フランス代表戦メンバー
1,稲垣啓太
2,坂手淳史
3,具智元
4,ワーナー・ディアンズ
5,ジャック・コーネルセン
6,リーチマイケル
7,ピーター・ラブスカフニ
8,姫野和樹
9,齋藤直人
10,李承信
11,シオサイア・フィフィタ
12,中村亮土
13,中野将伍
14,ディラン・ライリー
15,山中亮平
16,堀越康介
17,クレイグ・ミラー
18,竹内柊平
19,ヴィンピー・ファンデルヴァルト
20,テビタ・タタフ
21,流大
22,中尾隼太
23,松島幸太朗
日本国内では、日本代表が過去2大会で3勝、初の8強入りと結果を残したことで、「日本代表にはなぜ外国人が多いのだ」という批判的論調は影をひそめるようになった。
2022年1月1日以降は、「最初の代表チームで最後に試合出場してから36か月間以上経過していること」「選手が代表資格変更を希望する国で生まれている、または親や祖父母のうち誰かがその国で生まれていること」を満たせば1度のみ代表する国・地域を変えられるようになっている。
これからは、かつて強豪国代表となった選手が別な国・地域のナショナルチームを支える立場となるかもしれない。
ラグビー代表のいま
今年はスポーツイヤーと言われる。複数の競技で国際大会が開かれるためで、ラグビーでも4年に1度のワールドカップが9月にフランスでおこなわれる。
2大会連続での決勝トーナメント進出、もしくはそれ以上を目指す日本代表は、2月上旬に一部選手を集めたミーティング合宿を開始。12月中旬からの国内リーグワンが実施中のいまは、スタッフが主要選手の本拠地へ回って試合のレビューや目標の共有をおこなう。
3月6日、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが都内で会見した。
「いままでチームにいた選手が重要な役割を担う。それがワールドカップ成功の土台になる。この間の試合でもリーチ マイケル、ワイルドナイツのフロントローは素晴らしいプレーをしている。経験は必要。ただどの選手にもチャンスがある。6月のメンバーアナウンスまで選手をしっかり見たい。キャンプの目的はリコネクト。一貫性を持ったメッセージを伝えたいです。実はきょう(6日)も熊谷に行っていて、明日も府中(7日/サントリーサンゴリアスなどが活動)に行きます。
選手はいま、クラブチームに所属している。私たちのフィードバックはそれに影響を与えない程度にしなければいけない。選手はクリアな状態で、いま戦う相手に臨んでもらいたい」
リーグ戦終了後はそれぞれに3週間から1カ月程度の休みを与え、6月から計3つの国内キャンプ(関東地区、九州地区)を実施する。
「最初に理解していただきたいのは選手たちのパフォーマンスは前回のリーグワン以来、8か月くらいプレーしていることになります。夏にウルグアイ代表やフランス代表と戦い、少し休んで、また秋の活動…。
いまのリーグワンが終わってからはメンタルブレイクとして、選手たちにある程度の休憩を与えます。その間、個人練習は積んでいただき、6月半ばくらいに選手を再招集します。
長いシーズンを終え、休息することで、その後の3つのキャンプをおこないます。そこで順調に状態を上げていけると考えています。
合宿はジャンボジェットにたとえます。選手がベストを出すため、徐々に機体を上昇させる考えです。
これまでのテストマッチ(代表戦)で選手を試しています。リーグワンにいい選手がいるのも知っています。リーグワンとインターナショナルの違いもあるので、今年、選手を見ていきながら、ステップを踏んで選手を選考したい」
会見内容や周辺の証言を総合すると、国際舞台に耐えうるフィジカリティ、心身のタフさが担保される経験者が重用されそう。国内リーグワンでの台頭をきっかけに代表入りできるメンバーはいかほどになるかは、未知数と言える。
昨年挑んだ試合の内容を踏まえ、ジョセフは続ける。
「日本代表としてティア1(強豪国)と戦う。相手はスクラムなどのセットピースをターゲットにしてくる。特にイングランド代表には昨年、そこをターゲットにされ、反則を取られた。パンチすべきところでパンチされた形となり、チームとして自信を失った(13―52と敗戦)。
ただ、セットピースでも、自分たちのやることができるようになれば、オールブラックス戦のように相手に圧力をかけられるようになる(31―38と接近)。ひとつ目は、フォワードのセットピース。
また相手はたくさんキックをしてくる。日本代表のアウトサイドバックスでは身体の大きくない選手が多いので、空中戦をターゲットにする。(フランス大会で対戦する)イングランド代表も、アルゼンチン代表もそうです。
またディフェンスも大事。日本代表はフィットネスが高く、スキルを持っているが、(競技の構造上)タックルをしなければいけない時間もある。ディフェンスの強化は重要です」
7月からは計6つの事前試合(含代表戦)をおこない、メンバーの絞り込みと戦力強化に努める。
前述通り、既存の主力組にかかる期待は大きくなりそうななか、6連戦のうちの初戦にあたる7月8日の対オールブラックス・フィフティーン(東京・秩父宮ラグビー場)は、「JAPAN XV」名義で実施する。
関係者によると、この日の直前まで調整と無縁の猛練習で鍛え、新戦力を含めたメンバーのタフさを見極める見込みだ。ジョセフも続ける。
「ワールドカップでベストな結果を出さなければいけない。そのために少しずつチームを作り上げる。その試合(初戦)を通して、選手にトライさせるのが重要。練習もハードにすることで、(タフな状況で臨む試合に)どう対応するかも見られると思っています」
前回の日本大会までの4年間は、日本のサンウルブズがスーパーラグビーに参戦していたため国際舞台に必要なフィジカリティを醸成できた。その事業から撤退して久しいいまは、当時と異なる方法でタフさを身に付けなくてはならない。
「選手層を含め、ワールドカップでピークを迎えられるようにしたい」
準備はすでに始まっている。