マダニから感染するライム病ってどんな病気?
「ライム病」はマダニが媒介する感染症です。
日本でも北海道などの一部の地域で流行しています。
ライム病とはどんな病気なのでしょうか?
ライム病はマダニから感染する
ライム病はボレリアという細菌による感染症であり、シュルツェマダニなどのマダニから感染します。
皆さんはマダニをご覧になったことはありますでしょうか。
これがライム病を媒介するシュルツェマダニです。
これは成虫なのでまだ大きい方ですが、若虫や幼虫となると小さくて肉眼で確認するのがやっとくらいの大きさです。
硬貨と比べるとこれくらいの大きさです。
マダニは動物の血を吸って成長するので、動物が生息している場所に潜んでいます。
具体的には野生のイノシシやシカなどがいる森の中などです。
野生動物が通った後の「けもの道」などにマダニは生息しています。
こういうところにマダニは潜んでいます。
動物のいるところ、マダニありです。
このような場所を歩くときはマダニに要注意です。
マダニは動物の血を吸うことで成長し、卵から幼虫→若虫→成虫となり雌の成虫が卵を産んで・・・というサイクルを繰り返します。
ときどきヒトも血を吸われ、このときにマダニの体内にいる病原体がヒトに入ってくるため、ヒトが感染症を発症します。
マダニの活動は暖かい時期、春先から秋くらいまでが多いので、この時期にマダニによる感染症を発症する方が多い傾向にあります。
日本でも一部の地域でライム病は流行している
アメリカでは年間3万人を超えるライム病患者が毎年報告されており社会問題になっています。
しかし、実は日本国内でもライム病に罹ることがあります。特にライム病の報告が多いのは北海道で年間10例弱の患者さんが報告されています。
保健所に届け出がされていない事例も含めるともっと多くの患者さんがライム病に罹っているのではないかと推測されます。
北海道についで東京で感染者が多いですが、これは東京都以外の地域(海外など)で感染した方々であり、基本的に都内でライム病になることはありません。
他にも長野県、新潟県、大分県、福島県、福井県、群馬県などでライム病に罹るリスクがあるとされています。
なぜこのような分布になるかというと、シュルツェマダニは寒い地域に分布しており、北海道では全域に分布していますが、本州では標高の高いところにのみ分布しています。
ですので北海道にお住まいの方はもちろんのこと、本州でも標高の高い地域に暮らしている方、あるいは登山をされる方もライム病に要注意です。
私はこれまでに4例のライム病の患者さんを診断したことがありますが、いずれもライム病の流行地域でマダニに刺されたと考えられた海外渡航後の受診者でした。
北米やヨーロッパなどへの海外旅行の際にもライム病にはご注意ください。
ライム病の症状は?
ライム病は初期には遊走性紅斑という移動する皮疹が特徴的です。
最初はマダニに刺された部分に皮疹が出現し、これが全身に移動します。
この時期に治療が行われればこれ以上進行することはありませんが、治療をせずにいると心臓、神経、関節、眼などに症状が現れ、さらに進行すると慢性関節炎、末端皮膚炎などが出現します。
ライム病が疑われる症状が出現したら、早めに病院を受診して抗菌薬の治療を受けることが大事です。病期にもよりますが、通常2週〜4週間の抗菌薬治療を行います。
さらに、ライム病の治療後6ヶ月以内にだるさ、集中力低下、全身の関節痛や筋肉痛を訴える患者が約10%にみられます。これはライム病後症候群(Post-Treatment Lyme Disease Syndrome)と呼ばれ、これらの症状は半年以上続くこともあります。
ライム病に罹らないためには
マダニによる感染症を防ぐ最も大事なことは、当たり前ですがマダニに刺されないことです。
マダニによる感染症として国内では他にもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)、日本紅斑熱、Borrelia miyamotoi感染症、ヒト顆粒球アナプラズマ症、ダニ媒介性脳炎、バベシア症などの報告があります。またダニの仲間であるツツガムシによるツツガムシ病は北海道を除く日本全国で報告があります。
これから秋を迎え、登山を楽しむ方もいらっしゃると思いますが、ハイキング、農作業など、山や草むらで活動する際にはマダニに刺されない服装をすることが重要です。
また露出した部分には虫よけ剤を使用しましょう。DEETまたはイカリジンという成分を含む虫よけ剤がマダニに有効です。
野外活動後にはマダニに刺されていないかお風呂に入ったときなどに体の隅々まで確認しましょう。
参考: