インフォデミックと新型コロナ:感染症のデマや誤情報、陰謀論に惑わされないためにはどうすればよい?
COVID-19が出現して以降、様々なデマや誤情報がSNS上では拡散されました。
こうしたデマや誤情報はなぜ生まれるのでしょうか?
また、デマや誤情報に惑わされないためには何が必要でしょうか?
新型コロナに関するデマや誤情報、陰謀論はなぜ生まれるのか?
新型コロナの流行が始まったばかりの2020年2月にWHOは「我々は感染症とだけでなく、インフォデミックとも戦っている」と宣言しました。
このインフォデミックの規模を示す一つの例として、2020年4月にはTwitterでは45ミリ秒(ミリ秒は1000分の1秒)ごとにCOVID-19に関連するツイートが投稿されたそうです。
新型コロナに関する情報の氾濫は、数々のデマや陰謀論を生みました。
アメリカ人の5人に1人は「新型コロナワクチンは政府が国民をマイクロチップ化するために使用している」という陰謀論を信じている、という驚きの調査もあります。
「お湯を飲めばコロナが予防できる」「ワクチンを打つと不妊になる」など日本国内でも様々なデマが広がりました。
新型コロナのような大規模な災害が発生すると、デマや誤情報が生まれやすくなることが知られています。
これまでも、革命、戦争、金融危機、自然災害などの危機が生じた際には陰謀論が広がってきました。
社会心理学者のJan-Willem van ProoijenとKaren Douglasは「陰謀論は不確実性の中で自分の社会環境を理解しようとする欲求から生まれ、複雑な出来事を単純化した物語に落とし込むことで、一般人にも理解しやすく拡散されるのに最適な理論になる」と述べています。
新型コロナに関連したデマや誤情報、陰謀論が出現する要因としては、以下のものが挙げられます。
1. 不安や恐怖
新しく出現したウイルスに対する不安や恐怖、ストレスなどの感情が高まると、人々は情報を求める欲求が強くなります。デマや誤情報は、特定のニーズに答える形で伝播しやすくなります。
2. 情報不足
特に危機の初期には、政府や専門家が情報を十分に伝えることが困難になることがあります。正確な情報が十分に得られないことから、自分たちで情報を埋めようとする過程でデマや誤情報が生まれることがあります。
3. 確認バイアス
人は、自分の既存の信念を裏付ける情報に対して好意的になりがちです。そのため、デマや誤情報が自分の意見に合致していれば、それを広めやすくなります。
また、SNSはエンゲージメントを高めるために、利用者が関心を持ちそうなコンテンツを表示しやすくなっています。これが、デマや誤情報、陰謀論が拡散される原因となることがあります。
新型コロナに関するデマや誤情報、陰謀論に惑わされないためには?
ではデマや誤情報に惑わされないためには、どういったことに気をつければ良いでしょうか。
情報源を確認する
情報を発信しているソースが信頼性のあるものなのかを確認しましょう。
公的機関や専門家の意見、報道機関など、信頼できる情報源を優先的に参考にするようにしましょう。
情報の根拠となる元データを自身で確認することも重要です。
また、誤情報かどうかを判断するためには、ファクトチェックを行う専門機関やウェブサイトも参考にしましょう。
複数の情報源を比較する
同じトピックに関して、複数の信頼性のある情報源から情報を得ることで、デマや誤情報を見抜くことができます。
逆に特定の情報源だけを見ていると、偏った情報を得ることになりデマや誤情報を受け取るリスクが高くなります。
ちなみに、私忽那もいつ闇落ちして陰謀論を言い始めるか分かりませんので、私の記事だけを見るというのも危険です。
批判的思考を持つ
情報に対して常に疑問を持ち、自分で考える姿勢が大切です。
特に、感情に訴えかける情報や極端な主張に対しては注意が必要です。
情報源に対して鵜呑みにするのではなく、その内容をしっかりと吟味し咀嚼することが重要です。
情報のシェアは慎重に
自分が確認できない情報や信憑性が不確かな情報をSNSで拡散しないように注意しましょう。
個々人が情報発信者としての責任を自覚し、デマや誤情報を拡散しないように注意を払うことが大切です。
パンデミック下におけるデマや誤情報、陰謀論を防ぐためには?
それでは、こうしたデマや誤情報、陰謀論を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか?
政府や専門家による迅速かつ正確な情報発信
デマや誤情報を打ち消すためにも、政府や公的機関が、情報を迅速かつ正確に情報発信することが重要です。
私自身は、今回の日本政府の新型コロナに対策は他の先進国と比較しても成功していると思っていますが、リスクコミュニケーションという点ではもう少し頑張れたのではないかと思います。
次のパンデミックに備え、感染症のリスクコミュニケーションの専門家の育成も重要な課題です。
また、一般の方が理解しやすい形で情報を発信することで、誤解やデマの拡散を防ぐことができます。
厚生労働省や内閣官房、国立感染症研究所など、公的機関のホームページでは新型コロナに関する情報が公開されていますが・・・一言で言うと「刺さらんなあ・・・」という感じです。
感染症専門医の私でも「こんな硬い文章、読む気にならないなあ・・・」と思いますので、おそらく一般の方はなおさらそのように感じるのではないかと思います。
若い人から高齢者まで幅広い世代に情報を届けるためには、様々なチャンネルを利用してリーチしなければなりません。
それぞれの世代に届きやすい媒体で、それぞれの世代にとって分かりやすい形で情報発信をすることで、誤解やデマを減らすことができます。
科学リテラシーの向上
次のパンデミックでもデマや誤情報、陰謀論に振り回されないためには、それぞれの人が、間違った情報を間違っていると正しく判断できるようになる社会を作っていかなければなりません。
そのためには、科学的思考や情報リテラシーの向上を目指す教育・啓発活動を推進することが重要です。
メディアの科学リテラシーの向上も大きな課題です。
今回の新型コロナの流行においては、メディアが科学的根拠が不明な情報もないまぜになって報道する場面もみられました。
今でもよく覚えていますが、某ワイドショーは2020年5月頃の第一波が終わった頃に「日本人はほぼ全員新型コロナの免疫を獲得しているのでもう大丈夫」という理論を真面目に紹介していました。
報道する側も、こうした情報が科学的に正しいのかどうなのかを判断できるリテラシーを持っていただきたいものです。
またSNSやメディア企業には、デマや誤情報の拡散を防ぐために、アルゴリズムやコンテンツの監視・管理を行うことも求められます。
このようにデマや誤情報の拡散を防ぐためには、個人、コミュニティ、専門家、企業、政府などが連携して情報リテラシーやメディアリテラシーの向上、正確な情報発信などの対策を講じることが重要です。
この3年間の反省を活かし、次のパンデミックではインフォデミックに翻弄されない社会を目指していきましょう。