言っても聞かない「モンスター社員未満」を厳しく叱る方法 叱る・注意する・指摘するの違いとは?
■モンスター社員ではなく「モンスター社員未満」とは?
モンスター社員(問題社員)とは、職場内での非協力的な態度や、他の従業員に対する否定的な影響を与える人物を指す。
・業務命令に従わない
・仕事をサボる
・協調性がない
・著しく能力不足なのに努力しない……等
このようなモンスター社員は、職場の士気を低下させ、生産性を損なわせる。それどころか、組織全体の業績に悪影響を及ぼす可能性さえある。
しかし、このように明らかなモンスター社員ではなく、世の中の上司を悩ますのが「モンスター社員未満」の存在だ。「モンスター社員未満」とは、正しく指導しないとモンスター社員に育っていってしまう社員のことだ。
もちろん、ほとんどが若手だ。そこで今回は、「モンスター社員未満」をモンスター社員にさせないために厳しく指導する方法を解説する。世の中の上司たちは、叱る・注意する・指摘するの違いについて、詳しく知ってもらいたい。
■厳しく叱るときは、相手の思考を止める必要があるときだけ
「モンスター社員未満」の人は、褒めたり承認すると、「今のままでいい」「この程度では叱られない」と受け止め態度をエスカレートさせていく。したがって日ごろから上司は厳しく指導する必要がある。
とはいえ、厳しく叱る必要があるときと、その必要がないときがある。
「叱る」ことを奨励する書籍など、今の時代、ほとんど見られなくなった。しかし私は新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』に詳しく書いた。
場合によっては、部下を厳しく叱る必要もあるのだ。それをイフゼンルールで表現した。では、どんなケースか?
それは、重大なリスクを相手が軽んじているときだ。リスクがあるだけなら、言って聞かせればいい。しかし、そのリスクの重大性を理解せず、軽視していると判断したら、厳しく叱ったほうがいい。
いったん相手の思考を止める必要があるからだ。そして叱るとき、上司は感情をコントロールしながら叱るようにしよう。感情に任せて叱ると、上司自身が非難されることになる。
イフゼンルールをまとめよう。
<叱るイフゼンルール>
即刻相手の行動を変える必要がある場合にのみ
●例1:取り返しがつかないことが起こるリスクを軽視している
●例2:あたりまえの基準が下がるリスクを軽視している
■何度も言い聞かせるときは「注意」しよう
何度も言い聞かせて、行動や意識を変えようとするときは、叱ってはいけない。そんなことをすると、「ガミガミ言う」人になってしまう。これは親子の関係でもそうだ。
「叱る」と決断したら、一発で相手の行動を変えるつもりでやろう。
何度も繰り返してもいい場合は、注意する。「注意」だと「叱る」よりはインパクトが弱い。だが、その分お互いが受けるストレスも少なくて済む。
ただし事前にルールや約束事をしっかり伝えておくことを忘れてはならない。そうでないと、
「そんなこと聞いてない」
「そんな話、はじめて知った」
と反論されてしまう。
イフゼンルールをまとめよう。
<注意するイフゼンルール>
何度も言い聞かせ、相手の行動を変える必要がある場合にのみ
●前提条件:事前にルール、約束事が伝えられていること
■「注意する」と「指摘する」の違いとは?
「叱る」ときと「注意する」ときの共通点は、相手がわかってるのにもかかわらず軽んじているときだ。著しく気が抜けていたり、意識が低くなっているときに使う。
しかし、もし、相手が意識するのを忘れているだろうな、もしくはちゃんと伝わっていないだろうと思ったときは「指摘」してみよう。
こういう場合に注意したり、叱ったりすると相手との関係がとても悪くなる。
イフゼンルールをまとめよう。
<指摘するイフゼンルール>
相手が大事なことを忘れている、意識していない場合にのみ
■上司はアウトドアスポーツの指導者と思え!
順番は「(1)指摘する → (2)注意する → (3)叱る」だ。最初から叱ってはならない。
上司はパラグライダーやラフティングといった、危険と隣り合わせのスポーツの指導者だと考えるべきだ。
「言うことを聞かないなら、知らないからな」
「勝手にしろ」
などと言って匙(さじ)を投げてはならない。新刊『若者に辞められると困るので、強く言えません』に詳しく書いた。
途中で諦めたり、例外を認めるような上司なら部下を指導する資格がない。
「モンスター社員未満」への対応は、職場の健全な環境を維持するために不可欠である。問題行動に対しては厳しく対応することで、高いパフォーマンスを発揮する組織文化を根付かせることができる。「モンスター社員未満」をモンスター社員にしてはならない。上司は指導者としての自覚を持とう。