前年比12万人減少、フリーターの現状を探る
かつてバブル時代を象徴する就業形態の一つとしてもてはやされた「フリーター」。今ではあまり聞かなくなったポジションだが、その立場にあるとカウントされる人たちは今でも100万人を超えている。その実態を総務省統計局が2016年2月に公開した労働力調査の公開値から探る。
最新の公開値によると、2015年における若年層(15~34歳)でのフリーター、今調査においては「パート・アルバイト及びその希望者」(厳密には「男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者」で、「パート・アルバイトとして雇用されている」「完全失業者で探している職種がパートかアルバイト」「非労働人口で、家事も通学もしていない人のうち、就業内定をしておらず、希望する仕事の形式がパート・アルバイト」のいずれかに該当するもの)は167万人、昨年比で12万人の減となった。
フリーターは若年層そのものの人口減少に加え、該当する層の雇用受け皿としての「派遣社員」にネガティブな注目が集まったことを受け、2004年以降は減少傾向を見せていた。フリーターの存在そのものが社会問題化したのも大きな要因。しかし2009年には再び増加に転じ、2011年に至るまでその動きは継続していた(これは多分に当時問題視された「派遣問題」に絡み、派遣社員の起用が敬遠され、代替としてパート・アルバイトの適用が増えたのが原因)。
一方2013年以降は景況感の変化に伴い、労働市場の大幅な改善と非正規社員、さらには正規社員へのシフトトレンドが続いている。パート・アルバイトの需要も増加しているが、完全失業者も減っており、全体としてのフリーターは減少傾向にある。
他方昨今ではフリーターの高齢化が指摘されている。
15~24歳までの世代層では「フリーター」の減少が2004年から確認されている。また、フリーター全体の減少過程においても、減少率・減少数共に15~24歳層の方が大きい。特に注目すべきなのは2006年から2007年の区切りで、2002年(公開値が確認できる最古の値)以降ではこの年ではじめて「15~24歳層」と「25~34歳層」の人数における逆転現象が起きている。今後さらに高齢化、言い換えれば「25~34歳層」の割合が増加していくだろう。
直近となる2015年では「15~24歳層」が3万人、「25~34歳層」は9万人減少した。主に女性の雇用市場の改善によるところが大きいが、その現象がとりわけフリーターの中では年上の層で起きていることがうかがえる。ただし現状でもなお25~34歳層が15~24歳層を大きく上回っている状況に変わりはない。この人達の立ち位置に変化が無ければ今後、さらに上の世代の「35~44歳層」において、いわゆる「高齢フリーター」へとシフトすることになる(2015年における「35~44歳層」の「高齢フリーター」は57万人)。
フリーターそのものに対する評価は賛否分かれるものの、フリーター数の減少は悪い話ではない。他方、フリーターの高世代層(25~34歳)が引き続き高水準にある状況は、そのまま「高齢フリーター」の増加に容易につながりうるだけに、十分な留意が必要になる。
当人たちがそのライフスタイルを望むのなら、他人の干渉は許されない。他方、歳を重ねてから、例えば34歳を超えて世間一般の「フリーター」という枠組みから外れた際に、どのようなライフプランを持っているのか、考えると疑問と不安が頭をよぎる。
なお35歳以上の同様な立ち位置にある人たちは、少なくとも労働力調査では「フリーター」とは呼んでいない。しかし就業環境・財政面で同じ状況にあることに違いは無い。35歳になったから「フリーター」と呼べなくなっただけで、突然就労状況が一気に改善するわけではない。「高齢フリーター」(一部では「中高年フリーター」「壮齢フリーター」とも呼んでいる)との言い回しとその実状は、今後フリーターと共に大いに注目を集め、一般化するに違いない。
■関連記事: