円安対応のための日銀の政策調整の可能性は
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20日の東京外国為替市場でドル円は一時、142円20銭近辺を付け、昨年11月以来、約7か月ぶりの円安ドル高水準を更新した。
ユーロ円は155円台となっており、こちらは2008年9月以来およそ15年ぶりの水準となっている。
13日、14日のFOMCでは予想された通りに利上げを見送った。フェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジは5~5.25%のままとなる。パウエル議長は、インフレを鈍化させるためには2023年中に「幾分か」の追加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想していると説明した。
同時に公表した経済見通し(ドットチャート)では、中央値で政策金利が年末までに5.6%に上昇すると予想されていることが示された。前回の予測では5.1%となっていた。つまり0.25%の利上げが年内に2回実施される可能性を示した格好となる。
欧州中央銀行(ECB)は15日の理事会で、前回5月と同じく0.25%の利上げを決めた。8会合連続の利上げはECBとしては初となる。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「ベースラインに重大な変化がない限り、7月も利上げを継続する可能性が極めて高い」とし、「(利上げの)一時停止は検討していない」とした。
これに対して日銀は15、16日の金融政策決定会合では全員一致で金融政策の現状維持を決定した。今回も公表文の最後は「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」となっていた。これをみても物価を取り巻く状況が様変わりしていても、日銀は緩和方向にしか姿勢を向けていないことが明らかとなった。
22日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)が開催される。こちらも0.25%以上の利上げが予想されている。
これにより欧米の中央銀行と日銀の金融政策の方向性の違いが、あらためて顕著となり円安が進むこととなった。
昨年は円安の進行に対して為替介入によって対処せざるを得なかった。それから少し遅れて、12月20日の金融政策決定会合で長期金利コンロールのレンジを±0.25%から±0.50%に拡大するという微調整を行っていた。
今回、どこまで円安が進むかはわからないが、ドル円の150円が意識されれば、介入なりの可能性は出てくる。米国が半期に1回公表する外国為替報告書で、為替操作国の監視対象リストから日本を除外したばかりではあるが。
それとともに日銀がYCCを再調整してくる可能性もあるのではなかろうか。植田総裁は16日の会見で、ある程度のサプライズが発生するということも、やむを得ないと発言していた。
いまの日銀は自ら率先して緩和の調整に動くことは考えづらい(本来はそうすべきだが)。このため調整が入るとすれば、何かしらの外圧なりが働かない限り、難しい可能性がある。