ベンチャーのスタートアップ期における難所(人材編)
起業はとにかく難しく、だけどエキサイティングで楽しい。残念ながら10年以内でその多くが敗退、生き残ってもほとんどが零細企業化し、株式上場などは確率的にみると0.01%とかそれくらいではないか。私自身もいくつかの会社を経営しまだまだ挑戦者として頑張っている身だが、これまで経験した典型的なスタートアップ期の難しさをまずはヒト(人材)にフォーカスして書いてみる。
モノ:プロダクト、サービス。
会社設立の目的がなんであれ、一般的に起業家は自分の得意分野あるいは勝てそうな分野のプロダクトおよびサービスで会社を立ち上げる。したがって初期的な段階でモノにおいて大きな問題が起きてしまっては、もしくはスジが悪かったら論外。あっという間に退場。もちろんカネもヒトもよりつかない。
私にとってベンチャーのスタートアップ期におえる難しさの9割はヒトとカネだ。今回はまず「ヒト(人材)」について語りたい。
ヒト:人材。
ベンチャーのスタートアップ期は挑戦的な経営者を支える優秀な創業メンバーの能力で決まる。創業メンバーのバックグラウンドは様々で職歴、学歴、業種、および年齢は様々。その多様性によってもたらされる「ゆらぎ」や「そわそわ感」がイノベーションの核となり、それこそがスタートアップ期の醍醐味なのだが、それは同時にメンバーに強いストレスももたらす。それは時に組織にゆらぎを超えた停滞を起こしかねない。
ヒトが原因になっている停滞の原因はいくつかあるが、私が考えるトップ3は以下。
1.起業家とそもそも相性が悪い
これは論外。この状態は当事者間だけでなく誰にとっても生産的な時間にならない。無理をして続けても1年と持たないだろうから、早々に時間を区切っちゃうことが重要。
2.多様性や急な環境変化がもたらすゆらぎを楽しめず、組織がぎくしゃくする
まさに生みの苦しみベンチャーの醍醐味。ここは意識してコミュニケーション量を増やしていけば解決する。猛スピードでも全員同じ車に乗っていれば怖くない。
3.メンバーが経験やスキルをベンチャー向けに再編集することができない
これはビッグチャレンジ。だけども創業メンバー全員がやり切らなくてはならない。スピード命のベンチャー企業においては時々刻々と状況が変化する。先週の勝ちパターンが、今週は負けパターンになることもしばしば。どれだけ柔軟に変化しながら動けるかが重要だ。そんななかで大企業から移ってきたベテランのビジネスパーソンの動きが遅かったり定型化されていたりすることがしばしば問題になる。
ありがちな議論は、あの人は年齢がずいぶん上だからベンチャーでは無理だという話でこれはもちろん大ウソだ。
当然、職歴が長いのだから、編集しなければいけない量が多いのは当たり前。編集に大変なエネルギーが必要だけど、優秀な人はあっという間にやれちゃう。全部を再編集できなくてもスキルごとあるいは経験ごとを一個一個適応させていければいい。しかもその再編集を成功させたベテランのパフォーマンスは驚くほど高い。
若年者でも前職のスキルや大学、もしくはビジネススクールでの学びをいい意味でアンラーニングすることができない人はいくらでもいる。学び忘れは思ったよりも難しくて、自分でできていると思っても実はやり切れていない場合が殆ど。
逆に自分はすぐに変化できると思っている人ほど要注意。自分の経験を全体と部分に分けて主体的に再編集しなくてはなかなか変われない。ここに年齢は関係ない。
それにしても年長者に変われないのレッテルを張るのは完全に間違っている。ちなみにGRAの経営メンバーほとんどが私より年上だが、みんなスピード違反だ。
さて、私も自戒のために一刻の時間も無駄にできないベンチャーにおいて、陥ってはならない罠を上げてみる。
・構造化評論家病
何でも構造化しないと気が済まなくなり、手段が目的と化すパターン。そもそもベンチャーのスタートアップ期はとりとめなく連続的にやってくる諸問題やチャンスとリアルタイムに向き合い戦い続けなければはならない。もちろん、構造化し整理することが問題解決にダイレクトに作用すれば話は別だが、構造化評論家病になると構造化して評論しただけで役割を終えたと思ってしまう。
人材が豊富な場所であれば話は別だが、ベンチャーはひとりひとりが解の方向性を導き出すための努力をしなくてはならない。アクションプランにどれだけこだわれるかだ。そして瞬発力も時には必要だ。もちろんこの原稿もヒト・モノ・カネで構造化しようとしている節があるが、大事なのは伝えたいことは何か。構造化は手段に過ぎない。
・それは今すぐ重要じゃないのに得意だから時間を割く病
現時点において相対的にインパクトつまり重要度が低い問題なのに、例えばそれが自分の得意分野だったりすると、必要以上に時間をかけてしまう病。限られたリソースで最大限のアウトプットを生み出すために組織としても重要事項を明示する責務があるが、個々のレベルでも注意を払っておかなければならない。
以上、今日はざっくりとベンチャースタートアップ期におけるヒトの話でした。