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ファミチキが品薄、チキンショックにみる物価上昇の兆し

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 19日に10月の全国消費者物価指数が発表された。総合指数は前年同月比でプラス0.1%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比でプラス0.1%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は前年同月比でマイナス0.7%となった。

 生鮮食品を除く総合指数は2か月連続で前年比でプラスとなったものの、引き続き消費者物価指数そのものは低迷したままとなっている。

 エネルギー価格は11.3%上昇と伸び率が拡大。このうちガソリンは21.4%上昇して2008年8月以来の上昇率となった。灯油は25.9%上昇して2017年11月以来の上昇率に。しかし、通信料(携帯電話)などが引き続き下落要因となっている。

 根本的な下落要素としては賃金の低迷なのかもしれないが、10月の企業物価指数が前年比プラス8.0%となっているのに比べて乖離幅が大きい。

 とはいえ、ガソリンや灯油価格の上昇は企業のみならず家計も圧迫しよう。さらに食料品などの価格がここにきて上昇してきていることも懸念材料となろう。

 18日に夕方のニュース番組をみていて気になるワードが出ていた。それは「チキンショック」というワードであった。

 コロナの感染拡大などにより、鶏肉の主要な産地であるタイの工場などが閉鎖されている。その影響を受けて日本への供給量が減少、一部コンビニやファミレスなどで、「チキン」商品が品薄になるなどの現象が起きているとTBSニュースが伝えていた。

 近くのファミリーマートに買い物に行った際、レジのところにファミチキが品薄だと知らせる貼り紙が出ていた。いったい何だろうとその時思ったのだが、夕方のニュースをみてその要因が新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、タイの工場の人手不足や原材料の不足が続いているためだと知った。

 これもひとつのサプライチェーンの問題ともいえよう。日本のプリンター製造大手のキヤノンのプリンターの主力工場がベトナムにあり、ベトナムでの新型コロナウイルスの感染拡大によってプリンター製造に影響が出ていた。

 品薄となっているのはプリンターだけではない。温水洗浄便座や給湯器などにも影響が出ていた。またベトナムやタイでの感染拡大などにより、冷凍エビなど冷凍食品にも影響が出ていた。

 それに加えて、チキンにも影響が出ていたのである。

 また、新型コロナウイルスの影響の長期化に伴う船のコンテナ不足で、米国からのワインの輸入が滞っているとして、ワインメーカー国内大手の「メルシャン」は、ことし9月から一部の商品の販売を休止していると、こちらはNHKが報じていた。

 コンテナ不足も一時的なものではあると思うが、物流に影響を与えており、米国ではクリスマスプレゼント不足まで懸念されている。

 世界的な物価の上昇は明らかなものの、日本では消費者物価指数そのものの低迷によって物価は上がっていないとの認識となっているようだが、サプライチェーンなどの問題による品不足、エネルギー価格の上昇による輸送燃料費の高騰、原材料価格の上昇なども加わり、現実にはじわりじわりと家計などにも影響を与えつつあるように思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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