【大和郡山市】こんな素敵なおもてなし空間が地元にあった!片桐石州の茶席で「侘び寂び」の世界に浸る!
地元でありながら、なかなか来ることがなかった『慈光院』1663年に片桐地区の大名片桐石見守貞晶(石州)が父・貞隆の菩提寺として建立しました。片桐石州の説いた茶の教えは徳川家綱をはじめ各地の大名が学び、石州は茶人として名を残すことになります。それゆえに『慈光院』の境内全体が一つの茶席の風情になるよう考え造られています。1人の茶人の総合的な演出を360年以上の歳月を超えて見ることができる貴重な場所です。
綺麗に整えられた参道はお掃除が行き届き、手入れがされた苔が美しく境内へと導いてくれます。
茨城門
石州の伯父の片桐且元が城主であった摂津茨城の城は、一国一城令で取り壊され、その中の櫓門を貰い受け移築されました。その際に屋根を『慈光院』の書院と合わせて茅葺きに葺き替え山門としました。
書院(国指定重要文化財)
うっそうとした林の参道を抜けて茨城門をくぐると、辺りがぱっと開けて明るくなり、茅葺きの農家風の外観の書院が現れます。これも石州の人を迎える時の演出だとか。
受付を済ませ、書院に向かう渡り廊下の床もピカピカにお掃除がされていてとても気持ちが良いです。
書院に入ると、そこには美しい風景が広がっていました。建物内は全体的に天井や鴨居の高さが低く、座敷に座った時に目の前に広がる庭園を見ながら、安らぎや落ち着きが出るように考えられています。開け放たれた座敷に座ると、自然にピンと背筋が伸び、美しい庭の風景をこの目に刻んでおこうと口数も少なくなります。
庭園(史跡及び名勝指定)
周囲の風景・景観と調和するように構成された庭園は、禅寺の庭園でありながら石をほとんど用いていません。多くの種類の木々を用い、茶室の庭として季節ごとの風情を楽しめるように造られています。
木々の高低差を出して演出された庭園。
お抹茶をいただきます
お茶菓子は片桐家の家紋が形どられています。
美しいお庭を眺めながらの一服で、和の世界に浸る至福のひととき。心が浄化されていくような気持ちになりました。
茶室(二畳台目) (国指定重要文化財)
片桐石州の代表的な席。現存する茶室の中で、年代・作者・形状などが証明できる古い席と言われています。
茶室(三畳) (国指定重要文化財)
二畳台目にくらべると席中はやや暗くなっています。
窓枠が額縁の役割をして、そこから眺める庭の景色はまるで絵画のようです。
本堂
昭和59年に再建された本堂。美しい風景を見るのを損なわないよう、あえて書院、庭園の後ろ側に造られました。
天井に龍が躍る!
本堂の天井には、本堂建立の祈りに入江正己画伯により墨絵の龍が描かれました。迫力のある墨絵をぜひご覧ください!
稲庭うどんのルーツと言われる「石州麺」(1500円)
茶道石州流の開祖、「片桐石州」からもてなされた茶懐石の「油不入平索麺」があまりにも美味しく京都の大名や公家の中に広まりました。その頃、秋田佐竹藩の藩主と石州との交流によって秋田に伝わったのが稲庭うどんと言われています。「油不入平索麺」を再現したのが「石州麺」です。稲庭うどんが好きなのでルーツの石州麺を購入して食べてみました。平たい麺は国産の本葛が使われていて、喉越しが良くツルッと滑らかでした。
「お客様をもてなす」心が無くなった日本人
ご住職は「本来、茶の湯の世界でお客様をもてなすとは、見えないところに時間をかけ心を込めてお迎えすること。もてなされる側も、手をかけてもらったことに感謝する。欧米ではパーティーなどがよく行われ、手料理を振る舞うなど、手の込んだもてなしが多いですが、日本ではそのような機会も少なく、目先のもてなしだけで成り立っていることが多いです。今の日本人は人との繋がりが遮断され、お客様をもてなす心が失われつつあり、危惧しています。」
書院前に手帖水には、野鳥が水を飲みにやってくる姿が何度も見れました。野鳥もこの静寂漂う美しい庭園を満喫していて、もしかしたら石州は野鳥までもこの庭園の風景の一部として考えて手帖水を作ったのかもしれません。
あらためて「侘び寂び」の世界が身に沁みる年代になったなぁと感じた『慈光院』でのひとときでした。
『慈光院』
住所:大和郡山市小泉町865
TEL: 0743-53-3004
拝観時間: 9:00~17:00
観覧料:個人(小学生以上)1000円
団体(30名以上)950円
※抹茶接待を含む
アクセス:・JR大和小泉駅から近鉄郡山駅行きバス「片桐西小学校」下車、徒歩約3分
・近鉄郡山駅から法隆寺行きバス、または小泉駅東口行きバス「片桐西小学校」下車、徒歩約3分
駐車場:有り(無料)
普通車25台、大型バス8台