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苦悩する姿こそ日本ハム・村田透の真骨頂だ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
壁にぶち当たりながらも少しずつ前に進んできた村田透投手

 日本ハムと契約を結び、7年ぶりに日本球界復帰を果たした村田透投手に対し、周囲はどう感じていただろうか。2015年にはメジャー初昇格を果たし、さらには3Aで最多勝にまで輝いた右腕だけに、やはり即戦力としての期待が大きかったはずだ。

 しかしここまでの成績は、1軍での登板はわずか9試合で1勝2敗、防御率3.38。最近は1軍に定着して定期的に先発することもできず、前回登板した8月14日のソフトバンク戦後の翌日には出場選手登録を抹消され、再び2軍に回っている。もちろん誰もが期待していた状況ではないし、当の村田投手本人が最も悔しい思いをしているはずだ。

 前回の登板では強力ソフトバンク打線を4回まで1失点に抑える好投を演じながら、投球練習中に右脚ふくらはぎの痙攣で降板を余儀なくされ、不運なかなちで今季2勝目を不意にしている。この試合のみならず今シーズンは任された試合で、3Aで先発していた時のように長いイニングを投げきれない状況が続いている。その悔しさは下記の言葉にも如実に表れている。

 「先発としての仕事が果たせていない。長いイニングを投げないといけないですし、こんな仕様もないことで降りるようじゃダメですね。チームが勝ったこと一番ですしそれは良かったですけど、それ以上に自分の仕事をしないといけないです」

 実は村田投手が2001年の米国挑戦以来、都合がつく限り現場に足を運んで彼の投球を取材してきた。そんな立場から言えるのは、村田投手は決して器用なタイプではないということだ。いやむしろ不器用なタイプに分類されるだろう。確かに前述通り3Aで最多勝に輝く活躍もしてきたが、彼が米国で過ごした6年間は決して順風満帆なもものではなかった。

 1年目となった2011年シーズンは1Aからのスタートだった。当時は先発か、中継ぎか起用法すら明確になっていなかった。先発起用に固まりだしたのは3年目の2013年シーズンからだった。

 3年目のシーズンは2Aと3Aを行ったり来たりが続いた。3Aで先発投手が足りなくなると緊急昇格し、登板後には再び2Aに戻るという慌ただしい中で投げ続けた。そんあな状況で少し結果を残し続け、米国挑戦4年目のシーズン終盤でようやく3Aに定着することができた。

 だが5年目に3Aで最多勝に輝きながら、6年目のシーズンは若手有望選手の兼ね合いもありシーズン開幕当初は先発ローションから外される屈辱を味わった。そうやって6年間厳しい状況におかれながら、村田投手は自分なりに踏ん張り、少しずつ前に進みながら周囲に認めてもらえるような投球を披露してきたのだ。典型的な努力の人なのだ。

 さらにいえば、元々村田投手は一度も1軍登板できないままわずか3年間で巨人から戦力外になった選手だ。それを考えれば、まだ満足できる内容ではないとはいえ、現在1軍で投げていること自体が米国の6年間で彼が成長してきた証でもあるのだ。そんな不器用な投手であるからこそ、7年ぶりに戻ってきた日本球界という環境にすんなり順応できてはいない。米国での6年間と同様に、村田投手なりに一生懸命前に進もうとしているのだ。

 「(前回の登板前の2軍での)1ヶ月半は決して無駄ではなかったと思いますし、今までやっていた以上にいい感じでできたんじゃないかなと思います。意味があった1ヶ月半だったと思います。自分に中では日本に合わせた野球ができるようになってきたんじゃないかな…。そんな気がしてきています」

 すでに32歳をいう年齢を考えれば、決して時間的余裕があるわけではない。やはり周囲を納得させるだけの結果が求められるだろう。ただ米国での6年間の歩みを目撃してきた身からすれば、どうしても村田投手の言葉を信じたくなってきてしまう。残りシーズンでの登板でこれまでの悔しさのすべてをぶつけて欲しいと願うばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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