メディアの信頼度を東アジアの外交問題に関するニュースの情報源としての観点からさぐる
全体的には新聞が一番
新興諸国の経済発展と、一部の国による軍事面も含めた意欲的・積極的・高圧的な外交施策に伴い、東アジアの緊張はこれまでに無い高まりを示している。その動向は対岸の火事ではなく、日本自身にも大きな影響を及ぼす、さらには関係のある事案も多数含まれており、一人一人が情報の収集に興味関心を持つのは当然の話。今回は総務省が2017年7月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、この東アジアの外交問題に関するニュースを取得する際に、主要メディアは情報源としてどれほど信頼されているのかについて確認する。
まずは全体的な統計。やはり新聞への信頼度が一番高い。
興味深いのは新聞に続くテレビとラジオがほぼ同率となっていること。わずか0.01ポイントの差で誤差の範ちゅうであり、実質的には同じポジションにあると見てもよい。東アジアの外交問題に限れば、映像付きのテレビと、音声のみのラジオへの信頼度は変わりがないことになる。
またインターネットニュースサイトの値が高いのも特徴的。もっともそれ以外のインターネット系、ソーシャルメディアや動画共有サイト、ブログなどは押し並べて低い値。1.50が信頼できる・できないの境界線となるので、これらは全体としては「信頼できない」のらく印をおされていることになる。そして4マスの中では唯一雑誌もまた、「信頼できない」に分類されると判断できる。
属性別に比較
続いて各種属性別。まずは男女別。
ほとんどのメディアで男性よりも女性の方が高い信頼度を示している。他のニュース項目でも女性は高めの値が出ているが、東アジアの外交問題に関してもまた同様なのだろう。ただし他のニュースで見られた、雑誌やソーシャルメディアのような口コミ色の強いメディアで男女差が大きくなるような傾向は無い。やや雑誌が大きいように見える程度か。
続いて年齢階層別。
他の調査項目においてはインターネット系のメディアでは、高齢層ほど低い値を示す傾向があるが、今件ではソーシャルメディアは同様の動きがみられる。ただしそれ以外は傾向だった値動きがあるようには見えない。
他方4マスのうち雑誌以外、そしてインターネットニュースサイトは10代以外では、年齢階層による違いがみられない。東アジアの外交問題は4マスでは取り上げられる割合が一定量に限られ、年齢階層別の差異が出るほどの材料が取得できないからだろうか。
他方、10代は4マスとそれに深い関係があるインターネットニュースサイトに対し、他の年齢階層と比べて突出した高値、より強い信頼度を示している。それぞれのメディアに対する虚報・誤報など情報リスクとの対面経験がまだ浅いからなのだろう。
続いて就業形態別。
特に大きな、傾向だった動きは見られない。強いて言えばどのメディアに対してもパート・アルバイトは高め、無職は低めというところだろうか。学生・生徒は誤報などによるリスク体験が少ないことから高めの値を示しているものの、インターネットニュースサイトを除いたインターネット系サービスに関しては低い値に留まっている。4マスよりも利用経験が多いため、痛い目に会っている機会も多いのかもしれない。
最後は世帯年収別。
他の調査項目同様、大よそ高年収ほど4マスやそれに連動するインターネットニュースサイトへの信頼度は高く、インターネット系メディアへの値は低くなる。年収そのものが影響するのではなく、年収との連動性の高い年齢に、値が引っ張られているのだろう。
海外ニュース、特に東南アジア関連のニュースは、国内報道機関の報道においては、各社の、場合によっては記者のバイアスが反映されることがあり、外電の一次ソースや元となる公的機関の情報を確認すると、印象が大きく異なる、まったく別の実態だったとする事案が相当な頻度で生じている。他の項目と比べ、全体的に信頼度が低いのも、それが遠因だと考えられる。
もっとも、あくまでも今結果は一般論。結局のところ、それぞれのメディアを用いて情報を配信する、個々の企業・組織の特性・姿勢により、信頼度は大きく変わってくる。その見極めができないと、「テレビだから丸ごと信頼できる」「ネットだから全部うさんくさい」のような、仮の信頼度に右往左往してしまうことになるかもしれない。結局のところテレビもインターネットも、情報を伝達するツールでしかなく、その情報を信頼できるか否かは、配信側によるところが大きいことを忘れてはならない。
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※平成28年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2016年11月26日から12月2日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳から69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時併行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。
今件項目では主要メディア、具体的にはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてインターネットに関してはネットニュースサイト、ソーシャルメディア、動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトに細分化した上で、東アジアの外交問題に関わるニュースの情報源として、どの程度信頼できるかを「非常に信頼できる(3)」「ある程度信頼できる(2)」「あまり信頼できない(1)」「まったく信頼できない(0)」「そもそもその情報源を使わない、知らない」のいずれかから回答者自身の考えにもっとも近い選択肢を一つ、選んでもらっている。その上で、「そもそもその情報源を使わない、知らない」以外の回答に関して割り当てられた数字の平均を信頼度として算出している。全員が「非常に信頼できる」と答えれば3.00、「まったく信頼できない」なら0.00となり、値が大きいほど大きな信頼が寄せられていることになる。
一方この方法では「そもそもその情報源を使わない、知らない」の回答者は信頼度算出の際には除外されている。この回答者の中には「信頼がおけないので使っていない人」が居る可能性も否定できず、現実の信頼度は算出値よりもいくぶん低いと見た方が無難ではある。
「東アジアの外交問題」に関しては回答用紙にそのままの表現で書かれており、具体的にどの国、どの場所、どのような事案を対象にしているかの説明は無い。その表現で回答者が想起できるものが対象となる。