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【大雨・台風対策】気象予報士はハザードマップで何を見てる?実は危険なNGと本当に見るべきポイント解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

台風の接近に伴い、警報や避難情報が発表され、自宅の周りの危険性が気になってハザードマップを見る人も増えると思います。

ハザードマップを見ること自体は非常に重要で、今まで備えをしていなかった人もまずはそこから始めてOKなのですが、実は見方を間違えると危険なことも…。

気象予報士・防災士の資格を持つ筆者が、ハザードマップの見方に関するよくあるNGと、ぜひ確認してもらいたいポイントや、おすすめのハザードマップを解説します。

【NG1】自宅をピンポイントで見る

ハザードマップを見るとき、まずは自宅の場所を探す人が多いのではないでしょうか。
もちろん自宅は探していただきたいのですが、ピンポイントで自宅の場所だけを見るのではなく、「周辺を含めた"自宅のあたり"を」見てください。

どういうことかというと、もし自宅が土砂災害の警戒区域に指定されていなかったとしても、隣の家が指定されているケースがあり、そういう場合は自宅にも危険がおよぶおそれがあるからです。

実際、土砂災害による被害のほとんどは「土砂災害警戒区域と"その周辺"」で発生しています。
つまり、ハザードマップに載っている情報はかなり重要なのですが、ピンポイントすぎる見方をしてしまうと、せっかくのハザードマップの利点を無為にしてしまうのです。

【NG2】通勤・通学路や避難経路の危険を見る

ハザードマップは地図なので、当然ながら道も描いてあります。

ところが、「道」そのものは土砂災害警戒区域の指定対象にはなりません。警戒区域が指定されるのは、もともと「住家」だけなのです。
道の近くに住家が建っていればハザードマップでも色が塗られますが、両脇に住家がいっさい無いような道に関しては、たとえ危険な崖がそばにあっても色がつかないのです。

そのため、ハザードマップで安全そうに見える道でも、崖や斜面が近くにある道などは大雨の際に避けて通るのがおすすめです。

【NG3】ものすごく拡大して見る

ハザードマップを見るとき、ものすごく拡大して色が塗られているところとそうでないところの境目を見極めようとする人がいます。
が、そんなに拡大して見ても意味があるほど、ハザードマップの精度は細かくありません。

そもそも危険な場所とそうでない場所の境目は、そんなにハッキリしたものではなくグラデーションになっているはずなので、境界線を厳密に見ることに意味はありませんし、むしろ危険です。

のちほど紹介する「重ねるハザードマップ」では、あまり地図を拡大しすぎると地図が真っ白になる(それまで見えていた色が消える)仕様になっています。
地図が真っ白にならない程度のサイズで見て、「だいたいこのあたりが危険なんだな」と認識してください。

迷ったらコレがおすすめ!「重ねるハザードマップ」

「重ねるハザードマップ」(国土地理院HPより)
「重ねるハザードマップ」(国土地理院HPより)

さきほどから話に出てきている「重ねるハザードマップ」は、国土地理院が提供する無料のハザードマップです。

役所のHPなんて見づらいでしょ?と思うかもしれませんが、これがかなり見やすく、しかも便利なのです。

使い方はGoogleマップと同様、検索窓に住所やスポット名(学校や公共施設の名前など)を入れて検索してもいいですし、自分で地図を拡大・縮小しながら地元を探すこともできます。スマホの場合は現在地を表示させることも可能です。

「重ねるハザードマップ」(国土地理院HP)を元に作成
「重ねるハザードマップ」(国土地理院HP)を元に作成

画面の左上に表示されている「選択中の情報」というパネルで「土砂災害」や「洪水」を選ぶと、それぞれ危険な場所が色で示されます。

今回の記事では大雨災害の場合を中心に解説してきましたが、このハザードマップでは高潮津波についても見ることができます。

なお、前述の通り、両脇に住家がない道についてはたとえ土砂災害の危険があっても色が塗られていません。

また、小さな川についてはハザードマップが作成されていない場合もあるため、近所に小さな川がある場合は、大雨の際には気象庁の「キキクル」で危険度を確認するようにしましょう。

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気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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