【ウルトラマンを超える究極の存在とは?】血に飢えた宇宙人達が繰り広げる伝説の大怪獣バトルとは?
みなさま、こんにちは!文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
ムシ暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「支配者」です。
「支配者」とは、その名の通り、「支配」をする者。
広辞苑によれば、支配とは「統治すること。ある者が自分の意思・命令で他の人の思考・好意に規定・束縛を加えること。」と定義されています。
国家体系で考えるならば、一国を統治する王様も「支配者」と呼んで差し支えないかと思いますが、その形は実に様々。
良き統治をおこない、世の中に平穏をもたらす支配をする者もいれば、独裁体制を敷き、世の中に混乱をもたらす支配者も、史実の中でたくさん登場しました。
現実を離れて物語の中に登場する支配者たちに注目すると、世界や地球の支配だけに留まらず、宇宙の支配を企み暗躍する者達も多数登場しました。
その中でも、特に宇宙の支配を企む者達の数が突出していたのは、日本が世界に誇る国民的特撮ヒーロー番組である「ウルトラマンシリーズ」。
当シリーズのヒーローであるウルトラマン達は、みんなで力を合わせながら、悪事を起こして宇宙の支配者にならんとする者達を、命からがら何度も退治してきました。しかしその中でも、ウルトラマン達でさえ対処が困難な、究極の支配者がいたことをご存じでしょうか?
彼の名は「レイブラッド星人」。かつてウルトラマンシリーズの宇宙に君臨し、全知全能の支配者として恐怖による支配を行なっていた、極めて邪悪な存在でした。
そんな巨悪を打ち破ったのは、ウルトラマンではなく、なんと地球に暮らすひとりの怪獣好きの少年でした。
今回は、そんなウルトラマンシリーズに登場した「レイブラッド星人」と、地球に暮らす一人の少年の戦いに焦点を当てていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【あなたはどの世代?】ウルトラマンシリーズ栄光の歴史と、シリーズ屈指の異色作「大怪獣バトル」に至るまで
さて、本記事では「レイブラッド星人」についてお話をしていきたいと思いますが、その前に少しだけウルトラマンシリーズについてご紹介させてください。
ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とするシリーズです。
1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンティガ(1996)』、『ウルトラマンコスモス(2004)』、『ウルトラマンアーク(2024)』と世代を跨ぎながらシリーズが続いていきました。
昨今では海外展開も盛んであり、NET FLIXではCGアニメ作品「ULTRAMAN RISING」(外部リンク)が世界配信される等、シリーズの勢いは留まることを知りません。
そんな約60年に渡るウルトラマンシリーズを支えてきたのは、歴代ウルトラマン達の大活躍はもちろんですが、当シリーズにおいて悪役を務めてきた「怪獣」達の存在がありました。
毎週個性豊かな怪獣達が多数輩出され、ウルトラマンシリーズの大衆的人気や認知度に大きく貢献してきた彼らは、正に当シリーズの「真の主役」といって差し支えないと思います。
空から、海から、地底から、巨大な姿を現わす怪獣達は、あらゆるものを踏み潰し、人々を恐怖させ、建物をなぎ倒して街で大暴れ。そして最後にはウルトラマンに退治される、正に「盛者必衰」の理を表わすかのような存在でした。
しかし、長いウルトラマンシリーズの歴史の中で、ウルトラマンが主役でなく、これまで倒される役回りだった「怪獣」が毎週ヒーロー役を務めた異色作がありました。その作品の名は『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル(2007)』。
本作は、怪獣を操ることの出来る謎の青年・レイが、宇宙を開拓するエキスパートチーム(ZAP SPACY)の仲間達と共に、各惑星を舞台とした怪獣同士の戦いに巻き込まれながら、宇宙の平和を守る物語。
好評を得た本作は新たな次回作(テレビ番組)と共に、レイ達の活躍を描いた映画やオリジナルビデオ等も次々に制作され、放送開始から約17年経った現在も、ウルトラマンシリーズの歴史に燦然と輝く名作として語り継がれています。
上述してきた『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』のヒーローは、ウルトラマンではなく怪獣。主人公・レイが操る3体の怪獣達が活躍し、凶暴な怪獣達を相手に「大怪獣バトル」を繰り広げます。
本記事にてご紹介するレイブラッド星人は、この『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』に登場する最大の悪役でした。次章からは、そんなレイブラッド星人と地球人の少年との戦いの行方に焦点を当てていきます。
【全知全能の宇宙の支配者!】血に飢えた後継者争い!究極生命体レイブラッド星人とは何者か?
上述してきた『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』の物語の中で登場したのが、究極生命体レイブラッド星人。
彼はあらゆる怪獣を自在に操る能力を持ち、その強大な力でかつて全宇宙を支配した究極の存在。宇宙でその名を知らない者はいないとされ、すべての宇宙人が恐怖に震え上がる程、絶大な力を持っていました。
これまでウルトラマン達を苦戦させてきた幾多の宇宙人たちも彼を恐れており、その中には全滅寸前まで追い込まれた者達もいたほど、極めて危険な存在として宇宙を支配していたのが、レイブラッド星人だったのです。
しかし何百年も前に絶滅し、肉体を失ったレイブラッド星人は精神体(亡霊)となり、自らの後継者を決めるために、怪獣を操ることのできる自分の遺伝子を宇宙中にばらまきます。
その結果、宇宙各地で怪獣を操ることのできる存在(レイオニクス)が誕生し、各惑星出身のレイオニクス同士が、自身が操る怪獣同士を戦わせ、最後に勝利した1人がレイブラッド星人の後継者に選ばれるという「レイオニクスバトル」が展開されることになってしまいました。
このレイオニクスバトル、地球も例外なく巻き込まれました。激しいレイオニクス同士の戦いによって時空が混乱し、地球でたくさんの怪獣達が出現する大混乱(ギャラクシークライシス)が発生したほか、地球人初のレイオニクスである青年・レイ(レイモン)が誕生し、宇宙各地を舞台に血を血で洗うレイオニクス同士の戦いを繰り広げることになりました。
ある時は自分の姉を倒し、またある時は自身の命を失いかけ、さらにある時は邪悪な心を持ったウルトラマン(ウルトラマンベリアル)とも激しい戦いを繰り広げたレイですが、彼はレイブラッド星人の後継者になることを拒否し、宇宙の平和のために戦い、自分の宿命を断ち切ることができたのでしたー。
そんなレイの勇敢な戦い(『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』)からさらに半世紀―。
地球で暮らす御蔵イオという小学生の少年のもとに、怪獣を操ることのできるアイテム「バトルナイザー」が送られます。バトルナイザーには「ゴモラ」、そしてイオの大親友となる「ピグモン」という怪獣が宿っており、イオはピグモンのアドバイスを受けながら、ゴモラと共に宇宙を舞台としたレイオニクス同士の戦いに巻き込まれてしまいます。
ほかのレイオニクスとの戦いを通じて、イオは血に飢えたレイブラッド星人を倒し、宇宙の平和のために戦うことを決めます。宇宙を舞台とした壮大な大冒険の先に行き着いたのは、かつて地球人初のレイオニクス・レイモンが活躍した惑星ボリスでした。
イオ達の前に姿を現したレイブラッド星人(亡霊)。成長したイオを自身の後継者に選ぶかと思いきや、それは真っ赤な嘘。彼の目的は、イオのようなレイオニクス達の力を吸収して、完全復活を遂げることでした。あれほど大規模な後継者争いを仕掛けておきながら、実ははじめから後継者に宇宙を明け渡す気などさらさらなかったのです。
そしてイオに「バトルナイザー」を送り、宇宙を舞台としたレイオニクスバトルに巻き込んだのはピグモンであり、彼はレイブラッド星人の配下として活動していたことが明かされます。全ては、レイブラッド星人の筋書き通りだったのです。
イオは泣いて謝罪するピグモンを許し、レイブラッド星人に戦いを挑みます。苦戦するイオに力を貸したのは、なんとイオの活躍をこれまで見守っていた先輩レイオニクス、レイモンでした。イオとレイモンは協力してレイブラッド星人を退けますが、彼が逃走した先は地球でした―。
イオは地球に帰還し、レイブラッド星人に最後の戦いを挑み、勝利します。
レイモンはイオに、バトルナイザーは使う心次第で正義の力になることを告げ、去っていきました。
長きに渡り宇宙を混沌に陥れた支配者、レイブラッド星人を倒し、平和をもたらしたイオは、名実ともに「真のレイオニクス」となったのでしたー。
ここまで述べてきたレイブラッド星人が登場するテレビ番組『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』、及び漫画作品である『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー』の魅力は、宇宙を舞台とした壮大な世界観にあります。
さらにこれら『大怪獣バトル』シリーズから、現在のウルトラマンシリーズを支える「ウルトラマンベリアル」や「ウルトラマンゼロ」といった人気キャラクターが数多く輩出されており、これらの作品がなければ、ウルトラマンシリーズの歴史は大きく変わっていたかもしれません。
今年(2024年)に誕生15周年を迎える「ウルトラマンベリアル」と「ウルトラマンゼロ」、両キャラクターを輩出した『大怪獣バトル』シリーズですが、この節目の年を機に、もう一度当シリーズを観直してみるのも一興かと思います。
最後までご覧頂き、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・丸澤滋(てれびくん編集部)、『愛蔵版 ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』、小学館
・西川伸司、『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー 上』、角川書店
・西川伸司、『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー 下』、角川書店
(『大怪獣バトル』シリーズを視聴するなら)
・TSUBURAYA IMAGINATION(通称:ウルトラサブスク、外部リンク)