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国際宇宙ステーションで2020年から民間宇宙飛行士受け入れ NASA発表

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
Credit: NASA

2019年6月7日、NASAは国際宇宙ステーション(ISS)の商業化計画について発表した。2020年以降にISSで民間宇宙飛行士の滞在ミッションが可能になる。1回あたり30日程度のミッションを年に2回実施するという。

米政府はISSへの運用資金拠出を2024年までとしており、2025年以降は商業有人宇宙活動の拠点とする方針を発表していた。2018年には、商業利用の可能性を研究する企業13社を選定している。今回の発表は商業利用で可能になる活動内容とその方針、5項目が明らかになった。

民間宇宙飛行士は、NASAがスペースX、ボーイングの2社と開発を進めている有人宇宙船に搭乗してISSへ向かう。滞在中は「商業活動およびマーケティング活動」が許可されており、宇宙旅行としての滞在も可能だ。

宇宙から地球を眺める旅行も可能になる。Credit: NASA
宇宙から地球を眺める旅行も可能になる。Credit: NASA

NASAが発表した「料金表」によれば、水とトイレなどの生命維持装置使用料が1日あたり1万1250ドル、食料その他のサプライ品、医療品、運動器具使用などが1日あたり2万2500ドル、貨物が1単位(最大27.2キログラム)で1日あたり105ドル、電力使用料が1キロワット時あたり42ドル、通信量が1GBあたり50ドルとなっている。合計で3万3947ドル(約370万円)となる。宇宙船への搭乗費用(1シートあたり5800万ドル)を追加すると、一泊の滞在費は約63億円以上になると考えられる。

NASAによる民間宇宙飛行士のISS利用料。Credit: NASA
NASAによる民間宇宙飛行士のISS利用料。Credit: NASA

最初の民間宇宙飛行士滞在ミッションが行われる時期については「早ければ2020年」となっている。スケジュール決定はスペースX、ボーイングによる宇宙船の実現が左右すると考えられる。現在のスケジュールでは、ボーイングのスターライナー宇宙船の有人試験飛行は、8月に予定されている無人試験以降に行われる。4月20日にエンジン燃焼試験中の異常で機体が損傷したスペースXのクルードラゴン宇宙船は事故調査の終了次第となっており、試験飛行再開の日程は不明だ。宇宙船の有人飛行が実現し、2020年に最初のミッションが行われた場合、2020年5月からJAXAの星出彰彦宇宙飛行士がコマンダーとしてISSに滞在している期間中に、民間宇宙飛行士を迎える可能性もある。

NASAは有人ミッションだけでなく、ISSでの材料、創薬など「宇宙製造」と呼ばれる実験の商業化も進める。宇宙実験機会の提供は中国が2018年から国連と共同で進めており、途上国を中心に中国宇宙ステーションを利用するプログラムの選定結果を6月12日に発表する予定だ。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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