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ブラジルやアルゼンチンなどが人民元決済を開始する理由

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 中国が資源取引で人民元決済を拡大させている。中国とブラジルは3月、貿易や金融取引で両国の通貨を使って直接取引できる仕組みの創設で合意したとAFP通信などが報じていた。

 ブラジルの輸出における中国の存在感は2012年以降増している。2012年は輸出額全体の17.2%が中国向けだったが、2021年は31.3%と割合は1.8倍に大きく増加していた。2021年の対中輸出で最も金額の割合が大きかった品目は、鉄鉱で全体の32.3%、次いで大豆が同31%、原油が16.2%、牛肉が4.4%と続く(3月22日付JETROのレポートより)。

 さらに、アルゼンチン政府は4月26日、中国からの輸入品の決済をドルから人民元に切り替えると発表した。

 4月は10億4000万ドル(約1400億円)相当を、5月以降は7億9000万ドルを人民元で支払うという。中国はアルゼンチンにとって最大の輸入相手で、全体の2割強(2022年に約175億ドル)を占める(5月7日付日本経済新聞)。

 アルゼンチンでは世界的なドル高と干ばつでインフレが加速し、通貨ペソの下落に歯止めがかからず、このためアルゼンチン政府はドルの流出を抑えようと、中国からの輸入に対して人民元決済を導入したとされる。

 中国はドル覇権を揺さぶろうと機会があれば、人民元決済の拡大を狙っている。デジタル人民元を率先して進めようとしているのも、その狙いもあるとされている。

 さらに台湾有事に備え資源調達を安定させたい思惑もありそうだともされている。

 石油やガスでも人民元決済を拡大させようとしている。原油が輸入の5割を占めるロシアとの石油取引では人民元決済が浸透しているとされる。

 ロシアによるウクライナ侵攻によるロシアへの経済制裁などもロシアによる人民元決済を拡大させている要因となっている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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