10年前の2013年8月22日、歌手の藤圭子さんが亡くなった
ちょうど10年前の2013年8月22日、歌手の藤圭子さんが亡くなりました。
建物からの転落死でした。
そのことを伝える、この日の夕刊記事には・・・
・・・・記事を読んだとき、詳細はまだわかりませんでしたが、「ああ、そういう亡くなり方をしたのか」と思いました。
ただ、どこか意外という感じがしなかったのも事実です。
「新宿の女」の藤圭子が、出発点の「新宿」で亡くなったことも、不思議な整合感がありました。
<怨歌>歌手・藤圭子
1969年9月のデビュー曲「新宿の女」。
実にインパクトがありました。
「凄み」みたいなものが半端じゃなかったのです。
ラジオで最初に聴いた時、まさか18歳の女の子が歌っているとは思いもしませんでした。
確か、五木寛之さんが、当時の彼女について書いた文章があったはずです。
本を探してみると、やはり、ありました。
『風に吹かれて』に続く、第2エッセイ集『ゴキブリの歌』。
ここに収められている「艶歌と援歌と怨歌」です。
毎日新聞に掲載されたのは1970年で、翌年に単行本化されました。
以下、その部分を書き抜いてみます・・・・
・・・「最初のLPレコード」と書かれているのは、デビュー曲をタイトルにしたアルバム『新宿の女 演歌の星/藤圭子のすべて』のことです。
「たとえ今後どんなふうに生きて行こうと、もうそれで自分の人生を十分に生きたのだ」という文章がすごい。
また、「この歌い手の生涯で最高の短いきらめき」という言い方にも驚く。
デビュー直後の18歳の歌手のことを書いたとは思えない文章です。
まるで、彼女のそれから先、45年の軌跡を予見しているかのようだ、というのは思い込みが過ぎるかもしれませんが。
しかし、この五木さんの文章以上に、「藤圭子」の本質を突いたものを、他に知りません。
誰にも似ていない、唯一無二の<怨歌>歌手だった、藤圭子。
享年62。
8月22日は、没後10年の命日です。
合掌。