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危ない!そのアプリ、恐喝アプリかも?

森井昌克神戸大学 名誉教授
後悔(写真:アフロ)

アダルト動画を見ようとすると持ち主の写真を撮影し、「500ドルを払わなければ写真を拡散する」などと脅迫する悪質なAndroid用ポルノアプリ「Adult Player」が出回っています。米セキュリティサービス会社「Zscaler」が注意を促しています。

出典:アダルト動画を見ようとした人の写真を撮り「500ドル払え」と脅迫する悪質Androidアプリが登場 セキュリティ会社が注意喚起【ねとらぼ】

ファイルを暗号化してアクセスできなくしてしまい、それを解除してほしければ金を送れ!というパソコンの世界では有名なランサムウェアがあります。そのスマホでの進化系が問題となりつつ有ります。パソコンのように仕事等で重要なファイルを保存しているわけでなく、起動しなくなるならともかく(起動しなくなると脅迫も出来なくなるので)、ファイルにアクセスできなくとも、慌て取り乱す度合いは小さいでしょう。アクセスできるように、その方法を検索して再設定する方法を探し出す余裕もあることでしょう。純粋なランサムウェアだけではスマホでは効果が期待できないのです。そこで考えられた手法が、スマホの特性を生かし、画面を見ている人の写真を撮ることで冷静さを喪失させることでした。自分の顔写真を取られ、それを公開するからといっても、冷静に考えれば、それほど大きなダメージを与えられるわけではありません。アダルト動画に関するアプリをインストールし、見ようとした事の「後ろめたさ」から冷静さの喪失に拍車をかけるのです。

詐欺や恐喝の基本は相手に冷静さを失わせる事です。その点、アダルト動画を見るという、いわゆる昔からの、いわれのないアダルトサイトの会員料金を不正に要求するワンクリック詐欺と同様、古典的な手法です。しかしAndroid向けの修正として、画面を見ている利用者の写真を撮るというのは斬新的でした。

「後ろめたさ」と「冷静さの喪失」、これが恐喝ソフトウェア(blackmail)の基本です。大概の場合、著作権を侵害する等、不正な方法で得たソフトウェア(アプリ)を導入する後ろめたさを利用して、その事実を含む、個人のプライバシーを公にすると脅し、冷静さを失わせて、罠にはめる手口は数多く出現することでしょう。後ろめたさを軽減するために、Google Playからのアプリであっても完全に信頼できるわけではないので、必要なアプリ以外はインストールしない事です。そして慌てない「鈍感力」も大事です。この「後ろめたさ」と「冷静さの喪失」への対策が基本なのです。

逆にマルウェア(不正アプリ)としては、この「後ろめたさ」と「冷静さの喪失」をどう作り込むか、そのシナリオ作りが肝になってきます。

今、この不倫SNSサイトの情報漏えいをきっかけとして、国内でも脅迫メールが増えていく事でしょう。過去の例からも日本人はこの手の手口に弱いと言っても過言では有りません。脅し取られる金額が少額だからといって決して支払っては行けません。ハードディスク内を暗号化してしまい、元に戻したいならば小額を振り込む事を強要するランサムウェアというマルウェアのように、振り込んでも何の解決にもなりません。そればかり、詐欺や脅迫に屈し易い人という、いわゆる「カモリスト」に登録されて、頻繁に脅迫や詐欺に逢う目になってしまいます。

出典:明日にでも届くかも!?、脅迫メール【Yahoo!JAPANニュース個人】

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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