HIKAKINが危機一髪、著名人が遭遇した過去の「不審者乱入」と警戒心の引き上げの必要性
8月14日、人気YouTuberのHIKAKINが、代々木競技場で開催されたゲームイベント『オールスター運動会』に出演した際、ステージに乱入した不審者に接触される出来事が発生した。
傘をさした不審者はピンマイクも奪い取り、「みなさん初めまして。僕、世界一格好良い男になります」と話したところで、スタッフに連れていかれた。HIKAKINは、不審者の手を払いのけるなどして防御。それでも不審者がピンマイクで喋っている間は身をすくめて、なす術がない状態に。この間、かなりの時間があり、不審者が「野放し」になってしまった。
一部のSNSの投稿者、配信を視聴する実況者らのなかには「放送事故だ!」と興奮する声もあったが、不審者の接触を許していた時間は、HIKAKINがかなり危険な状況にあったことは間違いなく、冗談や笑いですまされるものではなかった。
1983年に発生した松田聖子殴打事件と『笑っていいとも!』不審者乱入
著名人や番組を標的とした不審者の乱入は過去にもあった。1983年3月28日、人気絶頂の松田聖子が沖縄でのライブ中、不審者から鉄パイプで頭を殴打される衝撃的な事件が起きた。松田聖子はケガを負って気を失い、病院へ運ばれた。
同年12月1日、テレビ番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の人気コーナー「テレフォンショッキング」が始まってすぐ、不審者が登壇して司会・タモリの隣に着席。「喋らせてくれ」という不審者に、タモリは「喋りたいことがある?」と対応したが、そのあとスタッフが割って入った。タモリはこのことについて後々「音声さんがマイクを直しにきたと思った」と振り返っている。ちなみに同番組では2005年9月21日放送回でも、客席の男性が突然「『笑っていいとも!』が終了するって本当ですか」と声をかける一幕もあった。
2003年12月23日、名古屋のバラエティ番組『げりらっパ』(一部テレビ朝日系)の生放送中、名古屋市・栄の繁華街を自転車で駆け抜ける企画に臨んでいたさまぁ〜ず・三村マサカズが野次馬に絡まれてしまい、乱闘に発展した。また2018年3月10日には、稲村亜美が中学生の野球大会で始球式をつとめた際、大勢の中学生ににじり寄られ、もみくちゃにされてしまうこともあった。この場合、中学生は不審者ではないが関係者の体制に隙がありすぎたものだった。
そして2022年7月8日、安倍晋三元総理を狙った最悪な事件が起きてしまった。現在まで、警備体制について問題点の洗い出しがおこなわれている。
今回のHIKAKINの件も踏まえると、あまり警戒されることなく、影響力を持つ著名人のもとに一般の人が近づける状況があると言わざるを得ないだろう。
また、松田聖子の殴打事件と『笑っていいとも!』の不審者乱入は同じ1983年に発生。関連や影響があるかどうかは分からないが、それでも「不審者乱入の連鎖」がないとは言い切れない。2022年は安倍元総理への襲撃事件も起きたことから、どの著名人に対しても「連鎖の可能性」を考えて関係者は細心の注意を払う必要があるだろう。
「平和」と言われてきた日本だからこその安心や信頼感からくる油断
日本の芸能界に限って言えば、観客のモラルや良心に任せる部分が非常に多い。もしかするとこれは、長年「平和」と言われていた日本の名残からくる、安心や信頼感なのかもしれない。だが、それが油断につながっていると考えられるのではないか。
たとえば映画の舞台挨拶でも、場内に作品や登壇者の関係者は配置されているが、しかし専門的なセキュリティ力を備えた警備員を揃えてガードしていることはほとんどない。一方で、生で鑑賞することに魅力があるものは、そうやって物々しい雰囲気を作ってしまうとイベントや作品の世界観が損なわれる場合もある。一概にすべてに対してセキュリティ強化は唱えづらい。その場の空気とのバランスが難しいところだ。
それでも筆者自身もこれまで、著名人が一般客らに簡単に接近を許す状況を何度か見てきた。たとえば、映画の舞台挨拶にやって来た俳優の楽屋にお邪魔した際のこと。会場が大きな映画館ではなかったことから簡易的な楽屋を設置していたのだが、舞台挨拶終了後にファンが無断で入ってきてサインを求めるということがあった。また別の映画でも、舞台挨拶を終えた俳優が移動車両に乗り込む際、50メートルほどの歩行距離を大勢の観客が追いかけ、車を取り囲むということがあった。こういったことがあっても、関係者は強引に拒否できないのが現実だ。特に駆け出しのタレントの場合、ファンの存在を重要視するあまり、横暴な接触を不問とすることもある。
しかし、前述したように著名人をターゲットとした事件が起きてしまうと、模倣する者はいると考えた方が良いだろう。HIKAKINの出来事を受けて、あらためて警戒心のレベルを引き上げる必要が出てきているのではないだろうか。