【本当の戦いはここからだぜ!!】歴代ウルトラマン達が所属するウルトラ級の平和守護組織とは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。
12月に入り、いよいよ今年も残すところ1ヶ月を切りました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のお話のテーマは「宇宙」です。
突然ですが、皆さまは「宇宙」と聞くと何を思い浮かべますか?
たくさんの星が瞬く銀河や惑星でしょうか?
はたまた、宇宙で活躍している宇宙飛行士さんや、宇宙へ飛び立つロケットや人工衛星、スペースシャトルでしょうか?
皆さまが今それぞれ頭の中で、たくさんの宇宙に対するイメージを自由に想像して頂けますと幸いです。正に、宇宙に対するイマジネーションは無限大なのです。
私達が暮らしている「地球(earth)」という星ですが、宇宙が138億年前のビックバンと呼ばれる大爆発で誕生したのに対し、地球の誕生は46億年前。地球人類はおよそ500万年前に表れたと言われています。
つまり、長い長い宇宙の歴史から見れば、私達人類の歴史はほんの幼年期に差し掛かったに過ぎません。
そんな幼い人類に対し、無限に拡がる宇宙はたくさんの恩恵をもたらしました。その1つが宇宙に対する「想像力」・・・。夜空に輝く星々を見上げることで、夜空の向こうに何があるのか、瞬く星々に人々(宇宙人)は住んでいるのか?等々・・・。
星々を繋げることで形成される星座の創造や、「人は死んだらお星様になる」といった類の伝承も、宇宙からもたらされた「想像力」の恩恵ともいえるでしょう。学問の世界では、人が住んでいる環境によって科学や芸術に影響を受けることを「文化的サービス」と呼ぶそうですが、夏の星座や冬の澄んだ空気の中で目視できる星々も、宇宙からの贈りものと呼べるのかもしれません。
この宇宙に対する人々の想像力は、私達が日常的に親しんでいる数々の映画やテレビ番組の世界において大いに発揮されてきました。
米国映画の『STAR WARS(1977)』シリーズや東映制作の『宇宙刑事(1982)』シリーズ等、いわゆる「SFモノ」がその代表例ですが、実はこの両シリーズ、宇宙を股にかけた「父子」関係に焦点を当てているという共通点があります。さらにこの両シリーズ以外にも、宇宙を舞台とした親子の絆や葛藤を描いた作品は数多存在しており、特に私達が暮らすアニメ・マンガ・特撮量産国の日本においては、その事例は枚挙に暇がありません。
そこで今回は、数ある日本のアニメ・特撮ヒーロー番組の中から、円谷プロ制作のウルトラマンシリーズに焦点を当てて宇宙を舞台に大いに活躍した、とあるウルトラマンの物語をご紹介したいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【本当の戦いはここからだぜ!】ダイナミックのダイナ!ファインプレーの新たなる光、ウルトラマンダイナとは何者か?
はじめにご紹介するのは、円谷プロ制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマンダイナ(1997)』に登場するダイナミックのヒーロー、ウルトラマンダイナについて概説したいと思います。彼の紹介の前に、少しだけウルトラマンシリーズについて解説をさせてください。
ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』及び、特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』を起点とするシリーズです。
1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『帰ってきたウルトラマン(1971)』等・・・シリーズが続いていき、元号が平成に変わった1996年に、V6の長野博さん主演で『ウルトラマンティガ』が放送されました。
『ウルトラマンティガ(1996)』は、怪獣の出現や宇宙人の襲来等、地球を襲う未曾有の危機に対し、三千万年の眠りについていた光の巨人・ウルトラマンティガがピラミッド(超古代遺跡)から目覚め、地球の危機に立ち向かうという物語が描かれ、最終回ではウルトラマンティガは最後の敵である邪神を打ち破り、主人公のダイゴ(演・長野博)はティガへの変身能力を失ってしまったのでした。
『ウルトラマンダイナ(1997)』はそんな『ウルトラマンティガ(1996)』から7年後の世界を描いた物語。人類が活動の場を宇宙へと広げた宇宙開拓時代(ネオフロンティア時代)を舞台に、人々を脅かす宇宙生命体や怪獣達を相手に、新たなる光の巨人「ウルトラマンダイナ」が地球を守る物語。
主人公のウルトラマンダイナに変身するのは、特捜チーム「SUPER GUTS」に所属するアスカ・シン隊員(演・つるの剛士)。明るくお調子者な性格であるものの、いかなる苦境に陥っても「絶対に諦めない」鉄の意思を持った若者でした。彼は宇宙での訓練中に敵の襲撃に遭い、宇宙に放り出されたところ「謎の光」に遭遇し、ウルトラマンダイナとなる力を得ました。
ウルトラマンダイナはその名の通りダイナミックなヒーロー。3つの姿を使い分け、凶悪な怪獣や宇宙人達を相手に真っ向から立ち向かい、何度倒されても諦めずに立ち向かっていく不屈の精神で次々と悪を倒していきました。
そんな強いウルトラマンダイナですが、その活躍の基盤にあったのはアスカの父親(アスカ・カズマ)の存在でした。アスカの父親は宇宙を飛行する優秀なパイロットであり、宇宙での飛行実験中に突如現れた未知の光の中に消え、息子のシンが幼い時に行方不明となっていたのです。
しかしウルトラマンダイナとしての活躍の中で、不思議なことにアスカの父親が彼の目の前に現れることが度々ありました。その多くは、アスカが強大な力を持つウルトラマンであることに向き合い、葛藤の中にいた時でした。
アスカの父親は、ウルトラマンの力に思い上がり、職場である「SUPER GUTS」チームワークを乱したアスカの前に姿を現わしたほか、強敵相手に敗北を喫し孤独に苛まれたアスカの前に現れ「お前はひとりじゃない」と共に戦う仲間達の存在を示唆する等、彼を叱咤激励する存在として度々登場していたのです。
ウルトラマンダイナと強敵達との戦いが続く中、ついに物語は最終回へと突入します。太陽系を飲み込むスケールの巨大な怪物(グランスフィア)を相手に、アスカは「SUPER GUTS」のメンバーに自らの正体を明かし、宇宙を舞台とした共同作戦による最後の戦いに挑みます。
作戦は功を奏し、グランスフィアは滅びます。しかしウルトラマンダイナは敵を倒した反動で出現したブラックホールに吸い込まれて行方不明となってしまい、アスカが仲間達のもとに帰ってくることはありませんでした。
その一方、アスカが意識を取り戻すと彼は美しい光の中を飛行し、その目線の先に行方不明となった父が乗る機体を見ます。アスカがその機体と並走すると、操縦席の父・カズマはアスカと顔を合わせて微笑み、並び立った息子と父は光の中に消えていき、物語は完結します。
・・・つまり、主人公が生死不明のままで物語は幕を閉じてしまったのです。
(私事ですが、本作『ウルトラマンダイナ(1997)』をリアタイしていた時はまだ幼稚園児で、この最終回の視聴後に泣きじゃくった思い出があります。慣れ親しんできた強いヒーローが生死不明だったのがショックであったと共に、「大好きなアスカが戻ってこない」ことが受け入れられなかったのです。)
このように『ウルトラマンダイナ(1997)』は宇宙を舞台とした作品であると共に、主人公(アスカ・シン)と父(カズマ)との関係にも焦点が当てられた物語でした。
ここで疑問なのが、なぜ行方不明になっていたカズマが、息子であるシンの前に度々姿を現わしていたのかという点です。
「アスカが見た幻影だったのではないか?」
否定は出来ないと思います(視聴者側の捉え方にもよると思うので、解釈によってはこれも一理あるかと・・・)。しかしながら、実はその謎を解くヒントはウルトラマンダイナの存在そのものにありました。
アスカの父・カズマはアスカが幼い頃、実験中、未知の光の中へ姿を消しました。そしてアスカは大人になり、敵の襲撃で宇宙に放り出された後に「謎の光」に遭遇し、ウルトラマンダイナとなりました。
「カズマはアスカより先にウルトラマンとなり、宇宙の各地で怪獣と戦っていたのだ。宇宙空間を漂うアスカの元に現れ、同化したのだ。アスカの中にずっと父親の意識が宿っていた。ウルトラマンとして。」(小説『ウルトラマンダイナ 未来へのゼロドライブ』)
つまり、カズマは行方不明になった際にウルトラマンダイナとなり、息子の危機に駆けつけて一体化したことで、新たにダイナとなったシンの前に父の意識が現れていたのです。
父・カズマの意識を継承したアスカ・シン(ウルトラマンダイナ)は、『ウルトラマンダイナ(1997)』の物語の後も生存しており、宇宙を旅しながら、彼の後に現れた新たなウルトラマン達の危機に現れて共闘したほか、かつて自分が父からウルトラマンダイナの光を受け継いだように、今度は次の世代へとウルトラマンの光を継承していきました。
互いを思う親子の光の象徴であったウルトラマンダイナは、今日も宇宙を飛びつづけています。
【ブラックホールをなんとか防ぐ装置!?】宇宙で活躍するウルトラマン達と彼らを指揮する組織とは?
ここまで先述したように、ウルトラマンダイナは物語の最終回において行方不明となり、その後宇宙を旅しながら、後輩のウルトラマン達を援助する等、平和のために戦う遊撃隊的なヒーローとして活躍することになります。
「ウルトラマン=地球の平和を守る」というのが一般的な認識として強いですが、実際のところウルトラマンは宇宙各地で活躍しており、地球での活躍を終えたウルトラマンがその後、別の星へ派遣されることも珍しくはありません。
この背景には、ウルトラマン達の故郷であるM78星雲・光の国が「宇宙警備隊」と呼ばれる警察機構を結成しており、ウルトラマンやウルトラセブンといった歴代のウルトラマン達も当組織に所属していることが背景にあります。ダイナは当組織に所属こそしていませんが、有事の際は協力する関係にあります。
宇宙警備隊とは、3万年前にM78星雲・光の国で発生した侵略戦争(ウルトラ大戦争)を機に、全ウルトラマンの総意で誕生した平和守護組織。
「美しい平和な惑星を悪者から救う」という考え方、そして崇高な自己犠牲の精神のもとで編成されており、現在のウルトラの父(本名・ウルトラマンケン)を初代隊長に、100万人以上の隊員が参加して宇宙各地での治安維持に努めています(つまり、地球に来ているウルトラマン達もウルトラ級に一握りな面々しか来ていないということになります)。
この「宇宙警備隊」には様々なウルトラマン達が在籍しており、選りすぐりのエリート部隊のほか、ウルトラマン以外のヒーロー達と混成チームを結成する者、さらには宇宙警備隊への入隊を目指すために訓練に励む小学生のウルトラマンも存在します。
※ウルトラマンの寿命はウルトラ級に長く、初代ウルトラマンは2万歳、ウルトラセブンは1万7千歳、ウルトラマン80は8000歳と細かく設定されており、小学生のウルトラマンボーイは2000歳で小学3年生くらい。これに対してウルトラの父は16万歳、ウルトラの母は14万歳(このあたりでやっとデーモン閣下の年齢を超える)と、驚くほどに寿命が長いのです。
そんな彼らも宇宙の危機が起これば出動しますが、地球を含めた太陽系に飛ぶウルトラマンもいれば、アンドロメダ星雲を舞台に活躍するウルトラマンもいたりとその活動範囲は多種多様。
時には地球に派遣されることが決まっていたにも関わらず、自分が担当する地域で怪事件が発生したために地球行きを別のウルトラマンに譲らなければならない事態まで発生したこともありました。
私達が暮らす地球は、たくさんの怪獣や宇宙人に狙われる事件多発区域。近年のウルトラマンシリーズでは、地球人の防衛力も飛躍的に強化され、人間が怪獣を倒す展開も珍しくはありませんが、ウルトラマンに追いつくのはまだまだ先なのかも知れません。
いかがでしたか?今回は「宇宙」をテーマに、宇宙へと旅立ったウルトラマンダイナの活躍と、ウルトラマン達を総括する宇宙警備隊についてご紹介しました。
数あるウルトラマンシリーズの良いところをひとつ挙げるならば、宇宙を舞台に活躍するスーパーヒーローであるため、自分の知らない宇宙のどこかで今も戦っているのかも知れない・・といった自由な空想ができることだと思います。ウルトラマンシリーズは「何でもあり!」と自由な世界なので、自由に好きなウルトラマンや好きな怪獣達の物語を頭の中で描くことが出来る・・・そこも55年以上の歴史を紡いできたウルトラマンシリーズの強み、魅力点なのかもしれません。
最後までご覧頂きまして誠にありがとうございました。
(参考文献)
・小野浩一郎・岩畠寿明(エープロダクション)、『講談社シリーズMOOK ウルトラ特撮PERFECT vol.22 ウルトラマンダイナ』、講談社
・長谷川圭一・谷崎あきら、『ウルトラマンダイナ 未来へのゼロドライブ』、早川書房
・中村公紀、『小学館スペシャル4月号増刊 スーパーてれびくん×ウルトラマンサーガ サーガまるごと決定本!!』、小学館
・繁原稔弘、『ウルトラヒーロー必殺技スーパーガイド 1966-2014』、メディアックス
・鈴木康成・後藤隆行、『CIRCUS 別冊 語れ!ウルトラマン【永久保存版】』、KKベストセラーズ