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好調京都ハンナリーズを支えるジュリアン・マブンガの総合力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
西宮ストークス戦でシュートを決め雄叫びを上げるジュリアン・マブンガ選手

 開幕から昨シーズンのチャンピオンシップ進出チームである三遠ネオフェニックス、千葉ジェッツと対戦しながらも4勝2敗のスタートを切った京都ハンナリーズ。昨シーズンから7選手を入れ替え“新生”チームとして新たなシーズンを迎え、早くもその潜在能力の高さを披露している。

 中でも新戦力ながらチームの中心的な存在になっているのが、ジュリアン・マブンガ選手だ。マブンガ選手といえば、昨シーズンまでの2年間はライバルの滋賀レイクスターズに在籍し、Bリーグ1年目の昨シーズンは平均得点19.5得点でリーグ3位に入る得点能力を持つ選手として知られていた。

 しかし今シーズンはここまで6試合で同11.3得点に留まっており、今までのような爆発力は影を潜めている。それでも浜口炎ヘッドコーチはマブンガ選手のプレーを絶賛している。というのも浜口ヘッドコーチは“スコアラー”以上の役割を彼に期待し、そのリクエストに見事に応えてくれているからだ。

 「実は滋賀に彼が来た時のイメージはオフェンス・プレーヤーで、どちらかというとディフェンスはあまりしないという…。それが昨シーズン最後にうちに来た(滋賀との)ゲームでうちが連敗したんですけど、後半に彼が大分アシストするようになって『こんなパスも出せるんだ』ということで、うちに来たら面白いんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。

 実際うちに来てみると、ハンドリングは良いですし、彼が入るとピック&ロールも遠くに見れるんです。今は大分我慢しながら人を使ってポイントガードしての役割をやってくれていますし、コート・ビジョンも広い選手だと思います。そして終盤でチームとしてクリエイトできないような場面やスコアが必要な時は、自らスコアがとれる選手です。そういう意味では彼もコントロールしながらうちにフィットするように頑張ってくれていると思います」

 浜口ヘッドコーチが説明するように、昨シーズン京都戦でみせたマブンガ選手のオールラウンド選手としての能力に魅せられ、このオフに京都から獲得に乗り出したという。昨シーズンから京都に在籍しているマーカス・ダブ選手と仲が良かったことも功を奏し、マブンガ選手も京都入りを応諾してくれたということだ。

 まだ京都入りして日が浅いながらもコーチ陣と常に対話を欠かさないマブンガ選手も、しっかり新チームでも自分の役割を自覚し、それをコート上で実践しようとしている。

 「昨年まではスコアに集中していたが、自分は元々オールラウンド選手だ。今年はコーチと話をしながら違ったスタイルでプレーしている。スコアが必要な状況になった場合はスコアを狙いにいくが、今年はスローダウンしてオープン・スペースにいる選手を見つけ、チーム全体でスコアすることを心がけている。

 とにかく自分ができることをやり続けるだけだ。チームの勝利に貢献できるように最後までハードにプレーを続け、チーム全体としてディフェンスを質を高めるよう皆を鼓舞していきたい。それが自分の仕事だよ」

 だがマブンガ選手のチームへの影響力は試合だけに留まらない。チームリーダーとして様々な面で選手たちに好影響をもたらそうとしているようだ。その辺りも浜口ヘッドコーチが以下のように説明している。

 「(影響力は)すごく大きいですね。今週も練習で2回くらい良くない時間帯があったんですけど、私が(練習を)止めてチームに言おうと思った時に、彼が先に止めてハドルを組んでいました。そういう危機感だったり、コーチが何を考えているとか、チームがどうなっているかというセンスは凄くあります。

 そういう意味ではこのチームに来た彼の存在というのは凄く大きいです。彼が来たことによって予想以上のものを得ています。エナジーだったり、練習でのハードワークだったりで、選手たちがいろんな刺激を受けることでチームとしてのスタンダードを上げてくれるような選手だと思います」

 練習ばかりでなく、もちろん試合中もマブンガ選手がコート上やベンチでコーチ、選手たちに積極的に声をかけ続ける姿を目撃することができる。周囲から見ていても京都ハンナリーズにおけるマブンガ選手の存在感の高さは容易に想像がつくだろう。

 「チームが勝つためにはチーム全体としての努力が必要だ。ただ自分としては選手に声をかけながら、皆が同じ方向を向いて意志統一ができているかを確認するよう務めている。日本人、アメリカ人に関係なく皆がしっかり話し合いを続け意志統一ができないと良い結果は望めない、それがバスケットボールだからね」

 チームリーダーとしての意識も十分なマブンガ選手は、果たして京都ハンナリーズでNBA随一のオールラウンド選手、レブロン・ジェームスのような存在になれるのか、今後のプレーを注視してみたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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