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20代、外食チェーンで美味しいと思うメニューで最も多かったのは?

池田恵里フードジャーナリスト
(写真:Splash/アフロ)

印象に残っている外食メニュー

「美味しかった」と脳裏に焼き付いている商品は、きっとどなたにもあると思う。私、個人だと関西の「串カツ」である。

初めて食べたのがたぶん小学生の頃だったと思う。次から次に矢継ぎ早に出されるさまざまな具材が面白く、パン粉が薄衣で食べやすい。とはいえ、次第にボディブローのようにじわじわと満腹感に浸れる。一時期はあほの一つ覚えのように「串カツ大好き」とあらゆるところで言っていたものである。なかでもとある串カツチェーンはよく出かけた。

さて今回は、20代、現在の若者たちの「外食チェーンでおいしいと思うメニュー(日本経済新聞社参照)」について話をしたい。

ハンバーグ強し、そしてモスバーガー

集計してみると、男女とともに20代で断トツ1位なのが、モスバーガーとなった。商品名を見ると、ベーシックな「モスバーガー」が半数を占めている。

モスバーガーのベーシックが人気。この分厚いトマトとソースが決め手 モスホームページの写真引用
モスバーガーのベーシックが人気。この分厚いトマトとソースが決め手 モスホームページの写真引用

ちなみに2位は、男性は「すき家」、女性は「ガスト」となる。そして「ガスト」ではハンバーグとピザがあげられていた。

トマトに注目!

他の年代層においても、モスバーガーは人気がある。お客様の脳にインプットされた理由の一つに、あの分厚いトマトではないか、と思っている。モスバーガーが使用されているトマトの果室は小さく、そのため、トマトの果汁も少ない。トマトはカットされると、時間とともに果汁は出るものであるが、極力少なくするような品種を選んでいると言われる。このトマトに惚れ込んだ中食のとあるチェーンでは、以前、モスバーガーのトマトを使用していた。

そしてちょっと脱線するが、その大手中食チェーンでは、唯一、店舗内において包丁で切る食材がトマトであり、通常、店舗内の多くの食材は、包丁を使わなかった。キット化された野菜が入ってくるため、包丁が必要ないのである。しかし、トマトだけは店舗内で当時、一心に切っていた。

ということで何度も申し上げるが、トマトは非常にカットが難しく、マクドナルドなどはそれ専用のスライサーがあるようだが、一般にサンドイッチにトマトを入れるのは、時間と共にトマトから果汁が出るため、なかなか商品化しにくい。

例えばサンドイッチは断面が命であり、そこが綺麗であることこれが売れるポイントとなる。少しでもゆがんだりしていると、たちまち売れない。陳列した時、断面がキリッとビシッとしたサンドイッチを見ると、感動し芸術品にさえ思える。

サンドイッチメーカーの方いわく「トマトのサンドイッチを工場で製造するのは難しい。時間とともに果汁がパンに付くから・・・」

ということで、モスバーガーはトマトを入れることで、工場製造でのサンドイッチにも差別化にもなっている。

そして本来、ハンバーガーと言えば、肉であり、ジャンキーな食べ物とされているのを、分厚いトマトを入れることで、「健康」を打ち出し、他社との差別化になったことで、20代の若いまだまだ肉大好き世代にも支持されたのかもしれない。

モスブランドがようやく功を奏して

モスバーガーには、提供時間の遅さという弱点があり。盛り付けが丁寧である一方、ややもすると顧客にとってストレスとなっていた。

しかし最近の売り上げを見ると、客数102.9% 客単価100.6%で全店売上高103.1%、既存店売り上げは103.5%と好調。全体にファーストフードは好調で前年比より4.5%増となっており、マクドナルドも回復基調である。しかし他の業態を見ると、低迷しており、モスバーガーのこの客数客単価増に関しては、「ここでしか味わえない、健康的なハンバーグ」が顧客にじわじわ浸透した結果なのかもしれない。

随分、以前に高価格の「匠味」ハンバーガーを発売されそこで取材した際、念入りに店舗教育をし、限定して店舗、数量を導入し、時間帯もアイドルタイムのみで他のハンバーガーチェーンとは違った販売方法だった。確かに高価格であったが、これまでのハンバーガーの概念を崩し、インパクト大であり、その後、「菜摘バーガー」はレタスに埋もれたバンズを見て、モスバーガ-が打ち出す「健康」という言葉をより顧客の脳裏に刻みこんだ。商品の打ち出し方、開発もうまい。

トマトの効用

そこでトマトの効用。よく知られている通り、グルタミン酸が豊富で、肉のイノシン酸とあわさることで、旨味の相乗効果となる。

そして抗酸化物質も多く含まれているのは知られているところ。

トマトは低カロリーでさまざまな栄養成分が豊富な健康野菜。美肌効果や風邪予防に役立つビタミンC、老化を抑制するビタミンE、塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいます。

更に注目されているのが、カロテノイドの仲間であるリコピンやβ-カロテン。私たちは酸素がなければ生きていけませんが、酸素には細胞を酸化させ、老化や動脈硬化、がんなどの生活習慣病を引き起こす作用があることがわかってきたので、抗酸化作用を持つリコピンやβ-カロテンに期待が集まっているのです。中でもリコピンの抗酸化作用は強力で、β-カロテンの2倍、ビタミンEの100倍ともいわれています。

出典:一般社団法人「全国トマト工業会」

大きくカットされた色鮮やかな赤いトマトはインパクトがあり、他業態とも差別化になる食材をハンバーグに入れたことで、若者に強く印象づけたのかもしれない。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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