汎発性膿疱性乾癬(GPP)とは?症状と診断のポイントを皮膚科医が解説
【汎発性膿疱性乾癬(GPP)の定義と特徴】
汎発性膿疱性乾癬(GPP)は、まれですが重篤な皮膚疾患です。この病気では、体の広い範囲に膿疱(うみぶくれ)が現れ、赤い発疹や皮膚の剥がれが見られます。GPPは慢性の病気で、体の複数の器官に影響を与える自己炎症性疾患としても知られています。
GPPの患者さんは、しばしば全身的な症状も経験します。例えば、発熱、倦怠感、関節の痛みなどがあります。最も多く報告される症状は皮膚の痛みで、患者さんの約3分の2が経験するそうです。
GPPは、免疫系の異常によって引き起こされます。特に、IL-36という炎症を促進するタンパク質が重要な役割を果たしています。この異常な免疫反応により、皮膚に血流が増加し、好中球という白血球が集まってきます。その結果、目に見える膿疱が形成されるのです。
【GPPの診断と鑑別のポイント】
GPPの診断は主に臨床所見に基づいて行われますが、時には遺伝子検査や皮膚生検が診断の助けになることもあります。
GPPが疑われる場合、まず感染症を除外するための検査を行います。膿疱や血液の培養検査、膿疱のグラム染色、皮膚の鱗屑(りんせつ)のKOH検査などが行われます。また、炎症の指標となるCRPや赤血球沈降速度も調べます。
GPPの発作時には肝臓、胆道、腎臓の機能に影響が出ることがあるため、これらの臓器の機能検査も考慮されます。特に高齢者や心血管疾患のリスクがある患者さんでは、心機能の評価も重要です。
GPPの診断で最も難しいのは、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)との鑑別です。AGEPは主に薬剤によって引き起こされる皮膚反応で、GPPと非常によく似た症状を示します。AGEPを疑う特徴としては、薬剤使用後24〜48時間以内に顔や間擦部から始まること、原因薬剤中止後15日以内に改善すること、小さな膿疱が多いこと、粘膜病変が多いことなどが挙げられます。
GPPの診断には、詳細な病歴聴取と丁寧な皮膚所見の観察が不可欠です。特に薬剤歴や感染症の有無、家族歴などの情報が重要となります。また、GPPとAGEPの鑑別は難しい場合も多いため、経過観察や皮膚生検なども含めた総合的な判断が必要です。
【GPPの治療と患者さんへのアドバイス】
GPPの治療は、症状の程度や範囲によって決定されます。遺伝子変異の種類や病型によって治療法を変えるわけではありません。しかし、過去に発作を経験した患者さんの病歴は、将来の発作の予測や治療方針の決定に役立つ可能性があります。
GPPの患者さんには、発作の引き金となる要因について教育することが推奨されます。これにより、次の発作を予防したり遅らせたりできる可能性があります。
また、GPPは患者さんの生活の質に大きな影響を与える可能性があります。多くの患者さんが不安やうつ、病気に対する絶望感を感じていると報告されています。そのため、心理的なサポートも治療の重要な部分となります。
GPPの診断や治療が遅れると、医療費や社会的コストの増加につながる可能性があります。そのため、救急医療、内科、家庭医療、小児科など、患者さんが最初に接する可能性が高い医療提供者に対して、GPPに関する教育を行うことが重要です。これにより、早期診断と適切な治療の開始が促進されることが期待されます。
GPPは稀な疾患ですが、適切な診断と治療を受けることで、症状のコントロールと生活の質の向上が可能です。皮膚に異常を感じた場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
参考文献:
1. Prajapati VH, et al. Considerations for defining and diagnosing generalized pustular psoriasis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2024;00:1-11.