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「M-1」ファイナリストの「トム・ブラウン」、所持金は「300円」

中西正男芸能記者
「トム・ブラウン」の布川ひろき(左)とみちお

 昨年12月の「M-1グランプリ」で決勝に進出し、一躍注目を集めた「トム・ブラウン」。ファイナリストの中で唯一の吉本興業以外の所属(ケイダッシュステージ)で、あらゆるものをハイテンションに“合体”させていくネタで話題となりました。ツッコミの布川ひろきさん(34)とボケのみちおさん(34)にも「M-1」バブルが訪れているかと思いきや、所持金は「300円」とリアルな現実を明かしました。

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今が一番キツイ

布川:「M-1」決勝までは、テレビでしっかりネタをさせてもらったのが1回あっただけだったんですけど、決勝が終わってから30~40本はお仕事をいただきました。ま、決勝2日後に出たライブはお客さん3人だけということもありましたけど(笑)、忙しくはさせてもらっております。

みちお:実は、今が一番大変でして。ありがたいことにお仕事はいただいているので、アルバイトをやる時間はない。ただ、ギャラが振り込まれるのは2~3カ月後なんで、忙しさが金銭的に反映されてくるのは来月か再来月の給料からなんです。まだ手元には全くお金がない。その上、アルバイトもほぼできない。それでもやらないと生活ができないので、今でも仕事の合間を縫って、これまで2人ともずっとやってきたファミリーマートのアルバイトにも入っています。今月4日、5日も入ってました(笑)。

布川:今はこれまでと同じ給料ですからね。ということは、3ケタということです。芸人としての給料は月に130円とか。だいたい3ケタで1000円はいかない。だから、本当にリアルな話、今、僕の所持金は300円です。

みちお:とにかく今が一番キツイので親に貸してもらったり、友達に貸してもらったり。ただ、これまではアルバイトしかなかったのが、芸人としての仕事があるというだけで、本当の本当にありがたいんですけどね…。とはいえ、今も家には暖房もないので、寒さをしのぐために、ずっと湯船に浸かって暮らしています(笑)。食事も湯船の中でとっていますし、ずっと湯の中に入りながらやりすごしています。

布川:ウチはガスも止まるので、水でシャワーを浴びていたりしてたんですけど、一応、電気は通っているのでティファールとかでお湯を沸かしてそれと水を混ぜて浴びるということでしのいでいます。そして、僕、3年ほど前に結婚しているので、これを僕だけじゃなく、奥さんも一緒にやってくれているんです。結婚4日後には、もうこの湯を混ぜたシャワーを体験してました…。とっても、いいオンナです(笑)。

仕事の変化

みちお:あと、変化でいうと、会う人が変わりましたね。売れてらっしゃる芸人の先輩、俳優さん、女優さん。この前はクロスフィットトレーナーのAYAさんにもお会いしました(笑)。多分、普通に生きていたら、会うことないでしょうからね。腹筋、バキバキでした。

布川:あと、アナウンサーさんともお会いするのも新鮮ですね。この前、日本テレビに行ったら、水卜麻美アナウンサーとエレベーターが一緒になりまして。降りる時に“開”のボタンを押してもらいました(笑)。

みちお:僕は別のテレビ局だったんですけど、いつもテレビで見ているアナの方が収録の合間にハイヒールを脱いで椅子に座って休んでらっしゃるところを見まして。そんなリラックスしたアナの姿が見られるなんて、改めて、やっと芸能界に入ったんだなと痛感しました。アナのあんな姿は見られないですもん。

布川:何回アナって言うんだよ!

みちお:そりゃ、あなた、アナはアナですからね(笑)。

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スノーボードよりお笑い

布川:でも、この世界に入った喜びをやっと今噛みしめているというか。僕には兄がいまして、兄もお笑いをやりたかったんですけど、お兄ちゃんは勉強できる人だったんで芸人になるのを親が強く反対しまして。ただ、僕がなりたいと言ったら、それはすんなりOKされまして…。

みちお:少しは反対するのかと思いきや、どうぞ、どうぞと(笑)。

布川:そこで、もともと僕らは高校の柔道部の先輩(布川)後輩(みちお)だったんですけど、僕がみちおをコンビに誘ったんです。じゃ「プロスノーボーダーになりたい」という理由で断られまして…。なかなかない理由だなと思いつつも(笑)、一人で札幌の吉本のオーディションを受けて所属になりまして、オーディションライブのMCやってたら、2年後くらいに。そこに別のコンビでみちおがやってきたんです。

みちお:2003年の「M-1」決勝で「フットボールアワー」さんと「笑い飯」さんのすごい戦いを見て、お笑いに憧れてはいたんですけど、高校を卒業する頃はスノーボーダーへの思いが強かったんです。ただ、スノーボードで友達がエグイ骨折をしまして…。「これは無理だ」と。その頃、ちょうど布川君がローカルの札幌のお笑い番組にピンで出ていたんですよ。それを見て、お笑いって、結構、簡単に行けるんじゃないかなと思って。

布川:ナメるんじゃないよ!オーディションを受けに来た時に「オレの誘いは断ったのに、話が違うじゃないか」と思ったら「プロスノーボーダーはやっぱり難しかったんで…。お笑いやりたくなっちゃいました…。テヘッ」みたいな感じで「キモッ!」と思ったんですけどね。ただ僕もピンだったし、みちおは何回もコンビ解散をして一人になってもいたので、2年くらい時間が空きましたけど「コンビ組まないか」って言ったんです。そうしたら「今日は、いい酒になりますね」って言ってきて。また「キモッ!」と思ったんですけどね(笑)。

みちお:ただ、当時は僕がツッコミを担当してて、今でも言葉が拙いですけど、その時はツッコミのフレーズが「やかましいわ」と「なんじゃ、そりゃ」の2つしかなくて(笑)。

辞めると思ったからこそ

布川:僕がどんなボケをしても、そのツッコミだったんで。ま、今となっては「ダメ~」しか言わない僕が言うのも何なんですけど(笑)。ただ、そこからなかなかしんどくて…。特に、一番しんどかったのは2016年でしたね。去年の「M-1」決勝でやらせてもらったのと同じスタイルのネタを16年の「M-1」予選でやったんです。15年は3回戦敗退だったんですけど「これはいいぞ!すごいのができた!」と思って臨んだら2回戦で落ちたんです。これはもうだめなのかなと。初めて「もう辞めようかな」と思いました。

みちお:自分たちが面白いと思っていることと結果がズレているということは、もうダメなのかなと思っちゃいましてね。すごく深く考えて。そこのズレがあるならば、今後も難しいだろうなと。

布川:ただ、辞めるにしても、よく辞めた人でウジウジ言う人がいるじゃないですか。それはダサいと思って、そういう後悔がないように、なくなるまでやろうと。なので、このネタは絶対に面白いと思っていたので、毎回ライブの度にこのネタをやっていて。中身は変えているんですけど、方式は同じで。

みちお:材料が違うんですけど、味付けがみんな一緒だったんでね。来てくれた人には謝りたいですね。でも、自信はあったんです。単独ライブを東京と出身地の札幌でやっていたんですけど、一回、自分たちに全く縁もゆかりもないところでやろうとなって、長崎でやったんです。お客さんが6人くらいしかいなかったんですけど、そこでも、このネタは50人くらいお客さんがいるんじゃないかというくらいウケたんです。だから、これはいけるはずだという手ごたえもあった。

布川:いろいろ試して手ごたえがあったからこそやったし、辞める気でいたから、とことんできた。それがあったから、思いっきり突き詰められましたし、それが今回の「M-1」につながったのかなとも思います。

みちお:辞める気だったから、とことんできたのはありましたね…。

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今後の夢

布川:ま、それがあって、今回だったとするならば、そろそろ、奥さんを幸せにしたいですね。結婚して3年くらい。さすがに、向こうの親御さんに「幸せにします」と言ったんですけど、完全に不幸せにしてますもんね。お金が入ってきたら、まだできていない新婚旅行をするとかね。

みちお:僕もまずはお金を借りたりして助けてもらってきたオヤジを旅行に連れて行ったりとかはしたいですね。あとは、坪が欲しいなと。

布川:坪?

みちお:一坪でもいいから、自分の土地を都内に買いたいなと。ここは俺の土地だと思ったら、幸せな気持ちになれるかなと。何かあったら、オレにはこの一坪があるということで、安定するというか。

布川:それは安定するのか(笑)?あと、仕事で言うと、2人とも柔道部でしたし、体を張ったロケとか、例えば(日本テレビ系)「世界の果てまでイッテQ!」とか、過酷なものにチャレンジできたらうれしいですね。あと、吉本興業の笑いの殿堂・なんばグランド花月にも出てみたいですね。やっぱり本場ですから。お客さんが僕らをどんな風に見るのか。体験してみたいなと。

みちお:え、年配のJAとかの団体さんも多いとも聞きますけど、大丈夫ですかね?

布川:JAのお客さま向けに、野菜を合体させるネタも作りましょう!ま、それでも多くの方が口をポカーンとされてそうな気はしますけど(笑)。

(撮影・中西正男)

■トム・ブラウン

1984年1月28日生まれの布川ひろきと84年12月29日生まれのみちおが2009年にコンビ結成。ともに北海道出身で高校時代の柔道部の先輩・後輩の関係。ケイダッシュステージ所属。思わぬものを合体させるという独特の世界観のネタで注目を集める。「M-1グランプリ2018」で決勝進出(6位)。2月21日に新宿・Vatiosで行われる「ケイダッシュゴールドライブ」にも出演予定。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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