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その社会課題の解決方法は「みんなで踊れる」のか?プリンスが社会活動家と考えたとっておきの方法

矢崎裕一データ・ビジュアライゼーション実務家兼研究者

黒人の若年層がコーディング技術を身に着けて自立し、その中からたとえば黒人版マーク・ザッカーバーグ(Facebook創始者)が出て来るようなことを目的とした'''#YesWeCode'''というNPO団体があります。ミュージシャンのプリンスが設立に関わっていました。

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そのキックオフイベントは、1回の数日イベントに参加者が50万人も集まるEssence Music Festival(エッセンス誌が始めて20年になるイベント)という黒人が集まるメジャーなイベントで、ハッカソンという形で開催されました。

きっかけはトレイボン・マーティン射殺事件(コンビニから出てきた黒人少年を「怪しい」と感じた近所のヒスパニック系白人ボランティア警備員がつかみ合いの喧嘩の挙げ句「正当防衛」で射殺したのに、ヒスパニック系白人は逮捕されなかった事件)でした。

ジョージ・ジマーマンとトレイヴォン・マーティン
ジョージ・ジマーマンとトレイヴォン・マーティン

17歳のトレイヴォン・マーティンが「殺人者なのか、被害者なのか」、あるいはマーティンを射殺した「自警団」のジョージ・ジマーマンは「人種差別主義者なのか、英雄なのか」について、多くの論争が巻き起こったが、プリンスが目を付けたのは、マーティンが着用していたフーディであった。

出典:ローリング・ストーン

フーディというのはパーカーについている頭にかぶる部分(フード)のことですが、#YesWeCodeを運営することになるヴァン・ジョーンズ氏がプリンスと話している中で、プリンスが「黒人の子がパーカーを着ていたら殺し屋と呼ばれて、白人の子がパーカーを着ていたらマーク・ザッカーバーグだといわれるのはなぜだろう」と言い出したそうです。「人種差別のせいかもしれないけど、もしかしたら黒人版のマーク・ザッカーバーグが少ないからじゃないかな。そこに着目してみてはどうだろう」

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そして黒人の若年層をコーディング技術獲得という方法でエンパワーする#YesWeCodeという活動が始まりました。

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Prince, hoodies and #YesWeCode

プリンスの静かなアクティビズム(動画)

10万人の貧しい子供たちにコーディングスキルを身に着けてもらう野心的な計画(記事は英文)

それは「みんなで踊れる」ものか?

ヴァン・ジョーンズが取り組んでいることを聞いたプリンスはこんなことも言っています。「政治の力で貧しい子どもが太陽光パネルを設置している?それならみんなで踊れるね。」

「(#YesWeCodeのおかげで)インナーシティでパーカー着ている子どもが、アプリをダウンロードするだけではなく、アップロードする方法を勉強する?それもみんなで踊れるね」

(いずれも上記ローリングストーン誌の記事より引用)

「みんなで踊れる」というのはミュージシャンならではの比喩的表現だと思うのですが、「それはみんなで踊れるものか?」という問いかけは「楽しいので思わず誰もが参加したいと思ったり、見て微笑ましいと思ったりすることか?」という問いかけだと翻訳できると思うのです。

それはたとえば、「北風と太陽」というイソップ寓話を思い出していただきたいのですが、北風と太陽が力比べをしようして、旅人の上着を脱がせることができるかという勝負をします。

北風は力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとするけども、寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができませんでした。

太陽が燦々と照りつけると旅人は暑さに耐え切れず、自分から上着を脱いでしまいました。

「それはみんなが踊れるものか?」という問いかけはここでいう太陽のやり方に近く「外部から力づくで行動させる」のではなく「自分から行動する」ように環境へ働きかける、ということだと思うんです。

私個人の経験ですが、都内の色んな高校にて生徒さんたちが感じる社会課題をデータを元に考えるというワークショップ・シリーズに、この春メンターの一人として参加しました。たとえ同じ年齢や学年であっても決して一括りにはできず、接していて楽しかったです。彼らなりにとりまとめた社会課題を、たとえば寸劇を通じて発表したり、発表する順番を工夫することで少ないチャートであっても説得力が増す構成で発表したりしてとても感心したのですが、いざどう解決するかという話になった際に、ある進学校では「政府に規制してもらう」「違反した人に罰を与える」「アプリで反則がわかるようにする」といった、もしかしたら大人におもねっているのかもしれないし、本気で答えたんじゃないかもしれないんですが、こういった解決法を発表時に提示され、仰け反るほど衝撃を受けました。

ただそういった生徒さんたちに、たとえば歩きスマホを抑制したいときに、階段の一段ごとの奥行きや高さを変えてあげることで人の歩く速度を調整できるよねとか、歩きスマホ専用レーンが別の国であるらしいよ、といった話を吹き込んであげると、その場ですぐに自分たちでスマホで調べたりします。これらは太陽のやり方、「自分から行動する」ように環境へ働きかける方法だと思います。デザイナーの考える問題解決の考え方をアクティブ・ラーニングに学んでもらう機会があってもいいのかもしれないと思いました。

お互いを相互監視・自縄自縛しあう規制を増やすことよりも、人の生来的な本能や心地よいと思う行動様式に寄り添う形で、社会課題の解決に資する方法を考えていきたいですね。

プリンスの死去

そんなプリンスですが、今年の4月21日に自宅兼レコーディング・スタジオであるペイズリー・パークのエレベーター内で亡くなっているのが発見されました。おそらく長年ハイヒールを履きながらの激しいステージ・パフォーマンスによる腰痛や足の痛み止めだと言われてますが、鎮痛剤の過剰摂取によるものでした。

30年前から断続的にいろんな団体に寄付行為を行っていましたが(最近だと以下の例)

チャリティ団体(Harlem Children’s Zone、Uptown Dance Academy、American Ballet Theatre)に1億円寄付

密かに行われていた寄付行為が死後、明らかになりました。

プリンスさん、アフガン孤児支援で寄付 非公開を希望

プリンス、伝説的ファンク・ドラマーのガン治療費を肩代わりしていたことが明らかに

Prince may have donated $34 million to the San Francisco Foundation

Prince’s Countless Charitable Activities Come To Light After His Death

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プリンスを追悼するヴァン・ジョーンズ

#YesWeCodeでのプリンス追悼ページ

データ・ビジュアライゼーション実務家兼研究者

コード・フォー・トウキョウ 代表/データ・ビジュアライゼーション・ジャパン 発起人/多摩美術大学 情報デザイン学科 非常勤講師/東京大学空間情報科学研究センター 柴崎研究室 協力研究員/千葉工業大学大学院 デザイン科学 修士修了/おもちゃコンサルタント。株式会社ビジネス・アーキテクツにてデザイナー及びアートディレクターを7年間経験後、2008年に独立。近年では、データ・ビジュアライゼーションの実践と普及に関する様々な活動をおこなっている。共著書に「RESASの教科書」がある。

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