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線状降水帯予測情報開始。難しい降水量予想。

森朗気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
2020年7月3日、線状降水帯が発生した日の気象衛星画像。ウェザーマップ提供。

 気象庁は、今日6月1 日から、深刻な線状降水帯による大雨が予測されるときに、約半日前からその情報を発表する。具体的には、「大雨に関する○○地方気象情報」という形で、比較的大まかな範囲を対象に発表され、本文の中では線状降水帯に言及するものの、表題には線状降水帯という言葉は使用されない。線状降水帯という現象の説明や、情報の精度や発表方法、タイミングなどはすでに報道されているので、ぜひこの機会に確認しておいてほしい。

 「大雨に関する気象情報」の本文には、線状降水帯をはじめ、大雨の原因となる現象や、予想される1時間降水量(降雨強度)、24時間降水量などの数値、防災上の注意点なども記載されているので、ぜひ参考にしていただきたい。ただ、注意してほしいのは予想降水量だ。

 情報文には、「多い所で」という前置きつきで、一定期間の降水量の予想が示されている。以前は、その降水量がやや大げさに感じられることがあった。実際に観測された降水量が予想を下回ったり、予想通りであってもごく一部の地点だけだったこともある。しかし、ここ数年は気候変動の影響か、予想を上回る降水量になることも珍しくない。例えば、2019年8月の九州北部の大雨の際、8月27日の朝に発表された気象情報では、8月27日午前6時から翌28日午前6時までの24時間降水量は、長崎県の多い所で180mm、佐賀県の多い所で150mmなどの予想となっていたが、実際に観測された降水量は各地ともはるかに予想を上回った。

気象庁データより筆者作成
気象庁データより筆者作成

 また、大雨の場所が予想とずれることもある。例えば、2020年7月3日から4日にかけて熊本県人吉市で大きな被害を出した線状降水帯による豪雨のときの情報を見てみると、九州北部の地方気象情報では、7月3日6時から翌4日6時までの熊本県の24時間降水量は200mmだった。一方、九州南部の気象情報では、鹿児島県の予想降水量は250mmとなっていて、九州南部の鹿児島県の方が多かった。ところが、線状降水帯がわずかに北上して県境を越えて、熊本県の人吉盆地付近に停滞したために、球磨川流域で豪雨となった。尾根ひとつの違いで、九州北部では降水量が予想の2倍を超え、九州南部ではほぼ予想通りの降水量となった。もしも、線状降水帯があと20km南にとどまっていたら、九州南部で極端に予想を上回る降水量となっていただろう。

(ウェザーマップ提供)

国土地理院地図と気象庁データより筆者作成
国土地理院地図と気象庁データより筆者作成

 予想降水量は、実況に応じて修正される。また、線状降水帯のわずかな位置の違いで、隣の地方予報区や都道府県で豪雨となることもある。大雨情報が発表された場合は、予想降水量を上回ることも想定して、最新の気象情報や、地元自治体から発表される防災情報に常に気を配ってほしい。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

1959年生まれ。1995年に気象予報士の資格を取得、株式会社ウェザーマップに入社。TBS テレビ気象キャスターなど。湘南と沖縄(八重山)とブラジル音楽が好き。

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